ワグネルと無血革命
退去を命ぜられたハヌマーンは残念がるかと思いきや、大好きなラーマの元に帰れると大喜び。
「ウッキウキ。」
軍神ハヌマーンがいなくなると再び反クリシュナ運動が活発化していった。クリシュナはウィルス対策と称して集会禁止令を出した。デモは弾圧され、彼を批判するものは密告された。ハヌマーンが去って密偵を束ねる者がいなくなると彼らを解雇し、今度はクリシュナは自らを称えるための合唱団を作るために、強制的に団員を集める徴兵制を提案した。しかし、密偵と違って、手当ても出ず食事もろくに支給されないボランティアをまともな生徒がするはずもない。すぐに酒や激辛料理で声が出ないといって徴兵のがれをするものが続出した。
やむなく、退学者を集め復学させ合唱団ワグネルを作った。さらに無理やり合唱団の活動は集会ではないとしたが、最前線に立たされる彼らはたまったものではない。「薬が不足してる」と言っても供給されるはずもない。退団すれば退学だ。そうなれば今後の就職に影響が出る。それでも未知の病気で死ぬよりはましだと、多くの者が逃げ出した。
知将を失ったクリシュナはしだいに孤立し始めた。折りがある日ごとに、周りに集まっていた女子生徒たちも次々と離れていった。クリシュナは新生徒会長に断罪されることを恐れ、密かにインドへと帰国した。会長不在となった生徒会は活動自粛となり、ようやく事態は沈静化した。
ついに学生たちの無血革命により、学内は平和を取り戻した。
「もう、美形はこりごりだな。」
男子の愚痴をよそに、
「これからは知的美男子よね。」
と、女子は無邪気に話すのだった。