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11.苦悩する領主

リーガル達が拘束されてから2日が経つ。

証拠が揃い、リガルドはリーガルと関連する商人たちを連行し王都へ立った。

僕たちは暇だ。そんな中、僕たちは主のいない領主館へ呼び出されて応接室にいる。

そこには、僕たち4人だけではなく他の奴隷たち数名も呼ばれていた。

彼らは大商人の屋敷に潜入していたという。

少し経つと、執事とリナリアが部屋に入り。

そして、僕たちに頭をさげ礼を述べた。貴族が奴隷に頭を下げるなどあり得ない。

それだけ、この2人の従者は領主を想っているのだ。

呼ばれた理由は、簡単だった。このことを一切口外しないでくれというものだ。

もちろん、報酬はあった。

ただ、拒否することもできるが、貴族を敵に回すと後が怖い。

そして、話が終わるとなぜか僕だけ呼び止められた。

リナリアは僕にまた依頼をだした。


「不本意ながら、もう一度リカルド様を元気づけてください。」


彼女が言うには、以前とは違う塞ぎ込み方をしているそうだ。面倒な貴族だ。

ライザたちはクスクスと笑う。廊下の外からはルーファスの笑い声が聞こえた。

奴隷に拒否権はない。

リナリアに呼び出されてから1か月近く経った。

領主館の方が騒がしくなりリカルドが戻ったことが判る。

僕の背筋には悪寒が走る。

後ろから視線を感じ振り返るとリナリアがいた。

僕たちはリナリアに連れられ領主館へ移動する。

そして服装を変えられ、執務室に向かった。


「なぜドレス・・・」


ルーファスとライザは笑い、ミランダは褒めた。

いや、おかしい。日常の一幕になりつつあることがおかしい。

死んだ魚の目で執務室に入ると、なぜか落ち込んでいるリカルドがそこにはいた。

足を進めると扉は静かに閉まる。

僕は後ろを振り向いたが、後ろには誰もいない。

仕方なくリナリアに言われたとおりリカルドに声をかける。


「領主さま、どうかなさいましたか?」


彼の顔を覗き込むと、彼は確かに落ち込んでいる。

そして静かに語り始めた。

リカルドは法廷で捌かれはしたがはお咎めはなかった。

それどころか、領主としてこの地にを納めることを許されたそうだ。

彼の父と商人たちは、爵位をはく奪され斬首刑を科せられたという。

落ち込んでいる原因はこのことではない。

俯いたままのリカルドが初めて僕を見た。

僕はリナリアの言葉を思い出しリカルドを褒めることにした。


「領主さまは住民の為に私たちを率い、魔物に対峙していらしたではありませんか?」

「それは立派な事ですよね・・・」


リカルドの表情は曇る。

僕は何が間違ったかわからなかったが、それでも言葉をつづけた。


「素敵でしたよ。領主然としていて・・・」


リカルドは僕のもとへ歩み寄る。

それは優しく抱擁するものではなく、明らかに好戦的な雰囲気だ。

表情も眉間に皺をよせ眉を吊り上げていた。

僕は圧倒され後ずさりするも、壁に逃げをうばわれる。

リカルドの腕は壁を強く叩く。

僕はその衝撃と、ただならぬ恐怖で尻込みした。


「私には君たちの様な才能はないし、歯向かう勇気もない。そんな男を民は領主さまと呼ぶ。」


彼は項垂れながら、自分に言い聞かせるように静かに言葉を紡ぐ。


「そう呼ばれるたびに、領民から希望を託される・・・」

「私はそれを返すことができなかった!今もそうだ・・・」


彼はもう一度壁を強く叩く。


「私は従者たちに助けられてばかりだ。この気持ちが君たちには分からないだろ!」


領主の瞳から涙がこぼれ落ちる。

その表情には怒りは無かった。むしろ悲しみのような感情だろうか。

彼は自分の失敗を自分で取り返せなかったことに苦悩していたのだろう。

その端正な顔は子供の様だ。

僕は無意識に母やライザにされたように、彼を抱きしめていた。

静かな時間が流れ、彼の瞳からは大粒の涙がこぼれ、嗚咽だけが部屋を包んだ。

重い空気はなくなり、ゆっくりとした時間がながれた。

彼は泣き止み一言謝る。

そして”今あった事を忘れてくれ”言い、部屋を出ていった。

僕が部屋を出ると、領主の従者から頭を下げられる。

僕はそのまま領主館をでると、後ろから慌てたライザにとめられた。


「ちょっとルシア!着替えないさい!!」


僕は領主の雰囲気にのまれ、現状を忘れていた。

僕は顔を真っ赤にし、衣裳部屋に走る。

服装を直し、改めて領主館をあとにした。

何事もなく夜は過ぎ、またいつもの朝になる。

僕たちはダンジョン奴隷に戻った。

ダンジョンは一度暴走を終息させた為、魔物の出現は少なくなっている。

僕たちは階層の巡回を行い、魔鉱石を間引く。

これは必要以上に魔力だまりを作らない為だ。

今は、湧く魔物も大したものはいない。僕たちは1週間この作業をつづけた。

そしてまた領主から呼び出しがかかった。

そこでは全ての奴隷が集められ、領主から今後の進退を告げられる。

それはこのまま領主に仕え領地を守る兵士になるか、好きに生きるかの2択の提案だ。

僕は領主に呼ばれ執務室に入ると、2択の選択以外の話を告げられた。

僕たちの様に魔窟暴走収束の為に騎士に同行した者は、王都で褒賞が与えられるとのことだ。

その為、僕たちは領主の提案の返答は持ち越しになり宿舎に戻された。

翌日、僕たちは奴隷首輪の制限を一部解除し、王都に向かう馬車に乗る。

僕はライザ達と一緒に生活が送れるか心配だった。


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