手放してあげて!
いよいよ明日は新居へと荷物を運びこむ。
なのに私は今町へ来ている、何故か?
ふふふ・・・ カーテン買い忘れてたのよね・・・。
ほらあれよ、ちょっとしたど忘れってやつ?・・・あはは・・・
そして今日も隣にはルシェが居る。
勉強や剣術の稽古は?と思ったんだけど
「元々休みの日だ」
だそうで・・・。
まぁカーデンはちょっと重たいからありがたくはあるのだけれども。
カーテンを買う前に行きたい場所があるとルシェは言っていた。
街並みを抜けて少し離れた小高い丘に馬車は向かっている。
そう馬車なのよ今日は。
馬だとほら、荷物が乗らないから。
手綱を握るのはルシェ。でその隣に座っている訳なんだけど。
ちょっとドキドキしてしまう。
出掛けに虎徹と翡翠が余計な事言うから・・・
『 主 デート 忘れないで! 』
『 ちゃんとルシェの気持ち汲んであげるニャ 』
変に意識してしまうじゃないよねぇ・・・
「ロゼ 着いたぞ」
あ、いつのまにか到着してた。って・・・すごっ一面のラベンダー!
富良野みたい。
「ここは初夏に星降りの祭りを行う場所なんだ」
星降りの祭り? どんな祭りなんだろう。
「この国では亡くなった者達は空へ帰ると言われている。
そして亡くなった者達が地上を見て懐かしみ
流す涙が流星になるとも言われている。
その流星が一番多くみられるのが初夏なんだ。
我々は貴方達を忘れていない、だから安心して見守っていてくれ。
そう言う想いを込めて ここで語らい軽食を摘まむのが星降りの祭りだ」
亡くなった人達を偲ぶ 精霊流しとかお盆に似た感覚なのかな?
「先祖や亡くなった家族への1年の報告もするんだ。
だからその時に俺はロゼの事を報告したいと思っている」
ん? 私の事を? 異世界から精霊の愛し子招きましたみたいな?
「俺達は300年不在だった精霊の愛し子を得る事が出来た。
それは喜ばしい事だ。
だがロゼ、君は・・・
今まで君が歩んできた人生、家族や友人や生活そのもの。
それをすべて失った、いや俺が奪ってしまった・・・」
んん?? ちょっと待って? 確かにそうかもしれないけど
元の世界で私がどうゆう扱いになってるかなんて解らないし
もしかしたら存在そのものが無かった事になってるかもしれない。
ましてや家族はすでに他界してるし 仕事はブラックだったし
友人は・・・ふっ・・・忘れよう。
「ルシェ、私は奪われたとは思ってないよ?
新たな人生、生活を貰ったと思ってる。
そりゃ残して来た畑や鉢植えや冷蔵庫の中身は気になるけど
でもね、虎徹が居て翡翠がいる。
ルシェやバルドさんや皆が新しい家族になると言ってくれた。
町の人もトマスさんもマリーさんもメイドさん達も皆優しいし温かい。
何を悲観する事があるのかな?」
「だが・・・」
「ルシェ真面目過ぎ! 小難しく考える必要はないの。
大事なのは 今私は楽しく生きている、前を向いて歩けてるって事」
うん、これ自分に言い聞かせてるようなものよね。
ルシェはしばらく俯いて考えていたけど、吹っ切れたのかパッと顔を上げ
「解った。ロゼがこの先笑顔で過ごせるように俺が責任を持つ」
へ?・・・ いやいやいや責任とかそんな大げさな!重苦しい!
「いやそんなに重大な事に捉えなくても」
「言い方がマズかったか。
ロゼの笑顔を守らせて欲しい、ロゼのじんせ・・・・モゴモガッ」
『 そこまでにしておけ。
お主何を焦っておる。 もう少し自分の考えを纏めてはどうか。
しかも先に言うべき事があるであろうに 』
行き成り現れてルシェの口塞いじゃったよ、この精霊王。
「フガッ モゴモゴッ ンゴッ」
あ、鼻まで塞いじゃってるじゃない。
「ディーヴァ!手! 手放してあげて! 窒息しちゃう!!」
『 む? おぉ・・・これは失敬 』
「フハァ・・・
すまない・・・。
先日も言ったが ロゼ好きだ。
これは責任感とかじゃなくて・・・
その・・・最初は一目惚れだった。
いつも目が合うと不思議な事をやっていて
その内目が離せなくなって・・・
気が付けば・・・ロゼの事を考える事が増えて・・・」
一目惚れ・・・マジすかぁぁぁぁ。
いつも目が合うと不思議な事・・・
うん、変なポーズ取った場面でちょくちょく目が合ったね確かに。
そりゃなにやってんだと目も放せなくなるでしょうよ!
あんなポーズとか見てても好きになったの?! 変わり者だねルシェ。
って好きと言われても困る。でも責任とか言われてももっと困る。
まだ1ヵ月だよ? 生活基盤整えたりこっちに慣れるのにまだ精一杯だよ。
「今すぐ返事が欲しいとか、好きになってくれとは言わない。
ただ一緒に出掛けたり傍に居たりする事を許してはもらえないだろうか」
ルシェ 一般的にね、それは恋人関係と言うんだよ?
うん、きっと解ってないよね。そんな気がする。
『 まずはお互いをより知る事から始めればよかろう 』
そうだね、難しく考えないでおこう。
「ルシェ お互いをもっと知るって意味でなら」ニコッ
「ああ、十分だ。ありがとう」
『 では我も。 ロゼ我ともデートとやらを所望する 』
へ?・・・
『 愛し子だからな 我とて愛でたい 』
えぇぇぇ・・・・
その後は正直覚えてない。
地に足が付かないと言うかフワフワすると言うか。
気が付けばカーテンはしっかり買って帰ってたけども。
うん、取り敢えず寝よう。寝て頭スッキリさせてから考えよう。
はふん・・・
読んで下さりありがとうございます。




