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2.男の娘と、うつろなエルフ

僕は、見えそうで見えない服を着ている。不本意だ。

これは、奴隷商の仕業だった。

売り飛ばす際に女装を強いられ、買い手には神の軌跡だと説明されていた。その結果がこれだ。

眉を顰め、項垂れて不満をつぶやきながら店主の部屋へ向かう。

僕は部屋の前で長身の女性にぶつかった。

彼女はやけに酒臭い。瞳には生気も悲壮感も無く、恥じらいもせずあくびをする。

それは彼女の評価を下げるのには十分すぎた。

僕と同じ日に買われた奴隷だった為か一緒に呼び出された。

二人で部屋に入ると、店主は下種な表情で、舐めまわすよな視線を向けてくる。

そして、部屋の番号を伝えられた。


部屋には街の領主がソファーに座りくつろいでいた。

僕と長身の女性は、領主の左右に座り酒を注ぐ。

領主はロリコンでは無いようだった。酒が回るにつれ領主の行動は大胆になる。

彼女はうまいことあしらい、領主の顔を両手で包む。

なぜか領主は興奮し、恍惚な表情をみせる。

その瞬間、領主は力なくソファーに倒れ込んだ。しかし、彼女の表情は変わらない。

僕は領主を確認するが、ただ泥酔しているだけにしか見えなかった。

彼女は何事も無かったかのように酒を飲んでいる。

その表情は、とても恍惚で妖艶な表情をしていた。

視線に気づいたのか、彼女は何をしたのか雑に説明をした。


「これは、魔力の過剰摂取さ。魔力で至ったんだよ。」


2時間もすると、廊下に足音が響いた。

彼女は領主を背もたれにもたれさせ、何事もなかったかのように領主を起こす。

彼は満足そうに店主と共に退出していった。

僕は彼女の顔を窺うと、朝方のそれではなくなっていた。

彼女の表情は幻想的で美しく、しっかりとしたものに変わった。

扉が閉まることを確認すると、彼女は机に残る料理をつまみ、僕に視線を向けた。


「面白い趣味をした奴だな。それにしても変わった質の魔力だ。」


僕は前者の意味は分かったが、後者の意味が分からなかった。前者を否定し、後者について質問した。

彼女は、僕に属性がないことを言い当て、魔力に興味があるなら少し指導しようと提案する。

僕の表情は明るかっただろう。二つ返事でお願いし、自己紹介した。彼女はアリシアといった。

部屋の扉が開き、嫌な笑みを浮かべた店主が、ソファーに座り僕達に命令する。

明日からは、二人でこの部屋を使い、客を接待しろということだった。これはありがたい。


半月もすると僕は、客を至らせることができた。これにはアリシアも嬉しそうだった。

客を至らせるには、魔力を大量に流し込むことでできる。

しかし限度を超えると、痙攣し、泡を吹き始め、最悪殺すことになる。

これをオーバードーズというらしい。

魔力操作技術の一つで、魔力譲渡の延長線上の技術だ。僕達の客は全てカモになった。


そんなある日、大広間で宴会をする為すべての奴隷が呼び出された。

それには他の奴隷たちも眉を顰め店主を睨む。

しかし、たかが奴隷だ。拒否する権利は認められない。

店主は、碌でもないことを考えていたようだ。

それは、妓楼としてのサービスではなく娼館としてのサービスの強要だった。

来店した客たちもオーナーと同じだ。そこには村の領主もいた。

飲み始めた頃は、酒を飲みながら、金貸しの話をしていた。

内容は利子についてだ。話されている内容は知識が無くても法外だと分る。

酔いが回り始めると、奴隷をベタベタと体を触り、思いの道理にならないと暴行を振るいはじめた。

僕の目には、父が母にしていた光景が浮かぶ。そして会話の理解には時間はかからなかった。

気が付くと、村の領主の顔を掴み魔力を流していた。

取り巻きは警戒し、出入り口をふさぎ逃げ場を潰す。

オーナーは見下すような嫌な笑顔で、奴隷の首に命令を飛ばす。

首輪は少しづつ絞まり、苦しむ奴隷が出始めた。

アリシアは付近の野郎を投げ飛ばし、他の女性を助けに走る。

僕は逃げようとするオーナーを捕まえ魔力を送った。


「ハハハッ・・・やめるなら、俺の女にしてやる。さっさと手をはなせ。小娘。」


「僕は男だ!」


未だに上から命令するオーナーは、一瞬恍惚な表情になる。

そして泡を吹き、痙攣を起こし、最後には動きを止めた。

首輪の機能は失われた。

アリシアが数人の野郎を店の外までぶっ飛ばした結果、店の外に人だかりができた。

そして兵士が状況の収拾に動き始める。

僕達は事情聴取を受けた。

奴隷たちは、オーナーたちに襲われた為の防衛だと主張したが、その必要は無かった。

店に集められていた領主たちは、王国への税収報告を偽造しており、王国からすでに手が回っていたのだ。

その上に奴隷への扱いが違法だったこともばれた。

彼らは、領主としての任を解かれ罪人へと落ちぶれた。

その結果、僕達の所有権は国に移った。

王国へ移送された奴隷は女性12人とされ、移送中は兵士がやけに優しくしてくれた。

僕は未婚だし、旦那はいない。いや、僕は男なんだが・・・


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