九十三話
階段を降りた先は広いスペースになっていた。
だが、カタカタと音を鳴らし鎧と剣を装備したスケルトンの群れが待ち構えていた。
「うぉぉぉ」
そう言ってテッペリンが大剣を振り回しスペースを確保する。
できたスペースで陣形を組む。
「これは中々、手強そうですね」
今、相手にしているのはスケルトンナイトだ。
文献では知っていたが、実際に相手にするのは初めてだ。
スケルトンナイトは内包する核が弱点だが、鎧でその核は隠れている。
両者共に激しくぶつかり合う。
ラーシャ、ミリス、アリスは騎士達をサポートするように動く。
この中で一番、役に立ったのはミリスの魔法だった。
属性は闇で相性が悪そうに見えるが普通に魔法には弱いようだ。
スケルトンナイトは脅威度を判断する能力があるようで、ミリスを狙うがラーシャとアリスがその間に入り援護する。
この辺は手慣れた物である。
シェルは縦横無尽に動き回っていた。
不思議なことにシェルが一振りするだけでスケルトンナイトは動きを止める。
他の騎士達が苦戦する中である種、異常な光景だ。
テッペリンは力任せにスケルトンナイトの鎧を叩き潰すように戦っている。
一撃でスケルトンナイトの鎧が変形しガッシャンとすごい音がしている。
筋力もそうだが、あれだけ動いて動きが鈍っていない所を見ると一種の化け物といえるだろう。
なんとかスケルトンナイトの群れを撃退し、戦利品を回収する。
魔石だけでなく剣や鎧もその対象だ。
王都では多くの物資が足りていない。
鎧と剣は鋳つぶして再利用するのだろう。
「お疲れなのである。我々だけではもっと苦戦していたであろう」
「ところで、シェルのあれは何の手品なの?」
「あぁ・・・。あれは内部に衝撃を与えているらしいのである。シェル以外に習得できた者はいないであるが・・・」
シェル自体はお腹を抱えていた。
「お腹すいたっす。さっさと戻るっすよ」
あれだけ動き回っていれば燃費の悪いシェルのこの言葉にも納得できた。
「口でなく、手を動かすのである」
そこにテッペリンの指導が入る。
結局、この日は戦利品を回収してベース拠点に戻ることになった。
ベース拠点に戻ると騎士達の数が増えている。
「うむ。増援も到着したようであるな」
「そんなことより、ご飯っすよ」
シェルは給仕している場所に突撃していった。
「やれやれなのである。これさえなければ、正騎士にもなれるというのに・・・」
シェルが正騎士。
それはそれで何だか違和感がある。
お世話になっている身ではあるがシェル自身も今の地位に満足していそうであった。