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15(72).ダンジョン主

第8層は静けさを取り戻していた。

しかし、地面の底から薄っすらと魔力を感じる。

それは、ミノタウロスがダンジョン主ではないという事だ。

僕らは、手分けして第8層をくまなく探索した。

静かな空間には、3人の足音だけが響き渡る。

闘技場エリアを越え、入り口と対面になる空間へ探索範囲を広げた。

それでも、何処を調べても行き止まり。

僕は、過去の記憶を辿る。あの時の師匠との会話。

一方、ラスティは、床を舐めるように調べていた。

彼女は一番奥の壁を調べ、その床を爪で傷つける。

そして別の場所へ移動する。


「ルシア!ここの床、少し削れてるよ。」


僕は、ラスティの呼びかけに応じ、彼女の元へ急いで向かう。

彼女が床を叩くが、他と同じように見える。

何度も繰り返すが、小さな手では何も起こらない。

彼女は、こちらを向き、声を投げる。


「ルシア、ここ削れてるから何かあるよ。」


僕は、彼女に変り壁を叩き、その反響を調べた。

そこには確かに空間があるようだ。

しかし、壁の仕組みは分からない。

僕は、考えるのをやめて、腰を落とし力いっぱい盾の側面を壁に叩きつけた。

そこは、以外にも簡単に崩れ落ち、下へ続く階段が姿を現す。

ラスティから向けられる視線は死んだ魚の目だ。

僕はそれに触れず、第9階層を目指す。



階段は8階層と同じように螺旋階段だが、急に視界が開けた。

眼下には紫色の魔炎に照らされた巨大な女神の像。

女神の像は力ずよく槍を携える。

4柱の一つ鬼神アテーナイエのだろう。

そして、その女神を守る様に1つの鎧が鎮座していた。

その鎧の意匠は荘厳で、この場に相応しいが兜がない。

僕の魔力感知は、ソレがただの鎧では無い事を感じさせていた。

階段を降り鎧の正面にすると、その異常な魔力に驚愕する。

それは、見た目以上に大きい魔力の塊だった。

ラスティは、僕の背中にくっ付き、首越しに異常な魔力を見つめる。


「ルシア、あれヤバいよ・・・無理しないで。」


僕は、彼女を軽く撫で、盾を構え体勢を整えた。

眼前の鎧は、静かに立ち上がる。

その静けさとは裏腹に、異常な魔力が戦意を挫く。

8階層のミノタウロスなど赤子の様に感じられた。

静かな空間に、金属音がひは静けさを取り戻していた。

しかし、地面の底から薄っすらと魔力を感じる。

それは、ミノタウロスがダンジョン主ではないという事だ。

僕らは、手分けして第8層をくまなく探索した。

静かな空間には、3人の足音だけが響き渡る。

闘技場エリアを越え、入り口と対面になる空間へ探索範囲を広げた。

それでも、何処を調べても行き止まり。

僕は、過去の記憶を辿る。あの時の師匠との会話。

一方、ラスティは、床を舐めるように調べていた。

彼女は一番奥の壁を調べ、その床を爪で傷つける。

そして別の場所へ移動する。


「ルシア!ここの床、少し削れてるよ。」


僕は、ラスティの呼びかけに応じ、彼女の元へ急いで向かう。

彼女が床を叩くが、他と同じように見える。

何度も繰り返すが、小さな手では何も起こらない。

彼女は、こちらを向き、声を投げる。


「ルシア、ここ削れてるから何かあるよ。」


僕は、彼女に変り壁を叩き、その反響を調べた。

そこには確かに空間があるようだ。

しかし、壁の仕組みは分からない。

僕は、考えるのをやめて、腰を落とし力いっぱい盾の側面を壁に叩きつけた。

そこは、以外にも簡単に崩れ落ち、下へ続く階段が姿を現す。

ラスティから向けられる視線は死んだ魚の目だ。

僕はそれに触れず、第9階層を目指す。



階段は8階層と同じように螺旋階段だが、急に視界が開けた。

眼下には紫色の魔炎に照らされた巨大な女神の像。

女神の像は力ずよく槍を携える。

4柱の一つ鬼神アテーナイエのだろう。

そして、その女神を守る様に1つの鎧が鎮座していた。

その鎧の意匠は荘厳で、この場に相応しいが兜がない。

僕の魔力感知は、ソレがただの鎧では無い事を感じさせていた。

階段を降り鎧の正面にすると、その異常な魔力に驚愕する。

それは、見た目以上に大きい魔力の塊だった。

ラスティは、僕の背中にくっ付き、首越しに異常な魔力を見つめる。


「ルシア、あれヤバいよ・・・無理しないで。」


僕は、彼女を軽く撫で、盾を構え体勢を整えた。

眼前の鎧は、静かに立ち上がる。

その静けさとは裏腹に、異常な魔力が戦意を挫く。

8階層のミノタウロスなど赤子の様に感じられた。

静かな空間に、ガシャガシャと金属音が響き渡る。

動き出したデュラハンは、何故かぎこちない。

無造作に間合いは詰まり始めた。

鎧のきしむ音だけが空間に響き、空気を張り詰めていく。

僕は、盾を握り直し、半身で構えた。

張り詰めた空気とは矛盾する動き。

デュラハンは鞘ごと剣を振り上げ、その勢いで抜剣させる。

明らかに素人以下の動きだが、その剣身は炎の様に光が揺らめく。

力任せの一撃は、盾で簡単に防ぐことができた。

しかし、その攻撃は圧倒的に重い。

僕は、手に魔力を集中させ、その左腕に触れて魔力発散を行う。

手甲はその場に落ちるが、それだけだ。

デュラハンは何事も無かったかのように雑な斬撃を放つ。

鎧の行動には変化はなく、力だけが増しただけだ。

僕は、盾を傾けてその力を逃す。

そして、がら空きになった腹部に盾の縁をぶち込む。

デュラハンは、バランスを崩し後ずさる。

しかし、可笑しな動作で無造作に立ち止まった。

僕は異常な動作に眉を顰める。

それは、生物の動きには到底見えないからだ。

しかし、時間が経つごとに、眼前の鎧の動きは、人のそれに近づいていく。

勝機を見いだせないまま戦闘は続く。

距離が開くとデュラハンは、地面に落ちた手甲を拾い元の位置に戻す。

そして、手の感触を確かめるように指を動かした。

僕は、バスターソードを抜き、構え直し次の攻撃に備える。

斬撃も様になったデュラハンは、ジリジリと距離を詰めた。

その姿は、自分の動きを見ている様だ。

デュラハンは、体重を乗せ斬撃を放つ。

その斬撃は盾を襲い、僕は衝撃で壁際まで吹き飛ばされた。

視界に映るデュラハンは型で息することは無い。

しかし、その魔力は、最初に比べ8割程度に減っていた。

僕は、デュラハンが繰り出す斬撃を剣でいなし、その背後に回る。

そして、盾に魔力を這わせ体重をかけた一撃を見舞う。

魔力は、デュラハンへ伝わり魔力発散をおこなう。

デュラハンは、衝撃で吹き飛び、受身せず倒れ込む。

その魔力量は6割程度に減少。

この結果は予想通りだ。

それでもデュラハンは、少し経つと何事も無かったように動き出す。

見かけ上は、何も進展が無いように思えた。

デュラハンの魔力量は減っているが、その動きはキレを増していく。

僕は決定的な打開策も無く、デュラハンと打ち合う。

剣戟だけが響き渡る空間。

その美しい打音は淀み始め、それを持つ手にも違和感を与える。

そして、バスタードソードの剣身にヒビを走らせた。

バスタードソードの刀身は6割を残しあとは闇へ消えた。

僕は、盾を前に半身になり、防御の構えを取るしかできない。

討伐イメージがわかないまま時だけが過ぎた。

焦りの表情の中、ラスティの声が耳に届く。


「ルシア、アレ1体じゃないんじゃないかな。」


その発言に僕の違和感は答えを見つけた。

僕は、デュラハンの斬撃に剣を合わせる。

バスタードソードは衝撃で折れるが、剣戟を成立させた。

そのまま、強引に体をねじ込み、デュラハンの剣を持つ右腕に魔力を流す。

力を失う、デュラハンの右腕。

さらに僕は腰を入れ、デュラハンの腹へ盾の縁をぶち込む。

衝撃で、デュラハンの右腕は吹き飛ぶ。

そして、右腕を亡くしたデュラハンは仰向けで倒れた。

僕は、地面に転がる右腕を遠くへ蹴り飛ばす。

そして、折れたバスタードソードを捨て、デュラハンの剣を拾い上げる。

剣は魔力を込めると、その大きさを持ち主に合わせ変化した。

手になじんだ剣は容易く魔力が通り、まるで自分の腕の一部の様だ。

僕は剣を構え、間合いを詰める。

目の前のデュラハンは、四つん這いになり立ち上がろうとしていた。

硬質な革の音は、間隔を縮め、そして音を大きくする。

僕は、速度を落とさず流れるように飛び、大上段から鎧を切り裂く。

デュラハンは、斬撃でバラバラになり、魔力を分散させた。


「ルシア、見て」


ラスティの視線の先には、不思議な光景が広がっていた。

脚部や、腕部からは、胴体を求め触手の様なものが伸びる。

僕は、魔力を乗せた斬撃でそれを阻止する。

もう一方の脚部も同様に動き出すが結果は同じだ。

剣閃は容易く、その魔物を借りとる。

僕は、魔剣を床に刺し、肩で息をする。

魔力は限界に達し、立っているのもやっとだった。

周りにはもう魔力はない。

ようやく目標を打ち取ったのだ。

僕は、討伐証明の魔結晶を各部位から取り出し、9階層を後にした。

後方で静かに佇む巨大な女神は、人の足掻く姿を見て、ほくそ笑んでいる様にも映る。

階段を上がると女性冒険者が待っていた。

彼女の傷はふさがったが、腕が元に戻ることは無い。

彼女は暗い表情を見せず僕達の勝利を称賛した。

僕達は戦闘を控え、迂回しながら上層を目指す。

目の前には本物の空が広がる。

8日ほどかかり、無事ダンジョンから脱出した。

星々も僕達の帰還を祝福するようだ。



ギルドを出てから18日、ようやくスキュレイアの町に戻る事が出来た。

太陽は沈み、虫の唄声が辺りを包んでいる。

受付に、依頼書と討伐証明素材を提示すると、女性エルフの受付嬢がのが涙を流し喜ぶ。

そして、思いがけないことが起こった。


「ルシア様、依頼達成おめでとうございます。」

「ギルドへの貢献とオルハウル様の名により、銀等級に昇格となります。」


予想もしない事に驚くが、受付嬢の後ろに控える老職員は視線を返し頷く。

僕は、受付から銀合金の登録証を受け取る。

そして、ついでとばかりに魔物素材の売却と未踏破エリアの報告をする。

銀等級昇格にギルド内は静まり返っていた。

しかし、未踏破エリアの情報が、小声で人づてに飛び交い場内は沸き立つ。

遺跡の未踏破エリアは学者たちが喜び、その警護に冒険者の需要が高まるからだ。

僕は受付から報酬を受け取り、併設された酒場へ足を向けた。

酒場までは様々な冒険者に声をかけられる。

それは、賛辞や嫉妬、勧誘、そして男からのナンパだ。

僕は、それ等に対処し酒場のカウンターへ移動した。


「あんた、スゲーな。今日は何を注文するんだい。」


僕は、酒樽一つと2人分の食事を頼む。

そして、主人に酒樽客に振る舞う様に伝えた。

これは、ルーファスの教えだ。

みんなが嬉しい時は、みんなで楽しむことが円滑な関係を築くらしい。

確かに嫉妬の視線はなくなったが、絡む人は増えた。

僕は、ラスティに今後の事を訪ねる。

彼女は食事を平らげると、僕のフードに入り込み僕に告げる。


「ウチの案内はまだ途中だよ・・・ついてっちゃダメかな?」


彼女は会話を尻蕾にし、フードの中へ隠れた。

僕は、そんな彼女を優しく撫でてそれを返答とする。

翌朝、僕は宿の庭で、朝の鍛錬を行う。

すれ違う冒険者たちは、気さくに挨拶をしダンジョンへ向かう馬車に急いだ。

僕は改めて、ルーファスの教えは偉大だと感じた。


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