バルドと言う人
バルド・トレバー 38歳 愛妻家
少し気弱そうな可憐な少女
最初はそう思った。
だかその印象はすぐに覆される。
本人は無意識ながらも 思った事が口に出ているし
名前も元の世界の家族の顔も思い出せずにいるのに
思い出は覚えているからと笑う少女。
不安がって泣く事も 元の世界に戻りたいと懇願する事も無く
ありのままを受け入れる心が強い少女なのだろうと思った。
そしてペットを家族と呼び 愛し愛されているのが見て取れる。
ただしあの愛情表現は遠慮したいと思う。
まだ不慣れにもかかわらず
この世界で自立した生活を送りたいと彼女が言い出したのは驚いた。
気にせずここで暮らしては?と提案もしてみたが
元々が働き自立した生活を送っていたのだと言う。
未成年だというのに苦労してきたのだなと思えば 28歳だと言う。
どう見てもうちの子達と同じくらいだろうとまた驚く事になった。
年齢が若返っているようだと?!
見た目も変わっている?!
元々は黒目黒髪だったと?
もはや驚きの連続だが何とか踏ん張って平静を装う。
彼女の希望する【スローライフ】とやらをおくらせてあげたいとは思う。
だが何も解らずにいきなりと言うのも心配がある。
アルテイシアの提案で1か月 基礎知識を身に着けて貰う事となった。
元々家族として迎え入れる予定だった。
お父様と呼んで欲しいだなんて
ついポロッと本音(願望)が漏れてしまったのは許して欲しい。
『 ロゼ、私達を この世界での家族だと思ってはくれないか?
君がこの世界で暮らすにあたり、家族として支えていきたい。
今すぐにとは言わないから 考えてみてくれないか 』
彼女は照れ臭そうに微笑んだ。
名残惜しいが仕事があるバルトは退出しかけて足を止めた。
『 明後日なら俺が空いているから町や牧場に出掛けてみるか? 』
アルテイシアと視線で合図を交わす。
ルーシエが行くならラファイエも付いて行くだろう。
そうなればハイディアも行くに決まっている。
我々だって一緒に出掛けたいのだ、抜け駆けはゆるさん。
張り切って苦手な書類仕事も片付けるバルドを見て喜ぶ執事トマス。
だが後日
視察だ視察!と出かけるバルドの背に盛大な溜息をつく事になるのを
今の彼はまだ知らない。
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