策士
唐突に始まった選挙戦に選管はルールつくりに追われた。
「公示もしてないのに、勝手に選挙戦を始められては、面子がたたないぞ。」
「皆、その気でいるのに今更無かったことにできないだろ。」
バス・血湯の噴出で事実上始まってしまった選挙戦だったが、認めざるを得ない状況だ。
「会長不在だから、大儀はある。だが、クリシュナ会長代行がどう出るか。」
「やつも民意を得て成ったわけじゃない。ここは一つ譲歩してもらおう。」
「中等部の選挙管理委員会から、民意を問うために中等部代表と決選投票をしていただきたいと申し入れがありましたがいかがいたしましょう。」
ハヌマーンはクリシュナの機嫌を損ねないように慎重に尋ねた。クリシュナ自身は生徒会には全く未練はない。しかし、居心地のいい居住空間を失うことは許しがたかった。
「ここを私専用にすることはできないのか。」
「それは中等部への越権行為にございます。」
クリシュナの提案にハヌマーンは困った表情で答えた。
「なら、拒否だ。」
「リコールされると不利になります。ここはお受けなさったほうが。」
「策があるのか?」
「密偵により候補者の弱みが報告されています。」
ハヌマーンは自信有り気に答える。
「この状況はお前の失敗によるものではないのか?」
ハヌマーンは黙っていた。
「まあいい。もっと確実な方法を考えろ。」
ハヌマーンは一礼すると部屋を去った。
ハヌマーンの閉じたドアに向かってクリシュナは「所詮は猿知恵か。」と、吐き捨てた。
阿修羅には浅はかな面があり、かつてインドでクリシュナが勝利した歴史がある。それにひきかえ異教のリリムは彼らにとって未知の存在だ。それを知った中等部では、阿修羅不安説が広まった。女性票がクリシュナと阿修羅に分かれてしまうとの声が上がった。元会長が悪魔だったこともあり、阿修羅派の勢力は衰えリリムが代表に決定した。
「決戦投票の選挙活動は学内に限定する。」
ハヌマーンは条件付で決選投票を承諾した。学内限定ということは活動は昼間に制限されることになる。リリムは夢で誘惑する魔女なので、活動が封じられてしまう結果となった。
「不公平じゃありません?」
リリムの母親リリスから抗議があった。リリムの父親はサタンだ。まさにモンスターペアレント。
「では、昼寝の時間を設けましょう。」
校長の仲裁で何とかことは治まった。
これに対しハヌマーンは、彼女らが白い体液を好むと知り、給食に牛乳を取り入れることを要求した。牛乳を飲んですっかり満足したリリムたちは、男子生徒を誘惑をできなくなりクリシュナに敗れた。