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26(53).凱旋する英雄達

僕たちが王国領内に入る頃、王都では凱旋パレードがおこなわれていた。

ようやく戦争が終わったのだ。

今までは闇の中を歩いていたかの様な国民達も闇が払われ、そこには笑顔があった。

そして、闇を払った英雄達には様々な声援が向けられる。


「「「きゃーー、ファラルド様!」」」

「「ゴリアスの兄貴ぃ------!キレてるぜーーー!」」

「「「ファラルド様こっち向いてーーーー!」」」

「兄貴ぃー!ナイスバルク!!」

「「「せぇの、アレキサンドラお姉さまーーーーーーーー!」」」

「「「ルーファス様ーーーー!」」」

「「りーふぁおねーちゃーーーん!おかえりーーーーー!」」

「ギリアム様ーーーすてきーーー♂」

「「ラングルス様、無理なさらないでーーーー!」」

「「「王国ばんざーい!」」」


街の目抜き通りには花吹雪が舞い、通りの両端を人々が埋め尽くす。

隊長たちにかけられる声は、彼らにとって褒賞にも等しいのだ。

しかし、声援を受ける一人の男は、心から笑うことができない。

バレードは王城まで続き、団長たちは王城の大広間に招かれた。

王城には貴族たちが集まり、楽団が優雅な音楽を奏でる。

大広間に部隊長が入ると、上品に場内が沸き上がった。

貴族たちは勝利の立役者たちを讃え称賛する。

そして、ある淑女たちは団長たちをダンスに誘い、またある淑女たちは戦争譚をせがむ。

王都で過ごす彼女たちには、それは刺激的でいて、自身の行末を左右するかも入れない場である。

強い誘いに気を良くする者もいれば、その声の波に潜む睨みに怯える者もいる。

傍らには豪華な食事が並び、側使えや侍女たちは酒を振る舞う。

そんな華やかな場から1人離れる男がいた。

ルーファスはその場を離れバルコニーに出る。

悲しみ悩んでいる表情など、場の空気を下げるだけだと感じたからだ。

彼は月を見つめ、一人の女性の回復を願うだけだった。

開場には戦争に参加した全ての団長が集まり、王より祝辞が述べられる。

この日王都は、不夜城の様に街でも祭りがおこなわれていた。



凱旋から一夜明けたが、王都ではまだ祭は始まったばかりだ。

一方、王宮大聖堂では叙任式が執り行われた。

内陣には王を中心に王族が左右に並ぶ。

身廊には王と向き合うように各部署の長が並んだ。

静粛な場だが、話をしたい者は必ずいる。

小さな声は王の宣誓に隠れ、人知れず行われた。


「流石、ルーファス殿だが、いくら亡国の元騎士とはいえ、奴隷上がりを騎士貴族とは・・・」


彼らは、ルーファスの様に純粋な王国貴族以外は良しとしない。

その為、ルーファスの昇進に納得がいかないのだ。

しかし功績がある以上、それは否定もできないのが現状。

中には、彼を否定するのではなく、自分たちの地位を心配する者のいた。

派閥とはそんなものなのだろう。

自分たちと違う者を忌み嫌い。同族であれば面倒を見る。

傷のなめ合いにも似た先の無い世界だ。

それはルーファス達が嫌う世界である。

壇上では王が神へ宣誓をおこなっていた。

王の前には片膝をつき頭を垂れるルーファスがいる。


「主神ヴェスティアの御名において、我、汝に騎士の称号を与える。」

「勇ましく、道徳深く、民の為に忠実であれ。」


王より差し出された剣先に、ルーファスは口づけし宣誓をおえた。

周りから祝福の拍手がおこる。

その場にいた者は、天窓より指す光が神から祝福にも思えたという。


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