敢えて言わなかったのに
寒さが少しづつ緩み もうすぐ春になるであろうある日
冬の精霊と雪の妖精達がそろそろ旅立つと挨拶にやって来た。
来期は豪雪にしないでねとおやつのマフィンを持たせたら喜んで・・・
季節外れの雪が降ったよねぇ。まぁ名残雪って事で・・・アハハ。
雪だるま達もジワジワと溶け始めてちょっとしたホラーになってる。
夜は見ないようにしないと・・・。
そろそろ庭木の冬囲いも外して良さそうだよね。
でもまだ朝晩は冷え込むから、薪はもう少し必要かなぁ。
「ロゼ、薪はこれくらいで良いか?」
わぁお、さすがルシェ。しっかり補充してくれてるし。
「うん、ありがとうルシェ」
あれからルシェは照れ臭そうにしながらも少し笑顔が増えた。
そして・・・アルテイシアさんの
「成人まで待たなくてもさっさと婚約くらいしちゃいなさぁい?」
の一言でラファが留学に出発する前
スズランが満開の頃に婚約する事になったのよね。
婚約指輪も作る事になったんだけど、ディーヴァもクレハも欲しいと言い出して
『 3人だけで揃いとはいかがなものか 』
『 我等とて愛し子との揃いが欲しいのは当然かと 』
『 フォッフォッフォッフォッ 』
えぇぇ、翁も? 可愛い孫と揃が欲しい?・・・
私いつから翁の孫に確定したんだろう?
結局は6人でお揃いの指輪・・・
君達はさ・・・気付いているのかな?
男同士ででもお揃いになると言う事実に・・・まぁ黙ってるけどさ。
指輪は翁の友人が作ってくれる事になったみたい。
どんなのになるのか楽しみだったりもするけど。
そして裏庭に 梅の木が・・・いつのまに?
と言うかね? この世界に梅ってあったの?!
『 あの愚弟が探して来たらしく 』
あー、あの弟くん。 って何故に?・・・
『 先日の詫びと婚約の祝いだそうだ 』
なるほど?・・・よく梅なんて見つけて来たね。
『 桜は見つけられなかった、すまないとの事だ 』
いやいや梅があっただけでも凄いと思うんだけど、桜も探してくれたんだ。
『 寝言で 梅が~ 桜が~ 花見が~ と唸っておったでな 』
また寝言かぁぁぁ、しかも唸ってたって・・・
ってそれ弟くんに伝えちゃったの?! 恥ずかしすぎるんだけど・・・
『 気にするでない 』
いや気にするよ! ホントなんとかなんないかな私の寝言・・・
ん?ちょっと待って。寝室は出入り禁止よね?
『 入ってはおらぬぞ? 』
え?・・・ 待ってそれって・・・部屋の外にまで聞こえてたって事?
嫌過ぎるんだけども!!
『 まぁよいではないか、聞くとて我等しかおらぬ 』
確かにそうかもしれないけどさぁ・・・
『 それよりも準備は出来ておるのか、今日はラファイエが来るのであろう? 』
あ、そうだった!
雪も少なくなってラファの遊びに来る日が増えたのよね。
今日はスコーンが食べたいと言っていたから焼き上げなきゃね。
クロテッドクリームやジャムと食べれば最高よね。
『 では我は旨い紅茶でも入れるとしよう 』
最近ではすっかり紅茶にハマり入れ方も上手になったディーヴァ。
クレハはスジョンガにハマったみたい、うんうんシナモン美味しいもんね。
「ロゼ!来たよ」
「いらっしゃいラファ。もうすぐスコーンも焼きあがるよ」
「わぁ楽しみにしてたんだ。これ母上から」
手渡されたのはウエディングドレスのデザイン画
アルテイシアさんが張り切っている。
どれどれ・・・
ゴンッ
私はテーブルに突っ伏した。
「これ・・・ドレス?・・・」
「え? 違うの?」
「見せてみろ」
ルシェとラファも覗き込む。
ドサッ ゴツンッ
ね?そうなるよね?
「これは・・・何かが違う様な」
「母上は何を考えてこのようなデザインに・・・」
デザイン画のそれは・・・そりゃもぉセクシーなデザインで・・・
どっちかと言えばキャミソールに近いような?・・・
ドタドタドタッ ガチャッ
「やだごめんなさい、渡すデザイン画間違えちゃったぁ~」
「「「 ・・・ 」」」
うん、誰のかとか聞かないよ?聞くの怖いもん。
「こっちがロゼのドレスよぉ~、おほほほほほ。ではねぇ~」
取り換えて慌ただしく去って行ったけどアルテイシアさん・・・
「絶対あれ母上のだろ・・・」
いやぁぁぁ 敢えて言わなくてもいいのよルシェーーーー!!!
読んで下さりありがとうございます