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10.メイドとお家騒動

「リカルド様、失礼します。」


僕達はメイド長に連れられ、領主の執務室に入った。

窓の外からは光は差し込んでいるが、空気の重さに引かれ、室内は暗く感じた。

重力の中心には領主らしきモノがある。

侍女頭から小声で指示が出るが、気が乗らない。

後ろの3人はクスクスと笑っている。


「領主さま、お茶が入りました。」


僕はリカルドの机にお茶を置く。しかし反応は薄い。

執事から指示された通り、領主に声をかけていく。


「領主さま、如何なさいましたか? わ、私しめでよろしければ、お話しくださいまし。」


重力の塊は、ようやくこちらに視線よ向けた。

リカルドは俯き、歯を軋ませていたが、徐々にいつもの表情に変わるが重さは変わらない。


「ルシアか、リナリアに頼まれたのか。」


リナリアとは侍女頭のことだろう。彼女はいつもリカルドのことを気にかけている。

あの奇行ですら、無表情で傍につき従っていた。

リカルドはため息をつくと、僕達に席にかけるよう促す。

彼の口から淡々と、領地の現状を聞いた。

内容はこうだ。

今回の魔窟暴走で国から出廷命令が出ているという。

それで、リカルドは落ち込んでいるわけだ。しかしこの問題は根が深かった。

リカルドは領主ではあるが、その実権は未だ隠居する父親が持っているという。

権利を取り上げることは、周りの大商人が許さない。

それは父親と大商人達はお互いに裏で利益を共有していたからだ。

今回の魔窟暴走の原因も、元をたどるとその部分に行きつくという。

リカルドはギルドへの管理委託を考えていたが、それを父親達は拒絶し続けた。

それでも代案として奴隷への装備向上を相談するも無視される。

その理由はお粗末だ。父達は自分の利益を優先する為だ。

ギルドの介入がなければ、ダンジョンがらみの流通は融通が利く。

さらに理由をつけて税を掛けられるらしい。

最終的に中抜きされ、収益の信憑性のない情報が国へ報告されていたという。

国は、問題なく領地を運営していると判断していたが今回の件だ。

リカルドは国から咎められ、出廷することになっている。

彼は何もできなかった自分が悔しく惨めだと嘆いていた。

その表情をリナリアは、悲しそうな表情で見つめている。

重い空気に風を入れたのは執事だった。


「君たちにリーガル様の罪を裁く物的証拠を探してほしい。頼めるかな?」


いやいや。頼めるかな?ではない。僕たちは奴隷だ。拒否する権利はない。

リカルドの執務室を後にし、執事と別室で戦略を立てた。

今回はダンジョンとは違い、正面から行くことはできない。

潜入捜査になる。リーガルは、さすが領主の親だ。嗜好も似ていた。

いや、むしろリカルドが聖人に思える程に酷い。

潜入は、ライザとミランダで決まりだろう。僕はルーファスと共に後方支援だとホッとしていた。

しかし、それは許されなかった。

潜入は3人で武器の持ち込みはできない。

リーガルの新しい侍女として潜入し、物的証拠を持ち帰ることが最重になっている。

リーガルの殺害はNG。

それは、彼を法廷に引きずりだし、商人ごと潰すことも今回の目的に入っているからだ。


翌朝、3人は身だしなみを整えられリーガル邸に潜入した。

僕たちはリガルドの執事の後に続き、リーガルの部屋に入り紹介された。

そこには、白髪白髭で浅黒い肌の中年男性がソファーにもたれ掛かっている。

その視線は、自信満ちているが、妓楼の客たちと同じ目をしていた。


「ほう、リガルドから侍女の献上とは初だな。まあ良い、下がれ。」


僕たちは、他の侍女に紛れ情報を集めた。

しかし、簡単には尻尾をつかめない。

3人は可能な限り印象を薄く生活を続けた。

ここに来て1週間がたつ頃、ことは起こった。

共に働く侍女がリーガル大切にする壺をわってしまい。彼に呼び出されていた。

僕たちは息をひそめ、彼女の後を追う。行先は彼の執務室だ。

怒鳴り声が邸内に響く。

少し経つと、おびえた侍女を連れたリーガルは屋敷を出て離れに向かった。

僕たちは気づかれない距離を保ちそれを追う。

離れは静かなまま、空は白みだした。

僕がウトウトしていると、ライザに頬を軽く叩かれ意識を戻された。


「戻ってきたよ。私たちもバレないうちに部屋に帰りましょ。」


その日の務めは何を行ったか覚えていなかった。


翌日の夜、大きな宴が開かれた。

そこには大商人が数名呼ばれ、本邸で歓談しながら食事をとった。

気持ち悪い視線の中、給仕をする。

酔いが回るにつれ、男たちの手は給仕の肌を触りだす。

僕は嫌悪を感じ、2人と共に食堂に隠れことを待った。

男たちは嫌がる侍女を連れ離れに向かっていく。

僕たちはソレを追い離れに潜入するが、離れには人気が全くなかった。

僕たちは侍女たちのことは後にし、空き部屋を片っ端から探していく。

そこには、帳簿や隠蔽に使ったであろう手紙などが保管されていた。

ライザは上空に魔力を放ち淡く静かな光を発生させた。それは30秒と経たずに静かに消える。

僕たちは一部の資料を別の場所に隠し、侍女たちを探す。

地下室の壁の向こうから彼女体の悲鳴が聞こえた。

ミランダが壁を強引に破壊し、壁の奥に突入する。

僕はそれに続き入ると、甘い香りが立ち込めている。

奥には目をそむけたくなるような光景が広がった。

ライザはリーガルを含め、そこに居る男に蔦を這わせ拘束し、蔦を石化させる。

しかし、魔力障壁の付呪がされた装備も持つ者もいた。

逃げようとする商人をミランダが殴り倒し、昏倒させる。

僕はリーガルの手を摑まえた。


「ほう、小娘がどうこうできようか。」


以外にもリーガルの力は強い。簡単に持ち上げられてしまう。

そして、足を掴まれ逆さ吊りにされた。

変な声がでそうになりながら、スカートを必死に抑えていこうする。

リーガルは視線をライザ達2人に向け彼女たちを牽制した。


「おい、そこの女二人!手を出したらわかるであろう。」


僕はスカートを抑えつつ、足から魔力をリーガルに流し込む。

リーガルは一瞬恍惚な表情になり脚を離した。

僕は着地と同時に、リーガルに飛びかかり首を掴む。そして魔力を流す。

リーガルは泡を吹き倒れた。

やってしまったと焦ったが息はまだある。

半時ほど経ちリカルド達が駆け付けた。


「親父、アンタの言葉がもう聞かない。アンタには法廷にでてもらう。」


領主の顔は男らしく見えた。


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