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弟の怒り/トップの苦労

一ヶ月近くかかりました…ごめんなさい;;



「うざい」



 それが、後輩に挨拶された七夜の返事だった。

 え、と声を漏らして驚いているのは、声をかけていた聖。ほれみろと鼻で笑っているのが一晃。固まっているクラスメイト。できるだけ好印象がほしいな、と思い笑顔でいる七夜。その笑顔はしてやったり、と書かれている真っ黒な笑みにしか見えないが。



「ほら、月見里。七夜さんも迷惑していることだし、早く教室に戻れ」


 チャンスだと思い、即行で一晃が言う。聖は後輩がゆえに、そう言われると従わざるえない。一晃は固まった聖を力づくで教室なら出し、そしてドアを閉めてそこに放置した。放置していることに気付かない七夜は、バイバイ、と手を振った。笑顔で。周りには福音として、「二度と来るんじゃねえ」やら「いつでもおいで。絶対に追い返すから」と挑発しているように見えたのだが、やはり七夜は気付かない。

 だから、聖を教室の外に放置し(捨て)てきて戻ってきた一晃が、



「やりましたね」



 と笑顔で言っていたのも、七夜は分からず笑っていただけだった。

 だが、聖が帰って行ったのに対しては、何も疑問に思わなかった。聖の顔がどうみて悪には見えなかったため、首から下げていたチェーンも誰かにプレゼントされていたものだろう、イコール、きっと授業に帰って行ったのだろう、と思っているのだ。

(髪は茶髪だったけど、天羽っぽくはなかったからなー。一晃みたいに地毛かな?)

 こんな風に。

 だが事実を嘲笑うように、チャイムがなり、

(あ、やっぱり。授業始まるからね)

 と勘違いを信じていく。



「おい、席つけー」



 そしてチャイムが鳴り終わると、一晃は七夜に一言言って自分の教室に帰り、担任教師である金髪眩しい永倉哲哉が入ってきた。その時、既に七夜の頭には、授業中にどうやって眠ろうかという考えしかなかったのだった。






 五時間目が始まって十分が経った後、授業をサボった生徒が一人、屋上にいた。大きな目にフワフワの茶髪。――月見里聖だ。今はその可愛い顔が怒りに歪め、床をガンガンと足で蹴っていた。それは足が余計に痛くなる行為だと分かっていても、今聖には止められなかったのだ。



「何、何なのあの人ォ!? 僕が話しかけてるのにうざいとか有り得ない!」



 その問いに、答える者はいない。

 だが、その言葉と同時に、屋上に来たもう一つの人影。



「やあ、聖。荒れているようじゃないか?」

「慧!」



 姿を見せたのは、同じ苗字を持つ慧だった。

 天羽側一年トップである月見里聖と、白鳳側である月見里慧は、幼馴染である従兄弟であった。

 元々頭がよかった聖が、白鳳ではなく天羽に入ったのは、内申点が足りなかったからだ。頭脳はあるのに白鳳のテストには敵わず、落ちた。ならばせめて、近いところがいいと思い、なりゆきで天羽に入ったのだ。だからか、本来文化の違いで仲が悪いはずの白鳳と天羽側にいる二人は、普通に天羽同士白鳳同士で仲良くしている生徒たちよりも、仲が良いい。



「機嫌が悪いのは、法堂くんの所為と見えるけど」

「アタリ! 流石、慧だね。って、いうか態度が最悪なんだよ! あのね――」

「まあまあ、ちょっと待って。今そっち行くから」



 慧がそっちと示したのは、タンクの上だった。小柄な聖にとって、上りにくいタンクの上は、誰も来ない自分のスポット。

 タンクの上に登ろうとする慧を聖が手伝い、やっと伸びりきったところで、慧が口を開いた。



「――それで、何を言おうとしてたの?」

「そう! アイツ、僕が声をかけたら第一声目でうざい、だよ!? 有り得なくない!?」

「ああー……」



 あの人だったら、有り得るだろうなあ……。

 そんな思いを、慧は決して口に出さなかった。出したならば、怒り狂っている幼馴染との口論が待っている。そんな面倒くさい事、慧は望んでいないのだから。



「まあでも、そういう人を攻略するの、聖は好きだろう?」

「そうだけど……。それでも、むかつくのはむかつくんだよお」

「お菓子持ってきたから、それでも食べて落ち着きなよ」

「慧は僕を何だと思ってるの!」

子供(ガキ)

「にいいいいい」



 軽くあしらわれた聖は怒りながらも、しかし自分の従兄弟には言い返せない。慧は聖より年上で、頭もよく、あの白鳳に通っていたのだから。そもそも二人は、聖が考えのまま行動して、その後処理と、そうならないように計略するのが慧となっている。そんな関係が黙認されているのも、そんな日常があるからだろう。それに聖は、攻略と称して老若男女構わずオトす趣味を持っている。そのため相手が遊びだと知ると激昂し、悪い時は社会的抹殺をと思い行動する者もいた。それを阻止するのもまた、慧の役目。自然と上下関係ができているのだ。



「それにしても……法堂かあ」



 慧はしみじみと呟いた。

 法堂家は昔からある大稼業で、つまりは華族でもある。今代のリーダーでもある法堂宗一は優秀で、企業をさらに倍にしたとか。とんでもない血筋だ。

 教室に行った時に見た顔を思い出す。

 黒真珠のような目に自分が映った時、慧は確かに歓喜した。だがその容姿ゆえに、今まで聖の遊び相手と同じ末路を辿ることになると思うと、我慢できずに溜息を吐いた。

 同室。ゆえに情報が来る。だからその情報を寄越せと、慧は前もって聖の言葉を思い浮かべていた。一言一句違わずに言うだろう言葉を。



「ねえ、聖?」

「なあに慧?」

「頼むから、ただ働きだけはよしてね。僕も楽しみたいんだ」

 ――ちゃんと、目的を覚えておいてね。



 そう言って、慧は屋上を出た。タンクから降りる時、従兄弟の手を借りることも忘れず。







 そんな二人のことを知らない七夜は、授業を聞きながらボーッとしていた。今まで軟禁生活を送ってきたとはいえ、それまで全く勉強をしていないわけではないのだ。むしろ、独学に時々真中が教えてくれると気もあったため、予習も完璧である。そのため、既に答えの分かっている授業に、七夜はどうしても真面目になれなかった。

(どうやったら眠れるかな……。ああ、あの人もうちょっと左に寄ってくれれば先生から見えないなあ寄ってくれないかなあ)

 そう思っているほどに、暇だった。


 そして、よし寝よう、と決心して顔を伏せた時、七夜の机にコンコンと音をならしてくる人がいた。――隣の席の榛原(はいばら)正志(まさし)だ。天羽側で、真っ青な髪を持っている。勿論染めたものだ。榛原は一晃や笹本、聖たちのように顔が整っているわけではない。言ってしまえば平凡顔だ。そのため、美人な七夜の隣にいると、ちょくちょく視線が集まり、肩身の狭い思いをしている可哀想な人だ。


 七夜は榛原の顔を見る。榛原はノートを指す。

〝お前はどちら側につくんだ?〟

(どちら側?)

 首を傾げるとまたノートに、

〝とぼけんなよ〟

 と書かれた。

(何の事だろ)

〝何のこと?〟

 と七夜は自分のではなく榛原のノートに書けば、榛原が

〝シラきるきかテメエ〟

 と書く。


 それから、授業そっちのけで話し合い(?)が続いた。


〝天羽につくかハクホウにつくか、だよ〟

〝それって絶対にどちらかにつかなければいけないの?〟

〝強制されているわけじゃねえ。中立はある。だが魔王やモナルカって言われてるやつが中立の立場にいても、天羽とハクホウのどちらにも狙われるだけだ〟


(魔王? モナルカ? ――誰が? というか、ここは魔界じゃないよ……。というか、どうして白鳳がカタカナなのかな……?)

 漢字が書けないからである。

 予想外な返事に、七夜は戸惑った。どう返事しようか迷っていた時、榛原が何やら続きを書いているのに気付き、文字を見る。


〝真中さんは金持ちだけど天羽側だし、そんな人は結構いる。逆はないけどな〟

(それなら――)

 七夜は、榛原のノートに文字を書き込む。

〝俺はどちらにもつかない〟

 その文字を見て、榛原はどうも言えない顔をする。嬉しそうな、だが困ったような。


 そして、書く。

〝真中さんのいつ天羽に行かなくていいのか〟

〝ほとんどの生徒が天羽だと思ってるぞ〟


 首を傾げた。

(なんで……? 一晃は天羽側? 一晃って、お金持ちなのに……あ、そういうこともあるって言ってたなあ。でも、一晃ってなんで同い年にさん付けされているんだろう?)

 家の事情かな、と勝手に納得する七夜。疑問に思いながらも、返事を書く。

〝俺はどちら側にもつかない〟

(だって、敵対するのは嫌だし……)

 そこまで書くと、七夜は別のことを考え出した。


(そういえば、一晃、もうすぐ誕生日だなあ。何あげようか。今までずっと何か買ってあげていたけど……、一年間離れていたから、好みも変わっているだろうし……)

 頬杖をつき、七夜は溜息をついた。

(――あ、そうだ。何か作ってあげよう。一晃って甘いもの好きだし。でも今まで作ってきたやつじゃ、もう飽きてるだろうしな……)



「うん、やっぱり、新しく作ろう」



(お菓子の種類を)

 七夜がそう思っている間、周りはざわついていた。ざわめきの原因を知っている榛原は、静かに溜息を吐き、眉間を親指を人差し指で押さえた。



「駄目だこりゃ……」






 その授業が終わったあと、榛原は馴染みの資料室に来ていた。ドアを開くと、案の定いる三年トップの銀髪男――笹本和真。



「よお、正志」

「久しぶりっすね、和真さん」

「まあ、てきとーに座れや」



 まるで自分の部屋へ招くように言われた榛原は、苦笑しながらも笹本の隣に座る。

 そして榛原が座った後、笹本は内緒話をするように、声を少々潜めて言った。



「それで、どうだった?」

「いやいや、それがですねえ……作るらしいですよ?」

「――は?」



 二人が話しているのは、七夜のことだった。転入初日で魔王と言われるほどの七夜が、はたして白鳳側に入るのか、それとも天羽側につくのか。一晃が天羽にいる限り白鳳に入る可能性が高いが、それでも七夜は金持ちゆえに、天羽を見下している可能性も否定できない。むしろその方が有り得るのだ。初対面で、三年トップに喧嘩を売ったほどなのだから。

 そのことをどう思ったか、笹本は七夜と同じクラスの榛原を使って、情報を得ようと頼んでいたのだ。

 どんな答えが出てくるか、とドキドキしていたところに、この答えである。



「作るって、何を……?」

「だから、あの人は天羽にも白鳳にもつかないで、中立にもつかず、新しく作るらしいんですよ、派閥。名前は法堂側、かなあ……」

「は、はあ!?」



 予想外の答えに、笹本は驚きを叫んだ。

 その表情に、今まで七夜の噂を好き勝手流していた主犯である榛原は、満足そうに笑って付け加えた。



「まるで暇つぶしをするかのような軽さでしたよ。溜息を吐いた後、よし、作るかみたいな……」



 楽しそうな声音に、笹本は更に頭を抱えたのだった。



流石魔王(笑)

アンケートにて相手が決まります

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