八十一話
お金をかけずに治療するとなると方法は限られる。
アリスは治療薬を作る為に王都の近くの森にきていた。
時期的に必要な薬草が手に入るかは五分五分だ。
だが、何もしないよりはいいだろう。
目的の薬草を探しつつ、体に良い食べ物も集めていく。
女の子もあまり食べられていないようなのでしっかり食べさせないといつ倒れてもおかしくない。
森の深くまで入り込み、何とか目的の薬草を手に入れた。
後は急いで王都に戻るだけだ。
治療に使うには鮮度も重要な為、時間があまりない。
だが、不幸なことにアリスは狼の群れに囲まれていた。
冷静にアリスは狼を仕留めていく。
普段であれば解体したりするが今は時間がない。
アリスは最低限の後処理をして王都へ急いだ。
王都についたのは日が傾きはじめた時間だった。
女の子の家に急ぐ。
女の子の家に入ると母親のベッドの脇で女の子は寝ていた。
アリスはまず薬の調合からはじめた。
材料の一部は何かあったときのために用意していた物を利用する。
背後で女の子が身動きするのを感じ取った。
「起こしちゃったかしら?」
「ううん。お姉さん何しているの?」
「これはね。お薬を作ってるの」
「お母さんよくなる?
「貴方が信じていればね」
そう言ってアリスは作業を続ける。
薬が完成ししばらくしたら女の子の母親が目を覚ました。
アリスは薬を差し出して飲んでもらう。
「貴重な薬をありがとうございます」
「いえ。好きでしていくことですから。今、食事も用意しますね」
アリスは取ってきた食材で料理を作る。
女の子も母親もまともに食事をとれていないだろうということで消化のいい物を用意する。
女の子はガツガツと食事を食べていた。
アリスは自分の分も女の子に差し出す。
「いいの・・・?」
「えぇ。子供はいっぱい食べないとね」
女の子も見ていると自分の家族を思い出す。
今頃は元気にしているだろうか。
仕送りはしているが離れて暮らしてしばらく経つ。
時間を作って様子を見に行こうと決めた。
女の子はお腹がいっぱいになって眠くなったのかうとうとしている。
アリスはベッドに女の子を寝かしつける。
女の子の母親は申し訳なさそうにしていた。
しっかり休むように言って女の子の家を出る。
タダ働きではある。
だがここで見捨てたら寝覚めが悪い。
回復するまできっちりと面倒をみよう。
そう決めて宿への道を急いだ。




