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好きになりすぎるのは悪いことですか  作者: ネロ
中学時代編

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4/5

始まり

体育祭が終わり、家に帰ってからはすぐ風呂に入った。

湯船に浸かっても、筋肉がビリビリ痛む。

体育祭で4種目も走りまくったツケが一気に来たみたいで、ふくらはぎと太ももを自分で揉みほぐしながら、ぼんやり天井を見つめる。

(…今日、みんなに褒められすぎて頭おかしくなりそうだった…。俺はただ走っただけなのに…)

スマホを風呂場近くの棚に置いておいたら、ピコン、と通知音が鳴った。

画面を見ると、意外な名前。

瑶季たまき

『運動会おつかれ!今日の柊くんホントにすごかった!ここからは受験勉強がんばろ!』


……え?一瞬、誰だっけ?ってなった。

瑶季は今日の集合写真で隣に座ってた副級長の女子だ。

3年生になって初めて同じクラスになったけど、話したことなんて今日がほぼ初めて。

写真のときに「柊くん、今日マジでカッコよかったよ!」って笑顔で言われて、俺は「いや…みんなのおかげで…」って赤面しながら返しただけ。

それなのに、LINEの交換とかしてたっけ?

あ、そうか。写真撮ったあと、クラスのグループLINEに追加された流れで、個人LINEも何人かに送られてたんだっけ…。心臓が少し速くなる。

(なんで俺に…? 瑶季って、クラスの中心にいるような明るい子だろ。俺みたいなのと話す必要ないはず…)

でも、既読つけたまま放置するのも変だなと思って、指が勝手に動く。

『お疲れさま。ありがとう。瑶季も吹奏楽部の出し物、フルートきれいだったよ』

(…って、俺今何送ってるんだ? フルートのことなんか、ちゃんと見てたっけ? でも確かに、休憩時間にステージで吹いてるのチラッと見えて、音がすごく透き通ってて印象的だった…)

送信してから後悔の波が来る。

(やばい、急に褒めるとかキモいかな…?)でも、すぐに既読がついて、返事が来た。

瑶季

『え、覚えててくれたの!? 嬉しい〜!! ありがとう!! でも今日の柊くんはマジで別格だったよ。200mのラストの加速とか、みんなで「うわぁぁ!」ってなったもん。4種目も出てヘトヘトだったのに、軍団リレーでぶっちぎりとか…カッコよすぎてヤバかった』

『あ、ちなみに私も結構走ったよ? 女子のリレーでアンカーだったんだけど、柊くんみたいに速くなくて悔しかった〜笑』

(…瑶季も走ってたんだ。確かに、女子のレースで小柄な体で一生懸命バトン持って走ってるの見たかも)

『いや、瑶季も速かったよ。150cmでアレだけ加速できるのすごいと思う。俺なんかただ足が長いだけだし…』

瑶季

『またそれ〜! 「俺なんか」ってやめてよ! 今日の柊くんはクラスのヒーローだったんだから! みんな本気でそう思ってるよ? 私も!』

『…って、なんか熱くなっちゃった笑 ごめんね。でもホントにすごかったんだから、ちゃんと認めてあげてほしいな』


画面を見つめたまま、固まる。

風呂の湯気がスマホの画面を曇らせる。

(…認めてほしい、か)

胸の奥が、じんわり温かくなるのと同時に、なんか苦しくなる。

いつも「俺なんか…」で蓋をしてる部分を、こんなストレートに突かれてる気がした。


『…ありがとう。なんか、照れるな』

瑶季

『でしょ? 照れてる柊くんも可愛いと思うけどね笑』

『あ、ヤバい。なんか変なこと言っちゃった? ごめん! 受験モード入る前にテンションおかしくなってるかも笑』

『いや、大丈夫。…俺も、なんか嬉しいかも』

(送信してから、顔が熱い。風呂上がったわけじゃないのに)

瑶季

『じゃあさ、これからたまに勉強の愚痴とか言い合わない? 私、数学苦手でさ…柊くん数学もできるんだよね? 教えてほしいな〜とか思っちゃって』

『いや、俺も数学は苦手なんだけど…? でも瑶季が教えてほしいって言うなら、頑張ってみるよ』

瑶季

『え、マジで!? やったー! じゃあ決定ね! 受験までよろしく〜!』

『疲れてると思うから、今日はゆっくり休んでね。おやすみ!』

『うん、おやすみ。瑶季もお疲れさま』

スマホを置いて、湯船に沈む。

天井を見上げながら、今日一日の出来事が頭をぐるぐる回る。

体育祭の歓声、集合写真のセンター、瑶季の笑顔とストレートな言葉。

(…俺、ちょっとだけ、変われるかも)

疲れ果てた体が、初めて「明日が少し楽しみ」って思った夜だった。



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