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24(200).渡航許可

ギルド受付の朝は早い。

1人の女性は、椅子に上り掲示板を外す。

それを机に置き、残る依頼をまとめる。


「支部長ー、この依頼どうにかなりません?」


「・・・そうだねぇ、君も気になっているんだろ?」


「そりゃあー・・・妹のこともありますし・・」


俯く受付嬢に、ミノスの支部長は励ます様に優しく声を掛ける。

ただ、その距離感は尋常ではない。


「なんで、何でそんなに離れるんですかー?」


「・・だってねぇ、距離感は大事だろ?」


「・・・私臭くありませんよ!」


「フフフッ・・・私も職を失いたくないんだよ。」


支部長は、ゆっくりと机に向かい状況を整理する。

そして、彼女へ指示を出す。


「わかりやすい所に張りましょう・・・ここがいい。」


「こんな下ですか?」


「上よりは、いいだろ?・・・きっと効果が有るよ。」


少し不安げな視線を浴びながらも、支部長は笑顔でその場を後にする。

残された受付嬢は、小さく頷き、新たな依頼を張っていく。

そして、出来上がった掲示板を元の位置へと戻した。


「・・・これでよしっと。」


彼女は、自分の顔をもみほぐし、最後に両頬を軽く叩く。

そして、入り口の鍵を開けた。


「今日も頑張るぞぉ!」



太陽も昇り、僕達は呀慶の行きつけの店へ入る。

そして、案内されるまま店の奥へ進む。

そこには、既に食事をしている呀慶の姿。

前回同様の光景に、僕は笑顔がこぼれた。


「おぉ、来たか。」

「先に始めておるぞ。」

「・・・さぁ、お前たちも喰え。」


机には、埋め尽くさんばかりの食事が並ぶ。

僕達は、彼に奢られ昼餉を堪能した。

そして、本題に入る


「謁見が決まったぞ。明日の朝だ。」

「帝の機嫌は悪くない・・・話が難航することはなかろう。」


「・・・?」


「こっちの話だ、気にするな。」

「私はこれで城に戻る。」

「良かったら、もう少し食っていけ。」

「では私は、失礼するぞ。」


そう言い残すと、呀慶は部屋を出ていった。

残された僕達3人は、残る食事を片付け、宿へ帰った。



翌朝、僕達は官職の男に連れられ玉座の間へ進んだ。

玉座には相変わらずのラミアの女帝。


「良く戻った。」

「天淵から、お前たちの事は良く書かれていたよ。」

「よって・・・蓬莱への渡航を認めよう。」

「良いか、あの島は只の島ではない。」

「行動には責任を持てよ・・・」


女性は、文官に視線を向け、顎で指示をする。

それは、嫌みには全く見えない姿であった。


「お主らに渡航許可証を与える。」

「この意味が分かるな・・・」

「だが、出港は最短で半年後だ。」

「下がってよいぞ。」


僕達は、小さな机の様な台に置かれた書状を受け取、玉座の間を後にした。

正面に広がる世界は、麦畑で人々が種まきにいそしみ、活気に満ち溢れる。

空には低い位置からでも強く日差しが差し、肌寒ささえ忘れさせる様だった。


「ルシア、やったな。」


「うん、渡航許可出たね。」


同じように遠くに視線を置くアリシアは、何処か爽やかな笑顔だ。

彼女は、僕の視線に気づき、小さく笑みを向ける。


「どうするか、半年とは面倒だな・・・」

「呀慶にでも相談してみるか?」


「それも良いね・・・」

「ただ、先立つ物が少し心もとないかも。」


「では、ギルドに行ってみるか。」


僕は、悪戯な彼女の笑みに笑みを返す。

すると、彼女は僕を引っ張る様に石段を掛けた。

ギルドは、城下でも外の城門寄りにある。

顔なじみなどいないが、入り口を箒で掃くミノスの老職員が会釈する。

僕は、その優しげな表情に挨拶を返す。


「沙岸の時はありがとうございました。」

「いつからコチラに?」


「北洲には、応援で行っておりました。」

「本来は私も、受付の彼女もこちらに勤めております。」

「本日も良いご依頼があると良いですな。」


僕達はミノスの老職員を残し、ギルドへと足を踏み入れた。

相変わらすの活気の無さだが、それでも成立はしている。

何処にでもいる強気な冒険者、そしてそれを反で笑う冒険者。

掲示板には、僕の手が届きやすい位置に高額依頼が張られている。

しかし、用紙は少し日に焼けていた。

僕の視線に気づくアリシアは、腕を組み考える。

そして、僕に声を掛けた。


「悪くないんじゃないか?」

「調査して、問題なければそれで終わりだ。」

「報酬も数人でまとめたモノか・・・金貨10枚は割がいい。」


「そうだね・・・依頼主は・・・」


僕は、依頼書の文字を指で追いながら依頼主を調べる。

するとそこには、ギルド受付にて相談とあった。


「何だこれは・・・」

「とはいえ、ギルドが絡んでいるなら大丈夫だろう。」


「そうだ・・ね。」


僕は、依頼書を取り、受付へ向かう。

そこでは、あの受付嬢が笑顔で待ち構えていた。


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