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至らせ剣士は魔法使いの男の娘 -酔いどれエルフの謡う詩-  作者: 齋藤ミコト
第二詩節 ~ 戦火の絆 ~ 
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1(27).帝国と王国

バルハンブルクの街は、王国に面した帝国領の貿易都市である。

この街は以前のような活気はなく、街の雰囲気は重苦しい。

僕は、少し大きな商家で情報を集めた。

すると、店主から得られた情報は良いものではない。

なんでも帝国と王国の間で戦争が始まったという。

事の発端は王国の跡継ぎ問題だった。

それは、国王が体調をくずし隠居したことで、2つの派閥が王位を主張した。

一方は王が継承を考えていた、第一王子を台頭する軍部及び国政官派閥。

もう一方は、王妃が継承を考える、第三王子を台頭する地方貴族派閥だ。

この問題は、両王子は異母兄弟であり、現王妃が帝国の姫であることだ。

現王妃は、前王妃が10年前に亡くなり、その翌年に帝国から15歳で嫁いできた方である。

そして5年前に彼女の長子となる第三王子を出産し、今に至る。

このことから帝国の傀儡目的だと噂されていた。

世間の評価では、第一王子を推すものがほとんどだ。

第一王子は統率能力に優れ、また高官からの信頼も厚く、剣術にも精通している。

そして、さわやかで華がある好青年だ。

昨年、貿易国家の第2王女と結婚もされている。

継承権を破棄している第二王子からの信頼も厚い。

対して、第三王子のの評価は芳しくない。

聞こえる評判は、かわいらしく賢そうな子供程度だ。

そして事は起こった。第三王子派閥が第一、第二王子殺害を企てた。

しかし失敗。主犯と思われた王妃は、第三王子と共に帝国へ逃亡。

この企てには帝国も共謀していた。

そもそもの王妃の婚姻自体が王国を掌握する為の手段だと噂される始末だ。

王国側は、王妃と第三王子の引き渡し及び賠償を求め抗議しているが、帝国はソレを拒否。

帝国は逆上し、王妃への不当な扱いがあったと抗議。

そして賠償として第三王子への王位継承を求め。

その為、話しは平行線をたどっているということだ。

そして2か月前、馬鹿な貴族が酔っ払った勢いで、書状を届けた王国騎士を帰り際に殺してしまった。

結果、王国との戦争が始まったそうだ。

店主はため息交じりに彼の考察を付け加える。

戦争は起こっているが、帝国貴族の暴挙から始まった部分はどうだろうと苦笑気味に話す。

これはいい情勢ではない。

王国へ入る方法を店主に相談すると以外に簡単な答えが返ってきた。

この街から直接行くことはできない。

しかし、安全性の保障はないが山岳部を迂回する昔の貿易ルートを教わった。

店主は親切に地図を取り出しルートを指でなぞった。

そこは少し森が深く見通しが悪い為、山賊が出ることがあるという。

そして店主は、表情を暗くし話を続けた。


「嬢ちゃんも大変そうだが、うちも商売あがったりでな・・・」


部屋の空気は先ほどよりも重くなった。

店主は机に数種類の革袋を置いていく。

その光景に僕は生唾を飲み込んだ。

店主は、東方より伝わったという計算機を指ではじく。


「この地図もつけるから、買っていってくれよ。」


僕は店主の計算機の玉を一つ元の位置に戻す。


「僕は嬢ちゃんじゃない。男だ。」


店主は僕に謝り商談が成立した。

僕は店主から魔導具を売り込まれたが、店主の誤認をつき、話の主導権を獲得。

水が湧く革袋は欲しい物だったので地図を含め店主の提示額の8割で購入した。

これは、以前に師匠から借りた革袋と同じものだ。

水に革の臭いが移らないうえ、料理するときもコップより楽だ。

ちなみに、水が湧くコップは師匠に献上したので手元には無い。



僕は街を出て商人から教わったルートに足を進める。

この道は王国領の小さな村を通るルートでほとんどが山道をである。

店主の話通り山道は使われていない。今は道がかろうじて確認できる程度でしかない状態だ。

鉈で枝を払い山道を進むと、開けた場所が見えてきた。

ため息が漏れる。

目の前に村はあったが、そこは村だった場所だ。

人気はなく、家の残骸や辛うじて形が残っている。どう見ても人が住めるレベルではない。

それでも雨風は防げる程度には形状を残していたので、僕は少し休憩した。

軽い食事を取り廃村を後にすると、日は東に傾いている。

山道を下ると道が現れた。地図上では王国に入った事になる。

道は馬車がと通れる程度には広く、最低限整地されていた。

ここが店主が言っていた盗賊が出る道なのだろう。

地図と廃村の位置を確認し、王都方向へ足を進めた。

森は深く、鳥の鳴き声がする。

まだ日の光はあるが、森を進むごとに暗くなっていく。

手ごろな場所をさがし、野営の準備を始める。

焚火をたき、食事を終えた頃、森は闇に包まれていた。

僕は警戒しつつ体を休めた。

目をつぶると、師匠との生活を懐かしく思う。

ホームシックなのだろうか。

森に響く鳥の声と焚火の音がより寂しさを強める。

しばらくして、森が徐々に明るくなり始めた。

あれだけ聞こえた鳥たちの声は静かになっている。

僕は焚火をかたずけ先を急いだ。

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