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わくわくドキドキ動物園

……………………


 ──わくわくドキドキ動物園



 帝都動物園!


 世界の3分の1を支配する帝国に相応しい、世界最大級の動物園である。植民地や交易相手国などから集めた様々な動物が飼育されており、それはもうびっくりするくらい楽しい場所だ。


 と、ここでひとつ。


 この世界には別にゴブリンとかドラゴンとかはいません。ごく普通に地球と似たような生態系となっています。魔術はあるけど、あんまりファンタジーじゃないね。


「見て、見て! あれは何の動物かな!?」


「早く入ろう! 早く、早く!」


 子供たちは帝都動物園の正面ゲートで大騒ぎ。アイラさんは事前に購入しておいたチケットを係の人に見せて入園手続きを行っている。


 私とロッティははしゃぐ子供たちがどっかに言ったりしないかの監督だ。


「みんな! 入園できますよ! ルーシィお姉さんとロッティお姉さんについていってくださいね!」


「はーい!」


 ここで手続きが終わり、私とロッティが子供たちを連れて動物園内に。


「わー! 動物がいっぱいだー!」


「あれは? あれは何の動物?」


 子供たちは早速はしゃぎ始め、私とロッティは迷子がでないように子供たちをしっかりと監督する。そして、そうしながらも私たちも動物園の動物たちを眺めた。


「ロッティお姉さん! あれはなんて動物なの?」


「あれは、ですね……。ええっと……。フラ……フラミンゴです」


「フラミンゴ!」


 子供たちがわいわいとロッティに尋ね、ロッティが慣れない様子でパンフレットを見ながら答える。


 動物園の正面ゲートの前は水場が作られており、そこには10羽ほどのフラミンゴが飼育されていた。フラミンゴは特徴的な長い足を延ばし、水場で食事をしている。


「知ってるかい? フラミンゴは生まれた時は白くて、餌である赤いエビやカニを食べることで赤くなるんだよ」


「本当なの、ルーシィお姉さん?」


「本当だよ!」


 へへっ! 私のちょっとした豆知識にちびっ子たちは感銘を受けているぞ。


「え。もしかして、私たちもエビやカニを食べすぎると赤くなるのでしょうか……?」


「ならないよ」


 ロッティが妙なことを言い始めるのに私が突っ込む。


「しかし、本当に広い動物園だ。100種類近い動物がいるんだってさ」


「全部見るのは凄く時間がかかりそうです……」


「うん。ある程度飛ばし飛ばしになるかも」


 帝都動物園は私が前世で訪れたことがある横浜のとっても大きな動物園よりも広い。これを半日で全てじっくりと見るのは時間が足りないね。


「そろそろ次に行くよー! ついて来てねー!」


「はーい!」


 正面の水場の次はサバンナの動物たちを展示しているコーナーだ。


「キリンだ! キリンでしょ、あれ!」


「そうだよ-。あれはキリンだね。君は物知りだ!」


「へへん!」


 長い首が特徴のキリンは子供たちの人気者だ。子供たちは本でしか見たことがなかったその姿をしっかりと目に焼き付けようと柵にしがみついてみている。


「大きいですね……」


「だね、ロッティ」


 ロッティも思わず夢中でキリンを見ており、私はその間にアイラさんと子供たちがはぐれないように見張りを行った。


『ルーシィ。聞こえるか?』


「ファイブ・バイ・ファイブだよ、先生」


『よし。フィルビー大佐が動物園に入った。やつの動きはこちらで掴んでおく。予定通りだ。もし、やつと接触した人間が確認できたら、確保に回ってくれ』


「了解」


 リーヴァイ先生が監視する中、フィルビー大佐が囮の役割で帝都動物園に入園。これからフィルビー大佐はこれまで情報を交換していた場所に情報が詰まったビンを置く。


 それから、それを回収しにやってきた問題の人間を取り押さえるのだ。


「ロッティ。フィルビー大佐が動物園に入った。予定通り、接触相手が確認できたら、君がそれを押さえてね」


「了解です、ルーシィ」


 スパイを取り押さえる役目は子供の扱いに自身がないロッティである。私はアイラさんと引き続き子供たちが迷子になったりしないように引率だ。


「ねえ、ルーシィお姉さん。次に行こう?」


「そうだね。次は何かな?」


 そわそわした様子の子供たちが訴えかけるのに私たちは次の展示へ。


「あれはなーんだ?」


「ゾウ!」


「当たり!」


「これ読んで、ルーシィお姉さん!」


「はいはい。任せて。『このゾウは帝国の植民地である──』」


 子供たちは年長の子はある程度文字が読めるが、小さな子はまだまだ分からない単語が多いので私が展示パネルに書いてある解説文を読み上げてあげた。


「凄いですね、ゾウ。どうやって連れてきたのでしょうか……」


「檻に入れて船で運んだ、のかな?」


 ロッティも子供たちに並んで目を輝かせている。仕事の前は文句を言っていたのに、実際に来たら私より楽しんでいるんだから!


「パンフレットを見たけど、ロッティが楽しみにしているカピバラは次のコーナーだよ。その前にあるのはシマウマ、ライオン、サイだね」


「ええ。楽しみです」


 ロッティは本当にワクワクしてる様子だった。


「ほら、みんな! ライオンだよ!」


「あれがライオン……」


 私のお目当てのライオンはメスが3匹とたてがみが立派なオスが1匹。いわゆるハーレム状態ってやつだね。


 オスはだらだらとネコのようにくつろいでいる。大きくて、なかなか獰猛そうな顔立ちなのに本当にネコみたいな動きで可愛いなあ。


「あれがライオンなのですね。ルーシィが気に入る理由が分かったような気がします。大きなネコ、ですよね。本当に」


「でしょ?」


 子供たちもライオンは大好きらしく、皆で長い時間じっくりと見ていた。ライオンが吠えると子供たちは歓声を上げたぐらいだ。流石は百獣の王である。


「さて、そろそろ次に行くかい?」


「うん!」


「オーケー。見て回ろう!」


 私たちはそれからシマウマやサイと言ったサバンナの動物を見学し、そしてロッティ待望のカピバラの展示に向かった。


「あれがカピバラ……!」


 何とも言えないゆるーい表情をした、とっても呑気そうな生き物が水辺のある展示コーナーにてうとうと眠たそうにしていた。それを見たロッティが食い入るようにその様子を見つめる。


「よかったね、ロッティ。無事に──」


『ルーシィ。フィルビー大佐のブツに接触しようとしている人間がいる。配置についてくれ。恐らくはこいつで間違いない』


 おっと。ここでリーヴァイ先生から連絡だ。


「ロッティ。リーヴァイ先生から連絡があったよ。お客が来てるって」


「え。今ですか?」


 ようやくカピバラの展示にこれたばかりのロッティにとっては可哀そうだが、ロッティには敵のスパイを押さえてもらう必要がある。


「やっぱり私が代わりに行こうか?」


「いえ。仕事が優先です。行ってきます」


「リーヴァイ先生から場所などの情報を貰ってね!」


「了解」


 さて、私は引き続き引率の仕事だ。


「ん? アイラさん! シエナちゃんとテディ君がいません!」


「えっ! 嘘、さっきまでそこに……」


 私はすぐに14名いるはずの子供が12名しかいないことに気づいた。


「あの! シエナはテディがまだライオンが見たいって言って……! それで勝手に戻ったのを追いかけました! すぐに戻ってくると思ったんですけど……」


 ここで年長のマックス君がおずおずと申し出てくれた。


「マックス君、情報ありがとう。私が迎えに行ってきます!」


「お願いします、ルーシィさん」


 アイラさんにそう言って私は動物園を逆走し、ライオンのコーナーに戻ろうとする。


「テディ君! シエナちゃん! どこだーい!?」


 私はふたりの名前を呼びながら周囲を探る。動物園はだんだんと人が増えてきていて、人口密集状態だ。その中でふたりの小さな子供を探すのは大変である!


「ルーシィお姉さん! ここです!」


「ああ。シエナちゃんにテディ君。無事でよかったよ」


 声を上げてシエナちゃんがテディ君の手を引き、駆け寄ってきたことで、私は無事にふたりを見つけたが……。


「んん? そのビンはどうしたの、テディ君?」


「拾ったの!」


 テディ君の持っているビンは飲み物などを入れるそれではなかった。


「動くな」


 そこで男の低い声が聞こえた。


「そいつを渡してもらおう」


「おやおや?」


 私が振り向くと男が先込め式ピストルの銃口を私に向けていた。


……………………

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