切実にチートが欲しかった
急いで支度を済ませ屋敷に向かった。
ちょうど皆で朝食を摂っている所だった。
「お父さんおはよう!あのね」 ぐぎゅぅぅぅぅぅっ
うっ・・・朝食食べずに来たものだからお腹が・・・恥ずかしすぎる。
「ロゼも一緒に食べる?」
「いただきまっ・・・そうじゃなくて」
『 我から話そう 』
とディーヴァはナディの時の様に 一時だけ会話が直接出来るようにした。
「これは精霊王様。何か火急の用事でもございましたか?」
ディーヴァが姿を現した事で問題が起きた事を察してくれたみたい。
『 詳しくは後程説明させるとして。
まずはバルドに許可を貰い受けたい。 』
「許可ですか?」
『 他国に住まう我が弟とその眷属の受け入れ許可だ 』
弟?! ディーヴァの?!
さっきの手紙はディーヴァの弟からって事?
「弟君も精霊王で?」
『 左様 どうやら一刻を争う状態のようでな。
使いで現れた精霊も先程力尽きたようだ 』
え? 使いってあの蛙? 元気そうだったよね?
あ、私が払いのけて打ち所悪かったとか?・・・
『 そうではない。 残された力を使い果たしたのであろう 』
それって、それだけギリギリな状態になってるて事?弟くんの住んでる森。
どうしよう、理解が追いつかないと言うか感情がおいつかない。
「存在の危機と言う事でよろしいでしょうか?
でしたら今すぐにでもこちらにお招きくださいませ」
答えたのはアルテイシアさんだった。
バルドさんは真っ青になって硬直してしまっている。
『 感謝する 』
ディーヴァがなにやら不思議な言語を唱えると魔方陣が展開された。
そこにグイッと手を突っ込み、ずりずりと人が引きずりだされた。
人じゃない、精霊王。ディーヴァの弟くんだ。
でも弟くんはぐったりとしていて動かない、動けないんだと思う。
どうしよう、どうしたらいい? 私に何か出来る事はないの?
すっごいヒールが使えるとかさ、分け与えるだけの魔力持ってるとかさ。
なんで異世界あるあるのチートが無いかな私。
見てる事しか出来ないの?そんなの嫌だよ・・・
『 ねぇ主。思い出して。物語の主人公がピンチの時はどうしてた? 』
物語の主人公がピンチの時? いや翡翠今それどころじゃ・・・
ん?そこにヒントがあるって事?・・・
うーん・・・お姫様の場合は王子様が現れて・・・口付けを・・・
まさ・・・か?・・・
『 そう言う事! 』
うそでしょぉぉぉぉ。人前で! 家族の真ん前で! しろって言うの?!
そもそも口付けただけで何がどうなって助かるのよぉ。
いやほんと、切実にチートが欲しかった。
『 急がないと・・・消えちゃうよ?・・・ 』
ハッ、本当だ。さっきよりなんだか薄くなってるような・・・
現実逃避してる場合じゃなかった。
恨むよ神様。精霊の愛とし子っていうなら精霊を癒す力とか欲しかったよ。
えぇい、女は度胸!!
どうか消えないで。生きて。そう願いを込めて口付けた。
ルシェとラファが騒がしい気がする・・・。
と、体が一気に熱を持った。羞恥心からなか。
すぐに熱は収まり 弟くんの姿はしっかり安定したようで。
よかったと思ったら体の力が抜けた。
ディーヴァが何か言ってるけど、その声はだんだんと遠くなって・・・
たぶんそのまま気を失っていたんだと思う。
気が付いたらソファに寝かされていたのよね、ディーヴァの膝枕付きで・・・
読んで下さりありがとうございます。