3.ドナドナからの新しい仲間
僕らは王都に到着した。ここで今後の進退がきまる。
誤報の修正はされ、女性11人はそれぞれの能力にあった職場があてがわれ奉公をするそうだ。
僕は、男として、能力を見定められ、ダンジョンを保有する領主の下へ奉公先が決まった。
何件か選択肢はあったが、ダンジョン奴隷としての奉公は、特殊技能を必要としない職の中では一番効率がいい。
僕は、仲良くなったアリシアに別れを告げた。
アリシアは午前中のダメな方のアリシアだった。
それでも彼女は、いたずらな笑顔で見送ってくれた。
「もう、いいのか?私はあっちの方が可愛いと思うぞ。」
彼女はいつも子供を見る目で接してきていた。
それは嫌な感じはしなかったが、男児を見る目ではない。
彼女と別れ、王都から馬車で新たな主人の下へドナドナされていく。
兵士のおじさんはよく自分の娘の話をした。
「これ食べるかい。家にも君くらいの娘がいるんだよ。」
どう対応していいかわからないが、視線は明らかに娘を重ねていた。
きっと王都で支給された服が悪いのだ、ズボンとはいえ明らかに村で見た女児向けの形状だった。
王都ではこういうのが流行っているのだろうと、無理に諦め、兵士のおじさんには愛想笑いを送った。
目的の街につく。街の奥にはダンジョンがあり町を覆うように山々が連なる。
姿を現した領主はかなり若かった。第一印象は優男だった。
「ようこそ、我が領地へ、まて、男のはずだろ、すまない手違いがあったようだ。」
「あってるよ、領主さま。手違いはありません。」
領主の混乱しているようだが、隣の執事は優秀だった。
執事は、フリーズした主人を気にすることなく作業を進める。
魔力を持つ者は合流する前に2つの技術を仕込まれた。
1つは魔力探知、もう1つは魔力譲渡。
魔力探知は、微量の魔力を使い、相手と自分の相対的な位置を把握する技術だ。
魔力を操れる者なら、練習次第で誰でも使える基本技術である。
魔力譲渡は、魔法を使うために必要な基本技術で、対象に魔力を渡す、流すといった技術だ。
これさえできれば、条件の無い魔導具や、スクロールを使用することができる。
しかし、魔導具は高価なものが多く、スクロールは費用対効果が悪い場合が多い為、使用者は限られた。
1日もあれば簡単に習得できたが、練度によって索敵範囲は広くなる。
必要な技術を習得した僕は、参加するパーティに合流する為に教えられた場所へ向かった。
そこにはガタイのいい、背の高い隻眼の青年がいた。
彼の声は耳触りが良く、通る声だが圧力も相応にあった。
「よう少年?、俺はルーファスだ、一緒に働くパーティーのリーダーをしている。お互い奴隷だが、気楽にいこう。」
「僕は、ルシア。よろしくお願いします。」
頭を下げると、背嚢ふたが頭を叩く。緊張の糸は笑いによって簡単に解けた。
そこには上背からくる圧迫感は消え、僕も赤面しつつも笑顔になった。
「ハハハハッ、緊張しすぎだな。大事な時に体が動かなくなるから。それと確認だが男だよな?」
「うん男だよ、がんばります。」
ルーファスは一瞬混乱したが、気にせず、自己紹介をし、同僚の待つ場所へ足を進めた。
彼は、奴隷になって1年になるそうだ。
以前は元騎士で隊長もやっていたそうだが、話をする表情はどこか悔さを漂わせていた。
僕達が、目的地のダンジョン前に到着すると、そこには、若い女性と、同じように若い中世的な青年が待っていた。
ルーファスは2人に声をかけ自己紹介を促した。
若い女性はライザといい、魔法使いで火と土の使い手だ。
中世的な男性はミランダといい、戦士だという。
僕ら奴隷は使い捨てだから、この先どうなるかなんてわからない。
二人は、僕の不安定な表情に戸惑っていたが、優しく迎えた。
会話は進み、ルーファスは今日の目的を伝えた。
「それじゃあ、仕事に移るか。今回は、ルシアの慣らしが目的だから第1層の小物を狙う。」
「ライザとミランダは、いつも通りでいい。ルシアは、ライザの壁だ、抜けてきたらソイツを止めろ。」
「「りょーかい!」」
「うん、わかった。ライザさん、よろしくおねがいします。」
僕はライザに頭を下げると彼女は優しい笑顔を返してくれた。
その横から小動物を見るような視線がきつい。
「うんうん、礼儀がいいね。よろしく。」
「探知もお願いしちゃっていいんだよね。初めのうちは、私もやってくから気楽に行こ。」
「ライザー、あたしにもルシアくんちょうだ~い。」
「だめよ。魔法使いは魔法使いが教えるの。」
ルーファスは、にが笑いを浮かべ、パーティに移動先を示した。
彼があっさり僕の性別を受け入れた理由がどことなる理解できた。
僕は支給された、大きな背嚢から革の盾と鎧、ショートソードを装備し三人の後に続いく。