九十話
迷宮内は昨日と比べ魔物が多かった。
全員で協力して魔物を倒し騎士団がベースとしている場所まで急ぐ。
騎士団のベース拠点に着けば、酷い有様だった。
寝起きしていたであろうテントは倒れ、物資も散乱している。
今は周囲を警戒しつつ無事な物資を集めているところだった。
指揮を執っているのは頭部が光る巨漢の騎士だった。
「お疲れ様っす。テッペリン副団長」
「おぉ。シェルか。お疲れである。そちらの3人は?」
「うちの騎士団で預かってるお客人っす。今は、団長の依頼で物資の運搬を頼んでるっす」
「なるほどなるほど。見たところ、かなり戦えそうであるが?」
「冒険者っすからね。戦力にはなると思うっすよ」
「頼みがあるのである」
「なんでしょうか?」
「このままではこの迷宮は氾濫を起こしてしまうのである。それを防ぐために魔物の討伐を手伝ってはくれまいか?」
多くの騎士団員が脱落した今、猫の手も借りたいということなのだろう。
「どうする?」
「ここまで戦ってみて脅威になる魔物はいなかったわね」
「報酬次第かしらね」
「うむ。引き受けてくれるなら私が責任をもって代金を支払うと約束しよう」
テッペリン副団長はそう言って胸を張る。
「なら決定っすね。案内なら任せるっすよ」
「よろしくね」
3人はシェルの案内で魔物が溜まりやすいポイントを目指す。
数は多いがスケルトンやゴブリンと低位の魔物が中心だ。
上位種が混ざったりもするが苦戦するような相手でもない。
魔石だけ取り出して遺体は放置する。
放置された遺体はそのまま迷宮に吸収されるとのことだ。
それにしてもシェルの凄さが改めて目立つ。
組んでからそんなに時間が経っていないのに息をぴたりと合わせてくる。
「少し、休憩するっすよ」
シェルはそう言って行き止まりの部屋で休憩を取るように言ってくる。
「まだ、余裕があるけど?」
「この先がちょっと問題なんっすよ。連続して戦闘することになるっすから」
連続で戦闘になれば休憩をしたくてもできなくなる。
その前に休んでおくのは悪くないだろう。
それぞれ水と軽食を軽く食べ、体力の回復をはかる。
休憩も終え、魔物の討伐に戻る。
そこからはシェルの言う通り連続して戦闘をすることになった。
倒しても次から次へと魔物が現れる。
戦闘を終えた時、全員が肩で息をしていた。
「お疲れっす。魔石を回収したら戻るっすよ」
そんな中、シェルはまだまだ余裕がありそうだった。