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8話 冒険者ギルド





 



 この世界に科学という概念は存在しない、人類が(こよみ)を数え始めてから長い長い時を経て今まで、火の起こし方を思い付く前に、魔法で火を起こしていた。科学では無く魔法を使い続けた結果、魔法学が生まれ、魔法の可能性を追い求め、更なる高みへ導く存在を魔導士と呼ぶようになる。


 長い長い魔導士の歴史は、さまざまな恩恵を人類にもたらした。


 それは魔力を通す事で起動し、決められた魔法を発動する魔道具の存在から始まり。

 魔力の運用方法、基礎魔法(生活魔法)、攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、補助魔法などなど、有りとあらゆる魔

法が開発され、人々の生活を著しく発展させた。

 

 そして約数十年前に作られたとされ、ここ数年で実用化が始まった魔法がある。その魔法の名は通信魔法、こちらとかあちらを繋ぎ、遥か(はるか)彼方(かなた)の相手に声を届ける、これは魔道の真髄(しんずい)に位置する魔法の一つだった。


 だざ通信魔法のインフラは進んでおらず、各国の代表者や、一部の権力者だけが保有している状況である。










 『ーーして、風の王よ、勇者アカツキの経過はどうなのだ?』


 

 ここは王の執務室、怪しく光る魔法陣が幾重(いくえ)にも展開され室内を照らしている。今、風の王ボレアスは謎の人物との密談をしていた。この時、部屋には誰も入れない、王の執務室なだけありどんなに大きな音だろうと、少しも漏らす事はないだろう。

 どんなに強力な上級魔法を食らっても傷一つ付かないであろうこの部屋には高度な魔法の数々が施されている。ここは王の寝室の次に安全と言えた。

 その謎の人物からの問いにボレアス王は手元にある資料を見つめていた。


「ーー概ね(おおむね)順調だな、彼はとにかく物覚えが早い、必要最低限の知識は数日で覚えてしまった。よって今は剣術と魔法についての訓練を受けている所だ」

『ほう、中々やるな今代の勇者は他に剣術や魔法に関しては何か報告はあるのか?』



 ボレアス王が通信魔法越しに対談する謎の人物はアカツキに興味深々なようだ。


「剣術はシュウバ・ヴィレから、魔法はティフォン・アヴェンタドールから報告が上がっている」

『なんとっ、中々の変人達に師事ているな。して、その報告内容が気になる、さっさと報告せんか』



 その横暴な態度にボレアスは眉間に皺を寄せながらも、2人から送られた報告書に目を通した。

 

1枚目

 ーー剣術についての報告

 流石勇者ってところかな、アカツキは才能の塊だね、身のこなし、身体能力、頭の回転、どれをとっても信じられない(さえ)があるが、特に眼の良さは異常だと感じたよ。“良くて避けろ”なんて言ったけど本当に避けるとは思ってなかった!はははっ。

           シュウバ・ヴィレよりーー。


2枚目

 ーー報告、彼は凄い

 魔法の才能有り、

※理由・勇者だからだろうか魔力の扱いが異常に上手い、複数属性に適性あり、

 だが決定的な問題有り、

※理由・特殊体質持ちで魔法出力が抑えられているからーー原因はわからない、、、、、、、、以上。

  ティフォン・アヴェンタドールよりーー。



 




 

『若干の不安要素はあるがこれは期待できそうだな風の王』

「ーーあぁ、、、、、、、、私も期待している」



 彼と謎の人物との通信は終わり、怪しい光に照らされていた部屋はすぐに元の様子を取り戻す、彼は椅子に重くもたれかかると、


「ーーさて、どうしたものか」っと呟いた。

 その哀愁(あいしゅう)の籠った呟きは、王の執務室内で静かに響き渡るーー。









 街中を歩く人々とすれ違う、1年を通し暖かい風の吹くこの国では、そこに住まう住民の服装は自然と薄着だった。

 歩みを進めるうちに一際(ひときわ)人々の喧騒が激しい場所へ行き着く。そこでは今日も仕事熱心な商人達が、雑多な商品を床に並べて熱心な客引きを行っていた。


 

 そんな風都エアの街並みは高低差が激しい、それは風都エアが山岳地帯に存在する事が理由となっているだろう。

 何故このように不便で効率的で無い土地に風都エアがあるのか、そこに意味が有るのかは誰にも分からないだろう。

 たまたま人が住みつき、たまたま独自の文化が発達し繁栄して行った結果、それはいつしか村となり街となり国となったのだろう。



 そんな風都エアの道は他の国と比べいくらか細く作られ、更には細かく枝分かれしている。

 だが中には馬車が4台は並んで走れるであろう道がいくつか存在する。それは比較的傾斜が緩やかなになっている土地で、そこを中心に建物が多く建てられており人の生活と交易・物流の中心地となっている。

 そのたくさん存在する建物の中でも頭一つ飛び抜けて目立つ建物があり、その建物が今回のアカツキの目的地だった。

 


 その建物に向かうにつれて、すれ違う人々の服装は徐々に変化していく。最初、薄手で布製の服を着ていた人々を多く見かけたが、気づけば鉄製や革製の鎧をその身に纏った集団を見るようになった。そしてその者らの腰や背中には剣や盾、杖などが見えており、これは彼らの職業を表してる。


 アカツキは彼らに続くようにその建物“冒険者ギルド”の扉を開け中に入るのだった。


 




 重く重厚感のある扉を開け中に入ると、そこには依頼受付と書かれたカウンターが複数あり、それぞれに数人ずつ並んでいるようだった。



「ここが冒険者ギルドだ、中々いい雰囲気だろう?」

「そうですね、いきなり喧嘩を売られたりしなくて良かったです」


 シュウバの問いに暁は少し安堵(あんど)したように答える。

 彼のイメージでの冒険者は血の気が多く余所者に厳しいイメージであり、余所者だからという理由で喧嘩でも売られると思っていたが、実際はそんな事はなく、冒険者それぞれが規則をよく守り行動していた。


「そりゃあそうだ、冒険者の規則は厳しい、少しでも違反すれば良くて罰金、悪くて冒険者証の永久剥奪(はくだつ)だぞ」

「え、永久剥奪、、、、、、、、」


 想定以上に厳しい冒険者の規則に目を丸くしているアカツキだった、シュウバはその様子を見ていたのかいないのか、念押しをする。


「気をつけろよアカツキ、冒険者証はほぼ全ての国に出入できる便利な身分証だが。その分、規則は厳しく再発行はほぼ不可能に近い」


ーー規則か、ちゃんと目を通しておかないとなぁ


 そんな事を思いながら、彼は冒険者ギルドに来ることになった経緯を思い出す。



 あれは最近の日課である訓練をする為、暁が訓練場に来た時。


「アカツキ、今日は冒険者ギルドに行き冒険者になるぞ!」


 そんな突拍子(とっぴょうし)な事を言いながら、彼は訓練場のど真ん中で腕を組み仁王立ちしていた。


「きゅ、急ですね師匠」

「あぁ、急に決まったからな!」


 流石の暁も疑問を隠す事はできない、ここ数日でシュウバの性格は理解できて来ていたがここまで急な予定変更は今まで無かった。



「理由を聞いてもいいですか?」

「その疑問は分かる、もちろん説明しよう!」


そして彼は意気揚々に事の発端を話し始めた、




 彼の説明によると、暁が勇者選定の儀を受け勇者として正式に認めれたあの日、新たな勇者が現れた事を風の国アネモスは大々的に公表した。

 それから数日後、急にに魔王軍側からの止まっていた活動が再始動し、国境線を攻撃し始めた。    

 中には勇者を探し出そうとする動きが見られたらしい。


ーーそれはそうだろう、敵は弱いうちに潰したほうが楽だ。


 魔王の幹部と戦うとなると、今の暁には実力不足が否めない、何処に魔王の間者が潜り込んでいるか分からない現状では、弱い勇者を大々的に活動させるのは自殺行為になるだろう。

 そこで勇者としての存在を隠しつつ、戦闘経験を積み実力を上げる事ができ、何処の国へも自然に立ち入る事の出来る冒険者はまさに適任だったのだ。




「本日はどのようなご用件でしょうか?」



 暁を回想から引き戻したのは女の人の声だった。

 今彼ははシュウバの指示の元、冒険者になりに来た一般人を装い受付の列に並んでいる。




「えっと、冒険者になりに来ました」

「運がいいですね、ちょうど今から冒険者資格試験が始まる所なのでギリギリ割り込めます、どうしますか?」


ーー試験があるのか、師匠、、、、説明不足過ぎだろ


「はい、お願いします」

「承りました、ではこちらの用紙にお名前とご年齢、宜しければ特技をお書きください」



ーー名前、年齢、特技、思ったよりざっくりしているな


 暁は受付嬢から渡された紙に記入する、名前や年齢はありのままを書くが、特技の欄で一度止まった。


ーー特技か、、、、、、、、剣は最近師匠に習い始めたし魔法もやっと使えるようになってきたばっかりだし、特技と言えるのだろうか?


『先に書いちゃいなよ、決意表明的な感じで。もし自信が持てないのなら、後から持てるようにすればいいじゃん?』


ーーそれもそうか、、、、なら




 暁は残りの特技の欄を書き埋め受付嬢に渡した、



「ミナモヅキ アカツキ様ですね、年齢は17、特技は剣術と魔術、書き間違いはありませんか?」

「はい、間違いないです」


 受付嬢は暁に内容の確認を取ると、目の前に一枚のカード置いた。


「では、こちらが仮冒険者証となりますので、これを持って2階の第一講義室で待機していてください、詳しい説明に関してはそこで担当者が致しますので」


 仮冒険者証を受け取った暁は指示通り第一講義室に向かうのだったーー。

 

 


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