ラファイエと言う少年
僕はラファイエ・レトリー。レトリー王家の次男で14歳。
王家といっても小国なので王子らすさはまったく無かったりする。
今は母上や兄上と一緒に昨夜呼び出された女性と話をしている。
【 ぐぅぅぅぅっ 】
母上との会話の途中で 彼女のお腹が鳴った。
笑いそうになったのを我慢して クッと喉が鳴った。 頑張れ僕。
ここは聞こえなかった事にする方が賢明だと思う。
母上の目がそう言っている気がする。
母上はすぐに食事を運んでくるよう兄上に指示を出し
僕にはショールを持ってくるように言った。
持ってきたショールを女性の肩に掛けながら昨夜のことを詫びる。
「改めて、僕はラファイエ。昨日はごめんなさい。
いくら驚いたからって、あれは駄目だったと反省してる。」
何がとは言わない。きっと彼女も触れて欲しくないだろうから。
僕が名乗ったので彼女も名乗ろうとしてくれたけど、思い出せないみたいだ。
呼び出した弊害かな? それともショックが大きかったのだろうか。
唖然とする彼女を母上がなだめている。
ちょうど兄上がワゴンを押して戻って来たタイミングで
【 ぐぎゅぅぅ 】
先程よりも豪快な音が鳴った。
「 ぶっ 」
「こらっ ラファイエ。失礼でしょう・・・」
ごめん、でも不意打ちの2回目で我慢出来なかった僕は悪くないと思いたい。
兄上は平然とサイドテーブルを移動させているけど肩が小刻みに震えてるよね?
サイドテーブルに料理を並べる手も震えてるよね?僕も腹筋に力入れてるけどさ。
『 熱が下がったばかりだし胃に優しい物を用意してもらっいました。
スープは熱いだろうからゆっくりと食べて下さい 』
兄上? 笑いを我慢しているからなのか喋り方がいつもの兄上じゃなかった。
食事をしてもらいながら母上の説明を聞いて貰ってるんだけど
きっと彼女は無意識なんだろう。
独り言のように呟いては首をかしげたり唸ったりしている。
表情がコロコロ変わって面白い、いや失礼。
でもこれどう反応すればいいんだろう。
つい見つめてしまったら彼女と目が合った。マズイ・・・
『 これってもしかして・・・もしかしなくても・・・
「全部声に出ちゃってました?・・・」 』
ええ、でてますよなんて言える訳ないので頷いておいた。
3人共が頷いたものだから彼女の顔は真っ赤になった。
すぐに母上が気持ちを切り替え説明の続きを始めた。さすが年の功だよね。
黙ってっるとまた笑いが込み上げてきそうなので僕も会話に参加しよう。
「過去にも前例が数件だけあったらしくてね。
史実書にも記録が残っていたんだ。
対策としては 異世界から精霊の愛し子を呼び招くと載っていたんだよ。
だから我が家で一番魔力の高い兄上が呼びかけをおこなってね」
緊張しているのかザックリした事しか言えなかった。
兄上の事笑えないな、これじゃあ。
『 その結果 君が招かれた訳だ。一糸まとわぬ姿で 』
ちょ!兄上?! 慌てて兄上の口を押えたけど遅かった。
「兄上!『ルーシエ!』 最後の一言は要らないだろ!『でしょ!』」
ゴンッ 母上の鉄拳が兄上の頭に落とされた訳で・・・
その後の会話は特に問題なく進んだ。
彼女のこの一言が出るまでは。
『 あの! 私どのくらいで元の世界に戻れますかね?
鉢植えの土の入れ替えとか畑の種まきとか!
あぁその前に草引きと石灰と燻炭と・・・ 』
まだ現状を受け入れきれていないだろう彼女に
戻る事は出来ないなどと告げる事は躊躇われる。
僕達は顔をしかめる事しか出来なかった。
しかし彼女は意外にも落ち着いていて
『案外図太いな私・・・』
『私物と言えるのが片手桶1つ?』
『やだなぁ洗濯籠に洗い物入れたままだ・・・し?』
落ち着いてる・・のか? また考えが口に出ちゃってるよ。
彼女の愛犬はちょっと変わった癖があるらしい。
当然それもだだ漏れな訳で・・・指摘するのも躊躇ってしまう。
『 虎徹ぅぅぅぅぅ!! 』
気持ちは解るよ、叫びたくもなるよね。
僕も自室のアレコレをペットが引っ張り出したら・・・叫ぶだろうなぁ。
『 ぅわんっ!! 』
足元で強面の犬が鳴いた。 どこから湧いた?
尻尾がフリフリ勢いよく振られてる。 君が虎徹?
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