九十二話
「ふむ。無事に撃退できたか。感謝するのである」
「いえ。食べられそうな魔物の部位を回収してきたんですけど・・・」
「おぉ。それはありがたい。が、本当に食べられるのであるか?」
「えぇ。迷宮都市ではそれなりに出回っていましたよ」
「すまないが調理を任せてもいいであるか?」
「構いませんけど・・・」
「感謝するのである」
ラーシャ達はスペースを借りて調理を開始した。
それを周りの騎士は奇異の目で見ている。
騎士とはいえ、王都育ちの騎士達は魔物の肉など食べたことがないのかもしれない。
後は予想外だったのが、シェルが戦力にならないことだった。
「自分は食べる専門っす」
と言い切るぐらいである。
丁寧に下処理をして、コバットの肉を炙る。
味付けは最低限の塩のみである。
小さい狼の肉は野菜と共に煮込む。
ハーブや香辛料を使って臭みを消すのを意識する。
料理ができた頃には多くの騎士が囲んでいた。
「これ。食えるんだよな?」
「知るかよ・・・」
あっちこっちでそんな声が聞こえる。
「代表して味見するっす」
シェルはそう言って料理に手をつける。
「癖はあるっすけど、これはこれで・・・」
その言葉がきっかけになったのか騎士達が殺到する。
「俺達にもくれ」
「はい。今用意しますね」
かなりの量を作ったのだが、料理はあっという間になくなった。
「お嬢さん方。助かったのである」
「テッペリンさん・・・」
「今日はもう、休むといいのである。明日は某に同行してほしいのである」
「わかりました」
与えられたテントに戻り横になる。
夜はあっという間に過ぎ朝となる。
迷宮内である為、正確な時間はわからないが冒険者にとって体内時計というのは大事な要素だ。
長期間、体調を維持するのも仕事のうちである。
朝食を食べ、軽く体を動かしてからテッペリンの元へと向かった。
「お疲れ様なのである」
「それで、今日はどうするんですか?」
「この先に下に降りる為の階段があるのである。お嬢さん方には一緒に下の階の魔物討伐をお願いしたいのである」
「わかりました。よろしくお願いします」
テッペリンをはじめ、風格のある騎士4人と共に、下の階を目指す。
途中の魔物は騎士達が素早く動き退治してくれた。
階段の手前でテッペリンが全員の顔を見る。
「それでは行くのであるな」
テッペリンは大剣を手に持ち先頭で階段を降りて行った。
ラーシャ達も後に続き階段を降りるのだった。