理事会
百年に一度の理事会が行なわれた。理事は昔の霊的能力者の中から死後選出される。
閻魔を使役できる安倍清明理事長。
仏教界からは日蓮。
キリスト教からは聖者パウロ三木。
魔界から石川五右衛門。
書記は十人の同時発言を聞き分けられる聖徳太子。
「早く空海先輩と代わりたいのですが。」
日蓮の嘆きに、
「やつはまだ死んでないと言い張ってますからな。」
あの世とこの世を自由に往来できる役小角校長が答える。
五右衛門も第六天魔王を名乗る織田信長の代わりだ。織田信長を押す陰陽師たちは安倍清明理事長とは流派が異なり仲が悪い。なので、しかたなく五右衛門が理事をしている。信長は死後、織田家を滅亡させた秀吉を憎み、五右衛門も秀吉に釜茹でにされた恨みがある。
「理事長はどうです?」
校長が場を和ませるために、各理事に声をかける。
「最近は、安倍というだけで勝手に一族を名乗るやからが多くて困るわい。」
「そうれは人気のある証拠。わたしなどほとんど知られてませんから。」
パウロ三木は寂しそうだ。
「生徒たちが騒がしいと聞いたが。」
理事長が議題を振る。
「生徒会のことですね。今はすっかり収まっています。」
校長は汗を拭きながら答える。
「で、これからどうするつもりだ。また、ぶり返すぞ。」
五右衛門が目を見開いて尋ねる。
「生徒たちのガス抜きと思い始めたのですが、初代が以外と頑張りまして。」
校長は頭を掻きながら、小さな声で答えた。
「校長が一番楽しんでたとか聞いたぞ。一人勝ちだったとか。」
日蓮の皮肉だ。
「いえ、役得ですよ。」
と校長である役小角は笑った。
「自由は大事です。」
パウロ三木の聖者らしい意見だ。
「あまり調子に乗せると、校則にまで口出しするようになりますぞ。」
もともと日蓮は色々な宗教を同列に扱うことには反対だった。むしろ自由とは対局にあると言っていい。
「生徒が嫌がるものを無理強いしなくてもいいんじゃないか。」
法が嫌いな五右衛門らしい。
「それじゃあ、あんたみたいなのだらけになっちまう。」
日蓮も引かない。
「世に自治会の種は尽きまじ。」
五右衛門が大声を張り上げる中、
「厩戸皇子、何か意見はありませんかな。」
困った校長がそっと聖徳太子に助け舟を求めた。
「校長の配下に両生徒会長を置き立場を明確にし、法として校則をしっかり守らせるほうがよいかと。」
「かてえなあ。そんなんだから死後の政が乱れんだよ。」
五右衛門はあくまで自由を押し通した。