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4.男の娘と初ダンジョン

ルーファスたちの顔は引き締まり、2人の戦士を先頭に僕、最後に魔術師が続く。

初めてのダンジョンだ。しかし、そこは普通の洞窟だった。

目の前は薄暗く遠くまでは見えない。入り口に向かって風が吹き抜ける。

ルーファスから指示が飛ぶ。そこには以前の柔らかい口調ではない。


「ルシア、ここからだ、探知を頼む。感じる範囲はどの程度だ?」


「あの曲がり角までは大丈夫、、僕たち4人以外は何も感じない。」


「よし、上出来だ。感じたら言えよ。俺の指示があるまでは、俺の後ろにいろ。」


僕は返事をし、ルーファスたちに続く。角を曲がり、さらに奥へ。

僕は、遠くに幾つかの魔力を感知した。

それをルーファスに伝えると、後ろからライザの補足が飛ぶ。


「ルーファス、あれは同業の奴隷よ。ルシアくん、よくできたね、その調子で行こ。」


後ろを振り返ると、ライザの笑顔が返ってくる。

いつぶりだろうか、他人から向けられる笑顔に戸惑った。

4人はダンジョンの奥を目指す。6つの魔力を感じた。先ほどの魔力と感じが少し違う。

ルーファスに伝え、ライザの方を振り返ると、頷きが返ってくる。

6つ魔力は次第にその姿を現す。それは、6匹のスライムだ。

パーティーの陣形は前後に伸び、ルーファスの指示が飛ぶ。

5匹のスライムはルーファスとミランダに圧倒され次々と狩られていく。

圧倒的に力量さがある状態でルーファスは1匹だけ前衛を抜けさせる。


「ルシア、1匹抜けた。頼む」


僕は、足が震え、喉が渇く。初めて見る魔物、山で見た獣とは視線が違がった。

もちろん人間の比ではない。

全く逃げるそぶりがなく、僕たちをエサとして認識しているのだろう。

スライムは、水滴のように流線形になり、天井から勢いよく飛びかかってくる。

僕は両手で盾を持ち、それをスライムに向け衝撃に備える。

次の瞬間、スライムの重さと勢いで、仰向けに押し倒された。

スライムは、僕に馬乗り状態で、盾を溶かす。しかし、一拍おいて、スライムは急激にはじけ飛ぶ。

それはライザが、魔法の炎でスライムを焼き払ったのだ。

その間に、ルーファスたちも残りのスライムを片付けていた。

初めての戦闘は散々な物だった。たまたま、突き出した盾に、スライムが攻撃した。

その結果、ライザの壁にはなれた。ただそれだけだった。

ただそれだけだったのに恐怖を感じた。

しかし、ここでは死ねないという気持ちが、逃げ出すことを許さなかった。

ルーファスは、状況を確認し、表情をゆるめ、笑みを浮かべる。


「よし、依頼は完了だ。帰りは、魔鉱石を探して帰るぞ」


「魔鉱石?」


僕の疑問にライザの声を遮って、ミランダが答えた。

その表情は、柔らかく、口本に締りがない。


「ルシアくん、魔鉱石っていうのはね ーーー 」


入り口に戻りながら、ミランダに魔鉱石とダンジョンについて説明を受けた。


魔鉱石は、魔力によって鉱物や宝石が変質した物だ。

これは魔力を溜める性質などがある為、魔導具の素材として重宝される。

宝石としても価値が高く高価値で取引されている。


ダンジョンとは、魔鉱石が発掘でき、魔物が発生する場所の総称である。

自然洞窟が元となる場所を魔生洞窟といい、廃墟が元になった場合は、魔生遺跡といわれた。


魔鉱石が発生する環境は、魔力だまりがある場所に限られる。

この魔力だまりに長期間あてられると、生物は魔物化する。また、高濃度の魔力だまりからは、魔物が生み出されるという。


このダンジョン内の魔力だまりは、完全に消滅することはない。

魔力だまりは、付近の鉱物を魔鉱石に変化させたり、魔物を生み出し続ける。

そのため魔物を放置すると、全体的な魔力が強くなり、より強い魔物が発生する。

階層が魔物で飽和すると、上層を目指し始める。階層を奪われた魔物は上層へ。

この繰り返しにより、最悪の場合はダンジョンの外に溢れ出すことがある。これを魔窟暴走という。


これだけ聞くと、問題しかないダンジョンだが、産出されるモノの多くが高額で取引される。

ダンジョンを有する領主は、魔鉱石や魔物素材を得る代わりに、ダンジョンの生態系を調整する必要がある。

ここ500年において、国を治める者や領主達はこの状況を産業に繋げ街を大きく発展させているそうだ。

しかし、この調整が難しい。

魔物や魔鉱石を全部とってしまっては、次の発生まで時間がかかり、利益はなくなってしまう。

そこでほとんどの領主は、費用を払い、法王庁が仕切る冒険者ギルドと契約する。

これを行わず、領主自ら管理を行う場合もある。ここの領主は後者だ。管理ができれば後者でも良い。


ミランダの説明が終わるころには、奴隷用の宿舎に着いていた。

4人は、月明かりの下でお互いを労う。


「おし、みんな、お疲れさん。ルシアも、初めてにしては良かったぞ。」


「「おつかれ~」」


3人は僕の面倒を見てくれている。ダンジョンからの帰りもそうだ。

それは、ダンジョンでは命のやり取りがあるから、少しでも戦力を強化する為かもしれない。

それでも優しくされることが嬉しかった。だからだろうか、彼らとの会話は心地よかった。


「ルシアくん、わからないことがあったら、お姉さんが教えてあげるわね。」


「ミランダさん。ありがとう。みんな、おつかれさまでした。」


ルーファスは、僕にここで待つよう言い渡し、領主に報告する為この場を離れた。

解散し、夜も更けているのに、二人はルーファスが戻るまで一緒に待っていた。

彼女たちがぼくに向ける視線は優しいものだが、どこか不安そな表情でもある。

他愛もない会話をしているとルーファスが戻った。


「お前ら、まだいたのか、、、ルシア行くぞ。じゃあ、また明日な。」


「「じゃ~ね、おやすみ」」


「おやすみなさい。ライザさん。ミランダさん。」


二人は女性たちと別れ男性宿舎に向かう中、僕は、彼らの過去を知った。

彼らは、5年前の戦争で領地を失い奴隷になった。

ライザは元宮廷魔術師、ミランダはルーファスの部下だったらしい。

ライザは、よく世話を焼いてくれる。姉がいればこんな感じなのだろうか。

ミランダは男性のような外見だが、ライザと同じような口調だ。

ルーファスが言うには、ミランダの体は男性とも女性とも言えないそうだ。

その為、昔は虐めにあっていたという。

今は折り合いをつけながら他の女性奴隷とも打ち解け生活できている。

村にはミランダの様な人は居なかったので不思議だった。

でも、ミランダは物知りで優しくて、温かい人だ。

僕は、なぜだかこの温かさに胸が苦しくなった。

それは母と幼馴染以外に、優しい声をかけられた事がなかったためだろうか。

それとも、その温かさを失うことが怖かったからだろうか。

男性宿舎は大部屋が何個かあり、その1つに10人程度に分けられ生活していた。

ここでは、衛生の為、ダンジョンから戻ったら敷地内になる小川で水浴びが義務づけられている。

少しだが、奴隷商にいた時より生活環境が向上したことが嬉しかったが、嫌な視線も感じた。


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