乱立
魔導師組は女子票を取り込むべく、美男子クラブを結成。陰陽師が推す光と僧侶を率いる日道、阿修羅が激しい派閥争いをしていた。無論、皆、源氏名である。
修道士たちも候補者を模索したが、聖職者という響きが性食者に聞こえるということで、断念をした。
天使組は最も美しいといわれるルシエルとミカエル一族のフリカエル一本で勝負に出た。天使フリカエルの元には男性たちが集まってきた。それは天使ではなく、候補者をたてられなかった修道士たちだった。禁欲を強いられる彼らは、その歪んだ感情を男性候補者へと向けた。
さて、ここでダークホースとなるのが悪魔である。男性票獲得のため女性候補アガレスを推す声もあったが、実態は醜い老人であることがばれて断念した。そこで急遽、リリスから産まれたリリンの中からリリムを擁立した。
人類の祖にして魔王サタンの一族である彼女は多くの男性支持者を急速に獲得した。その手口は強引で、一夜にして寝返ることから、睡眠学習を用いて洗脳していると噂された。
候補者が出揃った朝、かつてクズが掘った地獄風呂から突如、赤い湯が噴出し始めた。血の池の水が混入したのだ。
「バス・血湯に狼煙が上がった!」
しかし無情にも皆アンジョの前を通り過ぎるだけで話を聞きに集まる者は誰もいなかった。支持者が居ないわけではない。彼らはハヌマーンの密偵を恐れ、建物の影や木陰からこっそり覗いているだけで満足している隠れファンなのだから。
他の候補者たちも血の間欠泉が吹き上がる広場へと急いだ。候補者たちは、場所を決めると旗を掲げ、一斉に演説を始める。応援演説にかけつけるものも多いが、中にはハヌマーンの密偵のような偽信者も紛れている。かれらは、せっせと魔導師組の候補者の不貞を見つけては主に報告をした。
ただそんな中で、密偵であるマルドゥクは高潔すぎるアンジョの欠点をみつけることができずに焦った。呪術で陥れようとしたマルドゥクだったが、呪いの邪神ベールであることを見抜かれ捕まってしまう。
その一方で、悪魔であるリリムにとって、黒い噂は気に留めるほどもこともなかった。
戦う者の名が聞こえるか
歩道にあの連呼が響き合えば
新たに熱い命が始まる
明日が来た時 今日か明日か
ケツに入れよ われらの帝に
砦の向うに生徒会がある
戦え それが自主への道