八十三話
アリスと女の子は取った木の実で食事を済ませる。
味はやはり美味しくはない。
だが、女の子はそれでも美味しそうに木の実を食べていた。
まぁ、気持ちはわからなくはない。
昔はアリスにとっても木の実はごちそうだった。
成長してお金が稼げるようになった今は舌が肥えてしまったが・・・。
「さて。もう少し採取したら帰りましょうか」
「うん・・・」
女の子は疲れたと不満を言うことなく黙々と採取作業を続けた。
その結果、背負っている籠はいっぱいになった。
「重くない?」
「大丈夫」
アリスと女の子は森を後にする。
街に戻り冒険者組合を訪れた。
売る物と残す物を仕分けしてアリスの冒険者証を出し買い取りをお願いする。
受付嬢は少額の報酬を渡してくる。
アリスはその報酬を全て女の子に渡した。
「こんなに貰っていいの?」
「えぇ。今日1日の成果よ」
「お姉ちゃん。ありがとう」
女の子は大切そうにお金をポケットにしまい込む。
「さて。お家に帰りましょうか」
「うん」
アリスは女の子を連れて女の子の家に戻った。
女の子の母親は起きており無事に帰ってきてほっとしたようだ。
「お母さんただいま」
「おかえりなさい。迷惑はかけませんでしたか?」
「いえ。とってもいい子で頑張ってましたよ」
アリスはそう言って微笑んだ。
「お母さん。みてみて。いっぱい取ってきたんだよ」
そう言って女の子は取ってきた木の実を見せる。
「あら。ごちそうね」
「今、食事の準備をしますね」
アリスはそう言ってとってきた物にひと手間かけて料理する。
これは昔、少しでも美味しく食べられないかと試行錯誤した成果だ。
ほんの少し手間をかけるだけで別物になったりする。
女の子と女の子の母親に料理した物を差し出す。
女の子は母親をじっとみている。
女の子の母親はゆっくりと料理を口に運んだ。
「あら・・・。まるで別物みたい」
女の子もその言葉を受けて料理を口に運ぶ。
「お姉ちゃん。すごく美味しい」
「後で作り方を教えてあげるわ」
別に隠すような物でもないのでアリスはそう言った。
食事も終え、女の子は眠そうだ。
アリスは女の子をベッドに運ぶ。
それ見て女の子の母親は申し訳なさそうな顔をしていた。
「さて。今日はこれで失礼します」
「見ず知らずの私達の為にすみません」
「そう思うなら1日でも早く元気になることです」
「はい・・・」
アリスは女の子の家を出て空を見る。
一番星が顔を出していた。




