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23(161).想いの道、断たれる繋がり

そこは何もない世界とも言えず、空間とも言えない何か。

そこで1つの意志が生まれた。

意志は、ただ自らを問う。

自らの存在意義を、だた問い続ける。

どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。

その意志は、ソレが自らの存在だと気づく。

そして、さらに時は過ぎた。

そこには、大局的な2つの意志とも思える思考が生まれる。

しかし、長い時間それが続くと空しさだけが残った。

それは、何をする為にここに存在しているのかと。

さらに時間が過ぎ、一つの存在は、共に存在する意志を想像した。

それは、初めて自らの形を成し、相手を形づくる。


「私は・・・ヴェスティア。」

「君はガーティナだ。」


「・・ガーティナ・・・」


何もない何かに2つの意志が存在する。

その在り方を一方は、悠久の時をかけ、変えていく。

ヴェスティアは、世界を創造する。

その姿にガーディナは、心を動かされ、惹きつけられていく。

2つの意志は、その世界で愛をはぐくみ、新たに2つの意志をはぐくんだ。

産み落とされた意志たちは、ヤーデラングとアテーナイエと名前を与えられる。

やがて4つの意志は、世界に形を与え、そこには命が育まれた。

増える魂を4つの意志で管理することは難しい。

彼らはいくつかの眷属を作り出した。

1つは、天を支える巨大な体躯を持つ人。

1つは、大地と対話する美しき人。

1つは、そこに生きる魂を統べる6種の獣。

1つは、世界を動かす6種の根源。

彼らは、4つの神の意志を具現化し、世界を治めた。

時は進み、増えた魂は、もう一つの世界へと移される。

そこは庭園(アルカディア)と呼ばれる彼らの園。

新たな世界をヴェスティアは、時に真剣に、時に楽しそうに創造する。

その姿にガーティナは心魅かれた。


「あぁ、なんて美しい・・・」


完成した園では、人々が息づき、神を真似て生活する。

そこには、嫉妬や羨望、蔑みや卑下はない。

ただ、互いを慈しみ、ただ過ごすのみ。

停滞する世界は、優しい時間だけを落とした。

そこに、ヤーデラングは、(魔力)の適性を。

同じように、アテーナイエは能力(身体)の適正を与えた。

人々は、互いを慈しみ、互いを豊かにする。

発展を始めた世界は、ゆっくりと動き始めた。

それでも、魂と体は永遠の時間がある。

互いは互いを認め合い、互いの時間を過ごした。

ソレを見つめる、冷たい視線。


「なんて、面白みのない者達なの・・・」

「・・・そうだわ、永遠の時間など不要ね。」

「終わりがあるから必死になれるのよ・・・フフフッ。」


ガーティナは、その園に時間を与えた。

人は、それそれの時に流されるようになった。

それは、互いの事を考える余裕を奪っていく。

いつしか人々は、己の為に他を利用する様に変わる。

そこには、争いが生まれ、世界は壊れていった。


「いいわよ・・・これで、あの人の創造する姿が見れる。」


それでも、人の争いではmヴェスティアの癒しを必要とする程ではない。

人々は、荒んでいく心に依り代を求め、神を偶像する。

その心の在りかを、神々の眷属たちは、その力で彼らに見せた。


「おぉ、神よ、愚かな私たちをお救い下さい・・・」


カーディナは、変化無き世界に落胆し、その力で介入を始めた。

庭園には幽界が繋がり、混沌が世界を包む。


「さぁ、もっと荒れるのよ・・・」

「私に、彼の美しい姿を見せておくれ・・・」


その介入で神々が2つに別れ、ぶつかり合う。

それは、ダダの家族喧嘩、夫婦喧嘩でしかない。

彼女の力により、世界には魔力だまりができた。

そして、魂の在り方を変えた。


「フフフッ、これで、美しい姿が見れるのね。」


世界を分ける大山脈には、巨大な魔力だまりが渦巻く。

それは、カーディナの開いた常世への道。

眷属達は、園の危機を感じ、それを塞ぐために動く。

そこには、ゲニウス達がいた。


「二ティカ、あとはお願いね。」

「私は、これを封じます。」

「さぁ、ハータンやってちょうだい・・・」


「姉さん止めて。」


「ハティファス・・・すまん。」


ザレンの制止を振り切り、ハータンは、跪き祈る女性の体を宝剣で貫く。

彼女の祈りは、形を成し、巨大な魔力だまりを空間ごと封じ込める。

そして彼女を包むようにハータンは彼女を抱きしめた。


「ハータン・・・」


「お前だけが負うことは無い。」

「一緒にいよう・・ハティファス。」


魔力を吸い成長する神木は、二人をその大きさで隠していく。

残されたゲニウス達は様々な想いで世界に散った。

1人は破壊の女神へ復讐を誓い、残された4人は世界樹を見守り続けた。

時は流れ、世界はまた平穏を取り戻す。

しかし、人間は争いを好み、破壊を好む。

神々の争いが語り継がれて尚、人はまた世界樹を生み出す。

その姿にゲニウス達は心を痛め、2人を残し園を去った。



二ティカの語った世界の始まり。

それは、どんな叙事詩よりも生々しく悲しい話。

悠久より生きる彼女たちは、仲間を想い大地と対話する。

師匠の瞳は、また深い悲しみを浮かべていた。

ラスティは、彼女に寄り添い頭をこする付ける。

彼女は、屈み小猫を撫で腕に擁いた。


「アリシア、大丈夫?」


「・・・んっ、ああ、大丈夫だ。」

「世界樹か・・・」


僕は、震える彼女の手を取り、そっと彼女に寄り添う。

彼女は、潤ませた視線を僕に送くられた。

深い想いを擁くその視線に僕は言葉を返す。


「大丈夫だよ、僕がアイツを止めればいいだけだ。」

「・・・アリシアに悲しい思いなんてさせない。」


「・・・ルシア。」


僕達は、手を振る二人のゲニウスを残し、世界樹を後にする。

世界を分ける巨大な山脈は、闇が真実を隠す様に静かだった。


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