27(54).王都の祝賀祭とMIA
僕たちは無事に王都に戻ることができた。
王都は、英雄たちの凱旋から10日経つが未だにお祭り状態だ。
僕は、こちらを振り返り手を引っ張るミーシャの笑顔に、無事に戻れた事を実感しにホッとした。
「はー、ようやく戻ったねルシア。お祭りだよ。」
「きっと、王国軍が勝利したんだね。とりあえず、軍部に行って生存連絡しないと。」
ミーシャは、以外にも祭りに浮かれてはいなかった。
まずは、状況報告をし安否を伝えることが必要だという。
僕たちは王都の石畳を軍部へ向けて歩いていく。
とはいえ、彼女は屋台で鳥串を4本買い2本僕に手渡す。
「フフーン♪ おいしいねぇルシア。」
彼女の気遣いは、いつも僕の心を優しく包む。
僕は、ミーシャに待ち合わせ場所を告げて別れる。
「僕は、傭兵だから宿舎に行くよ。一旦お別れだね。」
「いろいろ片付いたら、商店街の"ピンクの一角獣"って酒場にいると思うよ。」
彼女は串を頰張りながら手を振り、軍部の方へ去っていく。
僕は、その後ろ姿が見えなくなるまで見送り宿舎へ急いだ。
過ぎ去っていく景色は軍の施設ですら、街と空気は変わらない。
僕は、傭兵用の宿舎の受付に向かい、書類整理をしている女性に確認を取る。
彼女は淡々の会話を進め業務を遂行していった。
「すいません。生存確認ってここでできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。どなたをお探しですか?」
女性は、以前に行ったテストの受付に比べしっかりと対応してくれている。
それでも、こちらの顔は見ず、大量の書類からリストの様な物を取り出す。
僕は、彼女の指示に従い部隊名と名前を告げた。
「第二部隊のルシアです。」
「はい、彼女は20日ほど前にザルツガルド渓谷で消息不明になっています。」
「この度はご愁傷様です。故人のご冥福をお祈りいたします。」
女性の確認に違和感を感じたが大切なのはそこでは無い。
彼女の説明は大体あっているが、僕は生きている。
僕は受付嬢に状況を掻い摘んで説明した。
すると、彼女は一瞬考えてから、淡々と業務をこなす。
その手際は初めて対応するものではなかった。
「はい?、、、あっ、ご帰還されたっということですか?」
「では、ファラルド様が戻りましたら確認が取れますので、それまで隣の部屋で待機してください。」
半時ほど静かな時間が過ぎ、外が騒がしくなった。
部屋の外からは、先ほどの女性と聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「ファラルド様、第二部隊のルシアという女性が帰還したと本人から申告がありました。」
「隣で待たせていますので確認をお願いします。」
「おぉ、まじか~!それは良かった!」
「報告ありがと。 君そろそろ交代の時間だろ、交代回すからそれまで待っててね。」
部屋の扉が大きく開き、見覚えのある笑顔がこちらに向けられた。
僕は、椅子から立ち彼の元へ駆け寄る。
たかが傭兵に対しここまで心配してくれる事が嬉しかったからだ。
「ルシア、よく戻ったね。体大丈夫か、腹減ってないか?」
「てか、いつから女になったんだよお前。 ハハハハハッ!」
ファラルドは、僕の肩を軽くたたき観察しする。
僕に重大な怪我や四肢の欠損がないことを確認し、彼は安堵の表情を浮かべた。
そして、傭兵の今後の事を話した。
「そうかそうか、うんうん、本当によかったよ。」
「そしたら、明日、褒賞あるから、またここ来てね。ホントに腹減ってないか?」
ファラルドは業務的な話を軽く流した後、少しに苦い表情で話を続けた。
僕はその表情の変化に、背筋を整え耳を傾ける。
「とりあえず、ルーファスに顔みせてやれ。アイツにはエライ言われたよ。」
「そういや他の隊長も殴って荒れてたな。 おまえらはアイツにとって大事な家族だな。」
「この時間なら、医局棟にいると思うから行って来い。」
僕はファラルドに深く頭を下げ、笑顔で手を振る彼を後にした。




