孤高の革命家
九頭が選挙戦で閻魔大王の甥の閻々に敗れて、インドから留学生クリシュナが高等部の生徒会長になると、欠員となった中等部の生徒会長も兼任することとなった。生徒会長室である寮の最上階を彼は独占することとなった。
馬頭は閻々との挙式のため退学した。牛頭は残ったが仕事が遅いという理由でクリシュナに解任されてしまった。
彼はインドから同じヴィシュヌの化身ラーマにハヌマーンを執事としてよこさせた。そして、彼に全てを任せ、生徒会長室に長蛇の列を作る女生徒たちと日々、パーティーを繰り広げた。
この生徒会の私物化に怒ったのは、中等部の連中だ。特に天使や悪魔は行事の度に何かとこきつかわれた。
「なんで、俺たちが高等部の連中のために働かなきゃならないんだ。」
「中等部の予算を全て持って行っちまう。お陰で、イベントは無しだ。」
「ああ、クズ会長のときが懐かしいなあ。」
そんな矢先、九頭と馬頭の逃亡劇が起きたのだ。この一大ロマンスに世間は沸いた。
「我々も立ち上がろう。革命を起こすのだ。」
ついに天使レイラスが生徒たちに呼びかけた。彼はその美貌から、天界の天草四朗と称された。彼は一切の欲を外に出すことはなく、取り巻きのファンもいなかった。そんな孤高の彼を密かに慕う生徒は隠れキリシタンと呼ばれ、天使を表すアンジョを使って、アンジョ・レイラスと呼んでいた。
彼が革命を考えたのは、クリシュナが来て美少年の地位を奪われたこともあったかもしれないが、禁欲を貫く彼に対し、それに気付く者は彼自身を含め全くいなかった。
「我々が立ち上がれば、必ず悪魔や魔導師も合流するはずだ。」
純粋にレイラスは、そう信じて疑わなかった。
生徒会に興味の無いクリシュナであったが、代理のハヌマーンは密かに密偵を学内に放ち、ラーマに報告していた。