八十八話
ラーシャ、ミリス、アリス、シェルは呼び出しを受けていた。
高そうな椅子に座って待っていたのは騎士団長であるブラハムである。
「わざわざすまないな」
「いえ、それでご用件は?」
「そろそろ、王都にある迷宮の大掃除の時期なのだが、協力してもらえないだろうか?」
「と、いいますと?」
「魔物の討伐は騎士団員が受け持つ。君達には必要な消耗品を地上から運び、迷宮で得た物の運搬を頼みたい」
話を聞く限り悪い話ではない。
だが、即決するわけにもいかない。
安請け合いすれば冒険者の価値を落とすことになる。
「どれぐらい頂けるのかしら?」
「商家の娘らしいな。これぐらいでどうだろうか?」
ブラハムが提示してきた金額は十分な物だった。
「どうする?」
「私は受けてもいいと思うわ」
「私もです」
全員の賛同があったところで改めて答える。
「この依頼、引き受けさせていただきます」
「ありがとう。運搬にはこのマジックバックを使ってくれ」
渡されたマジックバックは合計で3つ。
価値としてはかなりの物だ。
「話はまとまったすね。倉庫まで案内するっす」
そう言ってシェルが元気よく部屋から飛び出した。
案内された先は来たことのない区画だった。
騎士団では常日頃から多くの物資を貯め込んでいる。
どれぐらいの量を貯め込んでいるかは極秘事項だ。
似たような部屋がいくつもある。
「すごい数ね」
「いざって時は、ここで籠城っすからね。っと。この部屋っす」
部屋の中に入れば食料に医薬品など様々な物が積み上げられている。
「とりあえず、入れられるだけ入れましょうか」
「そうね」
マジックバックと言っても入れられる量はそれぞれ違っている。
今回、受け取ったマジックバックは想像していたよりも多くの量を収納できた。
これだけの物を3つもポンと預けられるとは騎士団はかなり余裕があるのだろうか。
「しまい忘れはないっすね?」
「いつでもいけるわよ」
「戦闘は任せてほしいっす」
シェルと共に3人は王都の迷宮に足を踏み入れる。
シェルは迷うこともなく迷宮内を突き進む。
迷宮の地図がしっかりと頭の中に入っているのだろう。
途中、魔物が出てきてもシェルが1人で全て倒していた。
何回か下りの階段を降りると広いスペースに出る。
そこでは騎士達が休んでいた。
どうやらここをベースに迷宮内の魔物の討伐をしているようだ。
すぐに担当の騎士がやってきて、物資の受け渡しが行われた。