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27(315).幽界の扉

魔人の腕が宙に舞う。

二人の戦士は魔人を越え術士へと向かう。

そして、巨漢の鬼は大上段に構え飛び込む。


「チェストォォォ!」


斬撃は、空中の何かに弾かれ、衝撃波だけが広がった。

反動で弾き飛ばされた驍宗に駆け寄る芭紫。


「驍宗、大丈夫ですか?」


「なんじゃぁあ・・まだ、手が痺れちょい・・」


眉を顰め唇をかみしめる驍宗。

その視線は、手の届きそうな距離にいる術士の背中へ。

驍宗は改めて構え、そして抜刀。

しかし、結果は同じ。

その姿を見せつけられた一行には、絶望しか感じられなかった。

芭紫は、驍宗の腕を掴み後方へと跳ぶ。

そこには、先ほど宙を舞った筈の腕がぶつかる。


「フン、逃れたか・・・」


魔人は驍宗たちから視線を外し、美斉達を見据えた。

無表情の魔人は、腕があった傷口に魔力を込める。

それは、体液と共に新しい腕を発生させた。

生えた腕は、地面に転がる己の腕を持ち上げる。

無表情で数回素振りをした魔人は、眉を顰め空間を薙ぎ払う。


「調子に乗るな猿どもが!!」


「美斉!剛蓬!」


玄褘の叫びは衝撃波と共に後方へ。

吹き飛ばされた二人は岩壁へとぶつかり地面へ転がる。

魔人は、ソラスに視線を向け始めて笑みを浮かべた。


「あぁ、なんと濃い魔力の力場よ・・・」

「素晴らしい、我が君は素晴らしいぞ!」

「今一度、神の世界を私めにお見せください・・・」


ソラスは、その声に反応することなく呪文を唱える。

その正面で、両手を広げ拘束される聖母マリアルイゼの表情には生気などない。

驍宗たちと合流した呀慶は、眉を顰め牙を剥く。


「クソ・・・ここまでなのか・・」


その言葉を包む様にリーファの声がには希望があった。


「東にばかり頼っていられないわ!」

「ギリアム、リーファ、サラマさんお願い!!」


ギリアムが術式を整え、サラマがその構築を安定させる。

そして残る術士たちが魔力を送った。

最後に集団術式を発動させるのはリーファだ。


「行ーくーわーよー!」


それは、周囲の元素を集め特殊な元素へと変える。

変化した元素は、ぶつかり反応し合い、熱量を増し解放の時を待つ。

幾重にも張り巡らされた術式は、先の戦争のソレを軽く凌駕程の力があった。

リーファは、片目を瞑り狙いをつける。

それは、魔人越しに術士を狙った。


「行っけぇーーー!」


リーファたちの視界は真っ白に。

幾つかの術式は、稲妻の様な光を発生させ、音を立て崩れ落ち消える。

残った術式からは、尚も一筋の光が放たれる。

それは、魔人を貫きその先へ。

しかし、そこには歪んだ空間だけがあった。

その先の術士は、首だけ向け口元を歪める。


「古い技術だが、悪くはない・・・」

「フフッ、しかし相手が悪いな。」

「その技術、術式は、私が考案したものだからな。」

「・・・魔核融合という。」

「カイナラーヤ、後は任せた・・・」


唇をかみしめる一行を、あざ笑うかの様に姿を消すソラス。

その姿を、跪き仰々しく見送る魔人は何処か誇らし気だ。

だが、そんなことがどうでも良く思えた。

ソラスの消えた女神像の下で、残された聖母の目と口は光りを放つ。

その姿に視線を送る魔人の笑顔は終わらない。


「ついに降臨なさる。」


聖母は、天井を向き光を吐き出す。

それは、洞窟の天井を抜け天高く光の柱を築き上げる。

一方で、大地は揺れ所々に亀裂つが走る。

兵士達は、腰を落としバランをを取る者、恐怖の余り泣き叫ぶ者様々だ。

それは、呀慶達も同じこと。

彼は、眉を顰め地面に拳を立てた。


「クソ・・・私の力では、阻止する事も出来ないのか・・・」

「玉藻様、申し訳ありません・・・」


血が滴る地面を涙がにじませる。

しかし、一人だけ諦めない男がいた。

芭紫は驍宗を制止する。


「驍宗、おやめなさい・・・手が血だらけです・・・」


「芭紫姉、止めじくれ!!」

「こん腕が無うなってんやらんなならん事なんじゃ!!」


金属の打撃音だけが地響きの中で主張する。

繰り返される斬撃は魔力を増し、赤から紫へ。

そして、黒へと変わっていく。

どす黒い魔力を纏う驍宗の肌は、その反動でボロボロだ。

斬撃は、繰り返され練度を増し、斬撃は閃光へと変わる。


「ぶち破れ!!!」


爆発音を残し閃光となった斬撃は、空間にヒビを生んだ。


「終いじゃぁ!!!」


そして、間髪入れる事の無い流れるような次撃は、そのヒビを巨大な亀裂へと変える。

硝子の様な音を立て砕け落ちる空間。

しかし、事は既に成っていた。

笑みを湛える聖母の表情は、既にマリアルイゼではない。

女は目を細め嘲笑う。


『"何をしているのかと思えば、この程度・・・"』

『"あの方の人形も質が落ちたよのぉ・・・"』

『"してオーガの小僧、ソラスは何処じゃ。"』


そこには、妖艶な表情を浮かべるヴァンパイアの様な女性の姿。

先ほどまでは、驍宗の視線は斜め下を向いていた。

しかし、今は見上げている。

先程まで、あった筈の女神像は無い。

今、そこに在るモノは絶望だけだった。


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