八十四話
次の日、女の子の家を訪ねると女の子の母親はまだ万全ではなさそうであるが起きていた。
食料もあるしこれならもう大丈夫だろう。
「お姉ちゃん。ありがとう」
「いえ、よく頑張ったわね」
「何のお礼もできずすみません」
「いえ、好きでやったことですから」
「お姉ちゃん。行っちゃうの?」
「そうね・・・。私も仕事をしないと」
貯えはあるが基本貧乏癖のついているアリスである。
心配事が減ったなら仕事に精を出すべきだろう。
「元気でね」
「うん」
アリスは女の子と女の子の母親に見送られ家を後にした。
アリスは仕事を求め、冒険者組合に来ていた。
丁度よく護衛の仕事があった為、それを受注する。
出発はすぐとのことで指定された商会に向かった。
「あんたが護衛の依頼を受けてくれた人か?」
「はい。よろしくお願いします」
「はぁ・・・。本当に大丈夫なのかねぇ」
アリスは小柄の女性である。
見た目で侮られるということは理解していた。
「これでも腕には自信があります」
「まぁ。考えるのは俺の仕事じゃないか」
男はそう言って建物の中に入っていった。
しばらくすると建物に入っていった男と身なりの良い男が出てくる。
「準備はできているな?」
「いつでも出発できますよ」
依頼内容では近くの村々で医療品を売り食料を買い取ってくる予定とのことだ。
「それでは出発だ」
そう言って馬車にに身なりの良い男が乗り込み出発する。
アリスは馬車に併走して歩く。
護衛は他にもいるが見たところ新人といったところだろう。
王都圏は治安がいいが、それでも賊がまったくいないわけではない。
それでも護衛がついていれば襲われる確率を減らすことが出来る。
村には何の問題もなく到着した。
身なりの良い男と村の村長が話し合う。
護衛はこの時間も仕事だ。
馬車の荷を狙う不届き者がいないか目を光らせる必要がある。
交渉は無事におわったようで村の男達が次々に食料品を馬車に運び込む。
医療品というのは基本的に高額だ。
その対価となる食料はどうしても多くなる。
村には医療技術を持った者がいることが少ない。
薬というのはそんな村にとっては命綱だ。
多くの食料を差し出してでも確保しておきたいのだろう。
商人側もこれだけ食料を受け取っても利益が出るかは微妙なラインだ。
商売人としてはお人好しと言えるかもしれない。
そんなことを考えながらアリスは作業が終わるのを待っていた。