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至らせ剣士は魔法使いの男の娘 -酔いどれエルフの謡う詩-  作者: 齋藤ミコト
最終詩節 ~ 悠久の愛詩 ~ 
317/325

29(317).一度生を享け、滅せぬもののあるべきか

二つの巨盾に防がれる魔爪。

隙を生むために動く二つの巨盾は、打撃武器へと変化する。

何度となく叩きぶつけられた魔人の体は、その体色に青みを増やす。

しかし、見た目程にダメージは無いが、魔人をイラつかせた。

その苛立ちは動きを雑にさせ、つけ入る隙を増やす。

二つの斬撃は、行動を制限させ、時に瞼を襲うのみ。

魔人の視界は、何時からか青みがかり、世界の半分は黒く染まっていた。

その上、いつからか矢じりが肌を刺す様になっている。

魔人は、行動を制限され思う様に動けない。

しかし、ここで力を使っては、奥に控える鬼の斬撃など防ぎ様がなかった。

魔人は最小の動きで煩わしい攻撃を払う。

後方の魔力は少しずつ高まっている。

その魔力は、一瞬だが魔人を越えた。

魔人の想いは口から無意識に漏れる。


「なんと美しい・・・」


高揚した魔人の表情に、レドラムは眉を顰める。

それは、ファルネーゼも同様だが、思う気持ちは全く違う。

レドラムは棒立ちになった兄に向け叫ぶ。


「戻った所で、過去は変えられない・・・」

「昔のアンタに戻っても、アンタはここで罪を償え!!」


「レドラム、ダメ!」


正中線目掛け襲い掛かるハルバード。

それは、ファルネーゼの叫びを、あざ笑うかのように起こった。

容易く掴まれたハルバードは、レドラムごと振り回される。

それは、攻防一体ともいえた。

ファルネーゼ達は手が出せない。

同じように下がるしかない巨盾の二人。

魔人は笑う。


「お前は、弱いなレドラム。」

「昔のお前と何一つ変わらない。」


「レドラム、手を放しなさい!」


ファルネーゼの叫び声が、洞窟内に響き渡る。

しかし、それを受け入れないレドラムは悔む。


「俺のミスで武器まで渡しては・・・」

「ファルネーゼ様! 俺ごと兄を・・この魔人を切ってくれ!」


ファルネーゼは眉を顰め唇を噛む。

彼女の声は、呟くように小さい。


「そんなこと・・できるわけないじゃない・・」


しかし、後方からは殺意しかない叫び声。

魔力が高まる鬼は覇気を放ち走り出す。


「良う()うた、おいがそん願い叶えてやっ!!」


「止めて!!」


ファルネーゼの叫びを置き去りに、彼女達の間を暴風が過ぎ去る。

そして、ぶつかり合う斬撃。

鬼は口元を歪ませる。

対する魔人は、剣閃を残る腕で受け止めた。

一方で、鬼は空いた腕でレドラムを鷲掴みにもぎ取る。


「何じゃ・・・まだ人ん心はあたんじゃな。」


「反射だ・・・俺に人の心など不要。」


驍宗は、レドラムを放り、巨盾の一方に声を掛ける。


ケツ(そいつ)を頼んぞ、大剣ん男!」


声だけ残し、消える二人。

次の瞬間、距離を置き、間合いを取る鬼と魔人が現れる。

一方は、大太刀を鞘へ戻し、仰々しい動作。

また、一方の魔人は呪文を唱え、虚空から巨大な大剣を取り出した。

鬼の口元は一瞬緩み、そして引き締まる。

半身になり利き腕を突き出す驍宗。

体勢を沈めさらに魔力を高める。

そして、爆音と共に声を残す。


「押して参っ!」


辺りには、金属の溶けた様な臭いが立ち込める。

それは、カイナラーヤの声と共に現れた。


「この程度・・・もっと俺を楽しませろ!!」


そこには、ラトゥール王国最大戦力と謳われた男の姿があった。

二人はぶつかり合い、互いに限界を超えた姿を見せる。

そこには、過去を謡う詩の一節を彷彿とさせる光景があった。

魔人()の斬撃は、鬼の頬を掠める。

鬼は引くことなく、更に間合いを詰めた。

戦士達の目の前にはm一人とてヒューマンなどいない。

しかし、レドラム達には同じヒューマンに映った。

二つの樋鳴りは取り残され、衝撃波だけがその存在を示す。

結び合う一瞬に、二人の表情が窺えた。

鬼は言う。


「英雄ん血が泣いちょっぞ!」


「フン、愛を受けず育った子には、英雄など邪魔なだけだ。」

「欲しかったのは・・・称賛ではない!!」


後方へ距離を置く鬼を、遠心力を乗せた魔人の斬撃は襲う。

しかし、互いに言い合わせたかのように、紙一重でかわす。

鬼は想う、そして言葉は声となる。


「同じか・・・次は違うた形で会おごたっもんじゃ・・」

「安らかに眠れ、西の ─── 」


二人の姿が現れ、舞い上がった砂煙は、衝撃波で散らされる。

一方は鞘に大太刀を収め、もう一方はその場に立ち尽くす。

驍宗は、鞘に大太刀を納めた鞘の腰紐を結ぶ。

後方で、うつ伏せに倒れ込む魔人からは薄紫色の煙が立ち上っていた。

鬼は目を瞑り背中で礼を尽くす。

魔人の元へ駆け寄るレドラムは、砂になりつつある男の手を握る。


「アンタは、馬鹿だよ・・・」


「なぜ泣く・・・」

「・・・」

「フッ、だからダメだと言っている。」

「・・・何時までも優しくあれよ・・・我が弟レドラム。」

「・・・お前が・・・俺の弟で良か・・・・」


「クソ・・・馬鹿野郎が・・・」


レドラムの握る手は、魔力を帯びた砂にへと変わる。

それを洞窟内を流れる風は、無情にも攫って行く。

感傷に打ちひしがれる男の肩に手を置く一人の女性。

ファルネーゼは静かに声を掛ける。


「歪んだ世界が悪いのよ・・・・行くよレドラム。」


「はい・・・ファルネーゼ様。」


戦士達は、女神に抗う術者たちへと合流する。

しかし、好転する事の無い状況は、兵士達をさらに疲弊させるだけだった。


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