策略
校長は加茂一族であり、加茂は理事長の師匠筋にあたる家系だ。万一、負けることはあってはならない。
「小角、何用じゃ。」
校長は、学校の裏庭の井戸から冥界へと入り、閻魔の前に居た。
「少々、厄介なことがおきましてな。」
「阿倍のやつには生き返らせた貸しがある。万一の場合は、掛け合ってやる。ところで、お主はどっちに勝ってほしいのじゃ。」
「加茂も三輪も元は同じ氏族。どっちでも同じことですじゃ。九頭のようにどこにも属さない者がよいのですが。」
「しがらみの無いほど、いい仕事をするからな。」
閻魔は一瞬だが、にやりと不気味な笑いをした。
投票日、高等部体育館で候補者が壇上に上がると、後ろにいる平氏、源氏双方から歓声が上がる。この様子から後に「壇ノ裏の戦い」と呼ばれた。
「予想では、高等部は三輪を、中等部は分裂している状態で三輪優勢となっています。しかし、不確かな悪魔票もあり、これら浮動票の行方によっては逆転する可能性もあるということです。」
リポーターの中継が教室のモニターに映し出される。
結果は103票対15票、圧倒的な加茂勝利で終わった。
「どうじゃ、わざわざロシアから仕入れた新しい投票システムは。」
「さすが、大王様。見事に無効票を取り込みましたな。」
投票システムは二名のいずれかにチェックをつける方式だ。必ずどちらかを選ばなくていけないため、あらかじめ下段の加茂にチェックがついている。三輪に入れるには上段の三輪を選択してチェックを付け直さなくてならない。本来無効票として、どちらにも入れてないつもりでも、加茂に入れたことになってしまうのだ。投票をしないことで棄権の意思表示はできる。実際に半数ぐらいは棄権している。それに上段有利であることがわかっているので、下段にハンディをつけるのはしかたないという説明だ。こうしてシステムに不備はないということで結果は確定した。




