13.武器屋と男の娘
僕はライザと別れ武器屋に向かった。
そこは入って直ぐカウンターがあり、ゴツイ髭面の中年がいた。
奥には様々な種類の武器や防具が棚に置かれている。
置かれる武具は金属の鈍い輝きが美しく、心をときめかせた。
店主に自分に合う鎧と、雨風を凌げる頭まで覆えるマント、そして軽い少し湾曲した盾を注文する。
店主のオヤジはこちらを一瞥し、ため息をつく。
「お前さん、手ぶらで旅かい？」
「魔法使いでも護身武器ぐらい持ってるぞ。」
「なぁ、嬢ちゃん。旅をすんなら手ぶらじゃ危険だぞ。」
「外にゃあ、獣もいりゃ、賊もいるわな。」
「おめーどうするよ。・・・盾だけじゃ～対処できまい。」
「魔法使いも魔力が切れりゃぁ、どうにもなるまいよ。」
僕は一瞬眉をひそめたが、オヤジの言うことは間違っていはない。
見た目に寄らず気遣いがあるオヤジだった。
僕はオヤジに相談してみることにした。
するとオヤジはドヤ顔を表す。そして話はさらに続く。
「力がなけりゃ、短い武器がいいが、ナイフはダメだ。」
「そうだな、ショートソードだろ。」
「おめぇ、剣を使ったことはあんのか？」
「僕は、盾でサポートをしてたよ。」
「そうかい。剣じゃいかんな。下手に扱やぁすぐ壊れちまう。」
「・・・そんじゃ～こいつか。」
カウンターに置かれた武器は剣鉈・・・いや、デカい無骨な鉈だった。
オヤジの話はさらに続く。
「メイスも悪かぁねえが・・・力がねえよな、おめぇ。」
「そこに来ると、こいつはいいぞ、刃がふてぇだろ。下手くそでも、そう簡単にゃ折れね。」
「しかもこいつはな、---------------」
オヤジの話は長い
そして、最後に暑苦しいドヤ顔が迫る。
言っていることは理にかなっているし、力がないこともそうだ。
若干押し切られる形で、これを購入。
オヤジはついでだと作業や料理に使えるナイフを無料でつける。
そして防具の用意が始まる。
オヤジは流行りだと言い、白を基調とした革鎧が用意された。
「試着してもいいかい？」
オヤジは快く試着室を貸してくれる。
鏡を見るまでもない。お腹のあたりの生地は強度はあるがうっすら透けている。
パンツは茶系でロングではなくショートだが際どくはない。しかしドロワーズとはいったい？
「オヤジ、僕に似合うと思っているのか？」
オヤジは仕事を完遂したかの様な満足な笑顔だ。
この装備は人気があるという・・・若い女性冒険者にだ。
オヤジは有無を言わせず続ける。
「おめぇ、似合うな！ その装備は値段の割に性能がいい。安くしとくぞ！」
一応別の男物も相談してみると、オヤジは普通に取り合ってくれる。
それは女性冒険者の旅は危険らしい。
そこで男物を装備し男装する女性もいるという。
「オヤジ、男装する女性もいるではない。僕は男だ！」
オヤジは、ハッと目を見開き思考を止める。
そして、何事も無かったかの様に装備のアピールを始めた。
実際、同額の装備に比べ性能・品質は共に良い。
一見フリルなどは付いていない様に見える。
僕は言い張れば男物だと自分に言い聞かせる。
そして悩みつつも価格と性能ならと購入を決めた。
最後のオヤジは言う。
「見た目なんぞ気にしても、死んじまったらしめぇだろ。」
言っていることは終始間違っていなかったが、腑に落ちない。
僕は武具屋を後にし、道具屋をのぞいた。
そこには一般雑貨と魔導具も販売してた。
魔導具はスクロールや杖、アクセサリーといった戦闘に直結するものが目についた。
それ以外にもランタンなどの一般雑貨の様なものもある。
その中でも僕が興味をひかれた物は水が湧くコップだ。
最初は水の湧く革の水袋に目を引かれた。
しかし、値段が高い。店主に相談すると勧められたのがこれだ。
木のコップは底に魔法陣が彫られ模様は表面まで広がっている。
そこに魔力を込めると水が湧く。
何かと便利そうだった。
説明する店主の顔を下から覗き込み（他意はない）安くならないか相談する。
店主は少し悩み、僕の顔を何度か見て何かを決意したような表情で承諾した。
僕は店主にお礼を言い購入を決る。
最後に背嚢を購入した。大きさは奴隷時代に使っていた物と同じだ。
雑貨屋を出て城門までの市場を進む。
道中で次の町までに必要な小麦粉と干し肉、チーズを若干余裕をもって購入。
僕は母に数の数え方と、村で使う程度の通貨知識は習ってる。
だから一連の買い物はスムーズにできた。
オマケだと言って色々つけてくれる店が多い。
王都は村と違い、みんな優しい。しかし、一貫して嬢ちゃんと言われ続けた。
ふと空を見上げると、東の空にあった太陽は、西の空にその歩みを進めていた。
王都の城門を出ると、そこにはどこまでのつつくような石畳の道があった。
太陽は以前より少し低く、風は肌寒くなっている。
それでも、小高い丘の緑は風に流れ、反射する日差しは美しい。
