九十八話
ラーシャ達は数日、迷宮に潜っては地上に戻ってくるという日々を送っていた。
いつものように騎士宿舎に戻ると懐かしい顔に出会った。
「リーシア。久しぶりね」
「久しぶりね。色々あったと聞いたけど元気そうでよかったわ」
「ほう。噂のリーシアさんっすね。なるほど・・・。絶世の美女と聞いていたっすけど本物を見ると嘘でも誇張でもなかったすね」
「貴方はシェルさんね。3人がお世話になったわね」
「いいえ。お世話になったのはこっちっすよ」
「陛下から貴方のことは色々聞いていたのだけど・・・」
「あの狸親父が何か言ったっすか?」
「自分のせいで苦労をかけてるとおっしゃっていたわよ」
「そう思うなら母にもう少し優しくしてほしかったっすね」
シェルは実は王の隠し子だ。
母親は平民出の使用人である。
シェルがお腹に宿っていることがわかるとシェルの母親はすぐに城の外に出された。
その理由は腐敗していた王家の事情から遠ざける為であったが、重身で放り出されたシェルの母親は苦労したのだろう。
それとなくサポートはしていたそうだがそれでも限界はある。
「まぁ。母の願いっすからね。あの狸親父は嫌いっすけど最低限の仕事はするっすよ」
シェルには武芸に才能があった。
その為、シェルは幼いころから様々な流派を学んだ。
だが、国王陛下としてはシェルが利用される可能性を懸念した。
騎士団に在籍することでその身を保護していたのだ。
「とにかく、私もしばらく王都の迷宮に潜るからよろしくね」
「了解っす」
リーシアとしては久々の実戦だ。
王城で得た技術は貴重な物ではあるが、やはり体を動かしている方が性分にあっている。
「どうせなら、誰も到達したことない階層を目指したいわね」
「でも、物資はどうするんすっか?」
迷宮に長期潜ろうにも物資が運搬できなければ難しい。
「そこは任せてほしいわね。私がなんとかするわ」
リーシアは空間魔法を自由自在に操れるようになった。
その結果、収められる物資は膨大な量となっている。
「まずはリハビリからね」
「まぁ・・・。リーシアのことだから心配はしていないけれど」
「そうそう。私達も成長を見せたいですし」
アリスがそう言って張り切りだす。
それは他のメンバーも同じだった。
成長したのはリーシアだけではない。
「それじゃ、行きましょうか。目指せ、最下層!」
「エイエイオー」
ラーシャ、ミリス、アリス、シェルに加えてリーシアは王都の迷宮を攻略すべく出発するのであった。




