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悪役令嬢の娘の母親に転生したけど、家庭崩壊・借金地獄・家族からの冷遇という地獄のモブポジションだったので、離縁して人生やり直したら、娘とイケメン公爵と平穏溺愛ライフが始まりました

作者: 結城斎太郎
掲載日:2025/07/15


「……は?」


 目の前には貴族風の室内と、大きな鏡。その鏡に映っているのは――私じゃない。


 青ざめた肌、くたびれたドレス、見るからに疲弊した女性。額に手を当てると、知らない記憶がなだれ込んできた。


(ここは乙女ゲームの世界?)


 しかも私の立ち位置は――悪役令嬢の母。ゲームが始まる頃には、すでに娘を甘やかして崩壊させた張本人であり、背景設定で死んでいるレベルのモブ。


 そして現実に目を向ければ、夫は愛人に夢中、家計は借金まみれ、娘からも「うるさいわね、役立たず」と吐き捨てられる始末。


「ふざけるなぁああああああッ!」


 目が覚めた直後、私は盛大に叫んでいた。


 だって、前世では社畜OLとしてこつこつ生きてきたのに、なんで再スタートが“悪役令嬢の娘の母”って!?


 


◇◆◇


 


「離縁していただきます、旦那様」


 再起を図る私の第一歩は、夫との離婚だった。名門レイモンド侯爵家の嫁であることには、確かに価値はある。だが、その内情はひどい。


 旦那は愛人に溺れ、家計は赤字続き、使用人には舐められ、娘にはゴミを見る目を向けられる。


 このまま屋敷に居続けたところで、破滅エンド一直線。私の選択は当然のものだった。


「……何を言っている? 出て行きたいなら勝手にすればいい。だがアリシアは置いていけ。母親の資格などお前にはない」


 夫――いや、元夫となるその男は涼しい顔で言い放った。だがそれは、私にとって好都合だった。


「ええ、もちろん。こんな屋敷で娘を育てたら、真っ当に育つわけがありませんものね」


 捨て台詞と共に、娘――アリシアの手を取って屋敷を出る。


 


◇◆◇


 


「ママ、ここ……ボロいね」


「そうね。でも、ママ頑張って働くから。少しずつ素敵な家にしていこう?」


 引っ越し先は、郊外の古びた小さな一軒家。だけど、気楽だ。誰にも怯えず、自由に呼吸できる。


 前世の社畜根性を活かして、私は裁縫と薬草の知識を活かした雑貨店を開くことにした。


 最初は細々とした売上だったけど、実直な仕事と、ちょっとした“癒し効果のあるお守り袋”が評判になって、いつの間にか行列ができるほどに。


 


◇◆◇


 


 そんなある日。


「ここの『月草の香袋』、噂通りだった。癒しの効果は本物だったよ」


 訪ねてきたのは、銀髪に蒼眼の若い男性。貴族風の気品が漂うその人は、娘の髪飾りを見て、ふと微笑んだ。


「娘さんがつけているその髪飾り、君が作ったのかい?」


「ええ、材料費を抑えて作った簡単なものですが……」


「とんでもない。王城の細工師たちより繊細だ。君の才能はもっと評価されるべきだと思うな」


 なんなの、この人。まぶしい……。イケメンすぎて直視できない。


 彼の名はクラウス=バルフォード公爵。名門の若き当主で、王都でも人気の独身貴族。


 そんな彼がなぜか、うちの店に通いつめ、さらには娘と仲良くなり、ついには――


 


◇◆◇


 


「アリシア、お父さんって呼んでもいい?」


「え、なにそれ。キモ……じゃなくて、なんか……むずがゆい……」


「じゃあ“クラ兄”でもいいよ。お母さんが“クラウスさん”って呼んでるし」


「やだ。あんたのこと“クラおじ”にする」


「地味に傷ついた」


 うちの娘と、イケメン公爵がそんなじゃれ合いをする未来なんて、想像していた?


 私はしてなかった。


 でも、今は心の底から――幸せだって思える。


 


◇◆◇


 


 離縁から三年。


 私は田舎町で雑貨屋を続けながら、クラウス公爵との穏やかな交際を重ねていた。


 娘は、以前とは比べものにならないほど優しく素直な子に育ってくれている。


「ママ、今日の夕飯はカボチャスープがいいな」


「いいよ。クラウスさんにも届けようか?」


「うん。クラおじ、最近疲れてるみたいだし、ママのスープで回復するよ」


 ああ、あの地獄の屋敷から抜け出してよかった。


 家庭崩壊、借金、冷遇――それらを捨てて自分の人生を選び取った私は、今、確かに生きている。


 脇役でも、モブでも、背景でも構わない。


 私は、私の物語を、自分で書き直す。


 たとえ再スタートが“悪役令嬢の娘の母”だったとしても。


 


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― 新着の感想 ―
"悪役令嬢の娘の母"って言い方だと、悪役令嬢が産んだ子の母親って意味になるので、本編の内容的に不適切と思われます。 普通に"悪役令嬢の母"か、もしくは"悪役令嬢な娘の母"などに直した方が良いと思います…
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