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至らせ剣士は魔法使いの男の娘 -酔いどれエルフの謡う詩-  作者: 齋藤ミコト
第三詩節 ~ 哀・切望 ~ 
69/325

12(69).猫の瞳

目の前には闇が広がる空洞。

吸い込まれるように風が吹き込んでいた。

僕たちは第四層へ続く階段を下る。

足をガクつかせながらも第四階層に到着。

地図を想像しながら、ラスティの指示に合わせ闇の中を進んだ。

ランタンの薄紫の光が石壁を照らす。

遠くには、いくつかの魔力を感じる。


「ルシア、この階層は宮殿みたい。」


左手を這わせた壁が急に消え、そして天井も闇に飲まれた。

遠くで疎らに硬質な足音が聞こえる。

僕は盾を構え、鞘からバスタードソードを抜く。

空間は、鋼鉄の刃が鞘を滑る音だけを強調する。

硬質な足音は目標を決めず不快なリズムを刻む。


「ルシア、右の柱から出てきた。」


僕はラスティの声と、魔力の位置を合わせる。

スケルトンの様な足音だが、魔力は明らかに大きい。

僕は、ゆっくりと間合いを詰める様に近づく。

薄紫の光に映し出された姿は、スケルトンと変わらない。

だたソレは、帯びた魔力をその手に集中させた。


「ラスティ、つかまって!」


僕は、その場から間合いを離す。

その瞬間、辺りは氷霧で包まれ、大気が爆発を起こす。

僕は、飛び散る氷槍を盾で受けつつ、強引に間合いを詰めた。

薄紫に照らされた骸骨は、突き出した腕を横薙ぎに振るう。

僕は、正面に構えた盾を、その薙ぎに合わせ懐に潜った。

そして、右から逆袈裟に刃を切り上げる。

骸骨の纏うローブは、抵抗なく切り裂けた。それは余りにも軽い触感だ。

さらに接近し、振り抜いた刃を逆に袈裟切りに走らせる。

頭蓋骨から入った刃は肋骨を容易く破壊し、脊柱を2つにした。

地面に転がる骸骨の2つ断たれた上部を足で踏みつぶす。

その瞬間、目の前の魔力は消滅した。

残ったのは骨の山とワイトの魔結晶だ。

僕はソレを背嚢に入れ、魔力探知を強める。

ワイトは柱の本数と同数存在した。

近くの魔力は2つ。

ゆっくりと間合いを詰める様に硬質な足音が大きくなる。


「ルシア、左のが近づいてる。」


僕は、ラスティの指示に従う。

近づく魔力との距離を詰め、大上段から両手の一撃を放つ。

ワイトは反応することなく骨の山に変わった。

遠くからは魔力の高まりを感じる。


「ラスティ、魔結晶の回収をお願い。」


僕は何もない空間に走り目標へ向かう。

ワイトの氷刃は冷たい音だけを残し闇に消えていく。

僕はワイトと距離を詰めた。

その先にいるワイトは、既に術式を完成させ表情の無い筈のソレは笑っていた。

氷霧が辺りを包み、盾の表面を凍り付かせる。

僕は勢いを止められ、間合いを詰めあぐねた。

ワイトの魔力上昇はまだ続く。

目の前で術式を完成させていく様は、自らの勝利を確信し増長しているかの様だ。

斬撃では相打ちになりかねない。

僕は、一気に距離を詰め、ワイトに直接触れた。そして魔力発散をおこなう。

ワイトは術式に必要な魔力を失い、その行動を無駄にする。

そして全ての魔力を失い、骨の山に姿を変えた。

辺りの魔力はまだ存在するが、かなり遠い。

僕は別動のラスティを呼ぶ。

すると、音もなく足元に毛玉が頭を擦り付ける。


「ルシア、屈んで」


彼女は、僕の膝、肩と器用に飛び上がり、定位置に入り込む。

若干重量を増した彼女は、背嚢をパンパンに膨れさせていた。

依頼はこれで完了になった。ココからが本番だ。

周りの魔力の位置と地図、そしてラスティの視界から安全なルートを考える。

僕は第四層を無視し、第五層を目指した。



何も見えない闇はまだ続く。

第5層の壁面は、ゴツゴツとした岩壁に変わった。

遠くからは気持ちの悪い反響音がする。

魔力は冒険者モノとそうでないモノ合わせて20。

そのうちの11は魔物だ。

歩きにくい岩窟を、足場を確認しながら進む。

時折、岩壁を金属で打つ付けるような音、魔法詠唱の声が聞こえる。

僕たちは、その音が集まる場所を避け、第六層を目指す。

正面には4つの魔力があるが、一本道で避けては通れない。

魔力から擦るにワイトに思えた。しかし違和感を感じる。

ラスティを背嚢に移動させ、魔力との距離を詰めた。

2体のワイトをなぎ倒し、進んだ空間は大きく広がる。

ラスティは、背嚢からモゾモゾと飛び降り、魔結晶の回収へ向かう。

僕は、残りの2体の魔力を捉える。

2体を大きな点と捉えて、反時計回りに間合いを詰めた。

ワイト達は、虚無の空間へ氷刃を放ち岩壁を凍らせる。

僕は、1体のワイトの隙をつき、鋼の刃が髑髏を切り裂く。

すると違和感が顔を出す。

朽ちたはずのワイトの魔力は膨れあがり、その場に深い影を形作る。

レイスだ。書物では知っていたが初めて見る魔物。

眼前を大鎌が掠め、突風がそれを追う。

僕は、その急襲を刹那でよけ、急いで間合いを取る。

レイスは、その髑髏の窪みや口から静かな光を漏らし、こちらを蔑む様に視線を向けた。

状況は一転し、魔物たちが優勢に転じたのだ。

魔力は依然2つ。そしてレイスの後方からは氷の刃がこちらを襲う。

闇の中から急に現れる刃は恐怖でしかなかった。

僕は、ラスティを呼びフードへ回収する。

彼女は、その顔の半分を占める程の瞳で闇の世界を伝える。

彼女の指示は的確だった。

それはまるで、少し先の出来事が見える様だ。

僕たちは、レイスとの間合いを一気に詰める。

待ち構えたかの様に大鎌は僕の首を狙う。

しかし、もうそこには首はない。

僕は、ラスティの声に合わせ、レイスの懐に。

そして、レイスの懐からワイトに目標を変えその距離を詰める。

ワイトは魔力を集中するが、術式を完成させる前に骨の山と化す。

僕はレイスに向き返り、盾を構え態勢を整える。

レイスは、音も無くユラユラと間合いを詰めながら、その姿を闇に溶け込ませていく。

視界から消え、空間をレイスの魔力が包む。

僕の力ではレイスの位置を掴むことができない。

僕は、神経を張り巡らせ、衝撃に備えた。


「右だよ!」


ラスティの声が岩窟に響き渡る。

虚を突いたのだろうが、仲間が声でソレを阻止。

僕は迫りくる大鎌に盾を合わせ、ソレを天井にそらせる。

そして、がら空きになった胸部へ横薙ぎを見舞う。

絶望を表現した朽ちたローブは、その丈を半ば失いレイスの表皮を見せる。

左へ払い抜いたバスタードソードを両手に持ち替え、脇から髑髏に向けて全力の一撃を放つ。

レイス本体から離れた大鎌は消え失せ、地面には腕と脊椎の一部、そして半分の髑髏が転がった。

レイスの瞳に宿る光は、その魔力と共に消えてく。

僕たちは、5階層を後にした。


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