卑弥呼
15票というのはいくらなんでも少なすぎる。実はさらなる仕掛けが後日判明した。
チェックが×印に見えたというのだ。つまり、最初の画面で加茂にバツ小さな×がついている。つまり、三輪勢は×印がないことでそのまま投票してしまったというのだ。
日本では○をつけるのが普通で、チェックをいれるという習慣がない。しかも、チェックとバツは記号では似ている。
なんとも姑息だが、独裁国家ではよくある手法らしい。
「どっちでもいいよ。」
当の三輪本人はまったく気にしてない。もともと無理やり卑弥呼理事からのお達しだったのだから、安堵している面もある。
名目上は会長、副会長だが、三輪と加茂はできるだけ一緒にいて物事を決めた。美形男子がふたりでいる。それは周囲の女子たちがやきもちを焼くくらいだ。それが恋愛なのか兄弟愛なのか、おそらく本人たちもわかっていないだろう。
さて、これだけ美形の生徒会長が続くと、男女交際を解禁する意見もおのずと上がってくる。おしゃれもしたいだろう。もっとも辺ぴな山奥にある学校だ。しかも特殊な生徒たち。どこかに遊びに行けるわけでもない。
「学内におしゃれなカフェが欲しい。」「公園を造って。」「鎌をデコりたい。」「有名デザイナの制服がいい。」
実に色々な要望があったが、卑弥呼がすべて拒否した。
「学生の分際で、わらわに意見するとは。」
そのわりには、ちょくちょく三輪か加茂を呼び出す。卑弥呼に会うには、全裸になって禊をして、着替えねばならない。
「パワハラかな。」「セクハラだよ。」
そんな噂が流れるほどだ。
しかし、当の本人は
「わしは男には興味は無い。が、ぶ男は虫唾が走るほど嫌いじゃ。」
といって動じることはなかった。




