野菜談義?
男の子は不安そうに私を見つめている。
「お姉ちゃんどうしたの? お腹痛いの? 大丈夫?」
あ、心配してくれたのね。
「ありがとう、大丈夫だよ。
お腹が痛いんじゃなくてね?ちょっと考え事してたの」
「そうなんだ。何を考えてたの?お財布落としちゃった?」
こんな幼い子に何を心配かけてるんだか・・・
「財布は落としてないよ。心配かけてごめんね。
野菜をね、育ててみようと思ったんだけど種をどうしようかなって」
「そっかあ。僕も悩んでたんだ。同じだね」
「君も野菜の種を探しているの?」
「ううん、僕は種じゃなくてどうしたら苗が元気になるかなって」
「お野菜の苗に元気がないの?それは心配だねぇ」
「うん。お母さんも心配してるし僕がもうちょっと大きかったらなぁ。
もっとお母さんのお手伝いもできるのに」
随分としっかりしてるね。こっちの世界の子は皆こんな感じなのかなぁ。
って幼児と野菜談義する私ってどうなのこれ・・・。
でも5歳で畑仕事してるのかな、こっちの子は逞しいねぇ。
と2人で話してたら駆け寄って来る女の人がいた。お母さんかな?
「テオ、何してるの。お姉さんの邪魔したら駄目よ?」
「あ、お母さん!」
テオくんて言うのか。やっぱりこの人がお母さんなのね、若いなあ。
ペコッと頭を下げられたので私も頭を下げた。
「こんにちは。テオがお邪魔したみたいでごめんなさいね」
「こんにちは。いえ、相談に乗ってもらってたんです」
「え?」
え?ってなるよね。普通幼児相手に相談とかしないよね。うん知ってる。
「このお姉ちゃん、野菜の苗がなくて困ってるんだって」
「あら、そうなの?」
「はい、そうなんです。
庭に小さな畑を作って育てようと思ったんですけど、種も苗も売ってなくて。
どうしようかなと考えていたらテオくんが声を掛けてくれたんです」
「そうだったのね。野菜作りは初めて? 種用のを残し忘れたのかしら?」
やっぱり皆種用に残して自分で育ててるのね。
「以前も畑仕事はやってた事があるんです。
こちらに新しく引っ越してきたのを機にまたやってみようかと思って。
あ、商売用じゃなくて自分で食べる分だけなんですけどね。
だから苗か種を採尾持って買いに来たんですけど・・・」
「ああ、他の場所から越して来たのね。
この町では商売で売る農家以外はあまり家で育てる人いないのよ。
それに家出少量育ててる人も種用を残しているのよね。
だから種も苗も売っていないのよ」
「そうなんですね、教えていただきありがとうございます。
じゃあ畑は諦めようかなぁ。農家さんの領分だもんね。」
そうだよね、そうやって役割分担してるのかな。
元の世界でもそうだったものね。
家庭菜園とかはあくまでも趣味の範囲になっちゃうし。
と諦めモードになっていたんだけど
「お母さん、農家じゃないと作ったらだめなの?」
「駄目じゃないわよ?お花屋さんじゃなくても庭に花も植えてるでしょう?」
「じゃあさぁ余ってる苗はあげたらだめなの?」
余ってる苗?! 今テオくん余ってる苗って言った?!
キラーンと私の目が光ったきがする。涎はたぶん出てないと思う、思いたい。
読んで下さりありがとうございます。