九十五話
今日は久しぶりに地上に戻ってきた。
騎士宿舎に戻り、各自体を洗う。
迷宮内では水も貴重な為、臭いが気になるところだ。
湯は残っていた女性騎士達がすぐに持ってきてくれた。
人心地ついたところで騎士団長であるブラハムの元へと向かった。
全額ではないが迷宮内で得た物の代金を支払ってくれるという。
そのお金で全員で王都を探索する予定なのだ。
「お客人なのに巻き込んで悪いね」
ブラハムはそう言って謝ってくる。
「こちらとしてもいい稼ぎになって助かりました」
宿泊費やご飯代は騎士団が持ってくれていたがそれでも日々の生活でお金は減っていく。
「さて。色々食べ歩くっすよ」
シェルはそう言っていい笑顔をしている。
「あまり羽目を外すなよ」
「わかってるっすよ。時間は有限っす。早くいくっすよ」
そう言ってシェルは元気よく飛び出していく。
ブラハムは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
ラーシャ達もシェルを追いかけて騎士宿舎を飛び出す。
勢いよく飛び出したシェルであったが、すぐに追いつくことができた。
それは、騎士宿舎の近くで焼かれていた串焼きを買っていたからだ。
「いやぁ。いつ来てもここの串焼きは最高っすね」
「いつも贔屓にしてくれてありがとよ。1本おまけだ」
「ありがとうっす」
「はぁ・・・。すっかり餌付けされてるわね」
「皆さんもどうっすか?」
「じゃぁ。1本だけ・・・」
「へい。毎度」
中々ボリュームもあり、シェルの言う通り美味しかった。
美味しそうに食べる4人に釣られて道行く人も買っている。
出店の親父さんはホクホク顔だ。
「さて。次はどこに行こうかしら」
「私は服とか新調したいですね」
そう提案したのはアリスだ。
洗えば臭いは取れるだろうが精神的に考えて新しい服が欲しくなるのもわかる。
「なら、いいお店があるっすよ」
シェルは串焼きを食べながら商店街の方向に歩き始めた。
行儀が少々悪い気もするがここにはそれを気にするような人はいない。
人混みをかき分け、やって来たお店は中々の規模のお店だった。
お店の中に入り納得する。
置いてあるのは新品の服である。
だが今の流行からは少し外れている。
そのおかげかお値段も安くなっている。
このお店は大量生産して余った在庫を買い取り扱っているのであろう。
4人共、お洒落をしたい気持ちはあるがそれよりも重視するのは実用的な品であった。
意識してのことではないが、全員が似たような服を選んだのは仕方ないことだろう。