不器用だった
『 ラファイエ これは何だと思う? 』
「僕に聞かないでよ。僕だってわからないよ」
『 干からびた蛙の手か? いや家鴨の足? 』
「あ、わかった! ちょっといびつなヒトデ?」
さっきから黙って聞いていれば・・・
これは紅葉! 紅葉を掘ってるの!!
何をしているのか? お土産を探している途中で体験工房をみつけたのよ。
数種類の図案の中から選んでバレッタかコースターに木彫り体験が出来るの。
私が選んだのは紅葉の図案にコースター。初心者向けで難易度低くそうだったし。
なのに・・・さっきからこの言われよう・・・。
確かに不器用だけどさ、そこまで酷くな・・・酷いかも?おかしいな。
まぁいいやこれはこれ。思い出、記念に自分用って事で。
皆にはちゃんとしたのを買おうと思う、うんそうしよう。
ラファは・・・
店売りのと比べても見劣りしない出来栄えのバレッタ作ってたよ。器用だね?
「こういう木工は好きなんだ」
私も器用に産まれたかった。と思ってもどうにもならないよね。
一足先に作業を完了させて店先の商品を眺める。
あ、このイヤリング可愛いな。珊瑚かな? こっちのペンダントトップもいいな。
どちらも小振りな薔薇にデザインされている。
よしこれをアルテイシアさんとディアのお土産にしよう。
バルドさんには・・・あ、あのイヤカフスがいいかもしれない。
シルバーで蔦模様が施されたイヤカフス、うん似合いそう。
「ロゼ、決まったの?」
「うん、ラファは完成したの?」
「完成したよ。ほら」
おぉー、色も塗ってあるし綺麗。店売りのよりも上手なんじゃないかな。
「じゃぁ他のお店も見てまわろうか」
「うん、そうだね」
その後も 父上はこのお酒が好きそう だとか
これはトマスに似合いそう、あれは母上が好きそうなどとお土産を選んだ。
ちょっとばかり買いすぎたかもしれない・・・。まぁいいよね。
「ロゼ、あそこで似顔絵かいてくれるみたいだよ」
へぇ、この世界にも似顔絵ってあるんだ。
「描いてもらおうよ、記念にさ」
「うん、そうだね。ほら虎徹もタマモもおいで」
クレハは、残念見えないかぁ。
そうして描いて貰った似顔絵は ちょっとデフォルメが入ってた。
でも似てるからいい思い出になるねこれは。
ただ・・・しれっと豆狸が居るのは何故だろう? いつの間に?・・・
「ぷっ この狸すっかりロゼに懐いたみたいだよね」
そうだね。いつのまにか居ていつのまにか居なくなってるけど。
「早かったね、1週間」
そう、本当にあっという間だった。
次にこの町に来るのはいつになるだろう。また夏くらいかな?
それまで元気でね豆狸。
そして翌日、私達は帰路についた。
途中ちょっとだけ寄り道をするとラファが言ってたけど何処に行くんだろう。
読んで下さりありがとうございます。