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温故知新

 静まり返った体育館には候補者二人だけが残った。

「どうする?」

 三輪が加茂に尋ねた。せっかくのイベントも効果薄だ。

「アニメの専門学校に行ってる田舎の友達に相談してみるよ。」


 後日、対決の様子が教室のモニタに流れた。

 ドシン、ドシン、バシン

 巨大式神対決の場面で重量感のある音が加わっていた。


「やっぱ、効果音は大事だね。」

「旧友の大切さを改めて知ったよ。」

「音効知人。」


 灼熱地獄で汗をかいたら、極寒地獄にダイブ

 釜茹地獄で一風呂浴びて、腰に手をあて血の池ドリンク一気飲み

 アンダーザ地

 飲んだーよ血


 長湯は危険だ頭を冷やせ

 オニのおいらはカニに降格だ

「有りえる」

 アンダーザ血

 アンダーザ地位


 この一件で、候補者二人は仲良くなってしまった。

「どっちが会長になっても、もう一人が副会長になろう。」


「ダルマを作ろう。」

 極寒地獄の雪は解けない。二人は作ったダルマに必勝と書いた。二人が仲良くなるにつれ、周囲の応援は激化した。彼らを押すのは、三輪を崇める平氏と加茂の源氏だ。「投票は、心のままに」と書いたのぼりを掲げ、「一の谷へ」と、平氏を源氏が追い上げる。


 まだ、二人はこの争いが理事たちによって仕組まれたものだとは気付いていなかった。

「校長、今回はどっちに賭けますか?」

 教頭がそっと尋ねた。負けなしの校長だ。教頭も勝ち馬に乗りたい。

「いや、やめておこう。理事長相手に勝ったら後がうるさい。安倍の我がままにつきあってはおれん。」

 校長としては、生徒の自主性を重んじたい。しかし、理事会が出てきたとなると、失敗すれば首も危うい。

「予防線でも張っておこうかね。」

 校長は井戸へと向かった。

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