七十九話
パーティーメンバーの3人が意図せず揃ったわけだが、こうなると気になるのはリーシアである。
ブラハムが王城に連絡してくれたのだが、今は身動きがとれないとのことだった。
ミリスは相変わらず魔術師協会に出入りしアリスは王都内で出来る小遣い稼ぎを続けている。
ラーシャは多くの騎士にお願いして修練に精を出していた。
騎士達は嫌な顔をせず相手をしてくれる。
少しずつではあるがラーシャは実力を伸ばしていた。
騎士達が使う流派は1つだが、今まで収めてきた流派が全く現れていないというわけではなかった。
それぞれに微妙に癖のものがあるということがわかってきた。
それで言うと一番、多彩なのはシェルだった。
「シェルってどれぐらいの流派の技が使えるの?」
「う~ん・・・。どれぐらいっすかね。自分でもよくわからないっす」
「わからないって、貴方ねぇ・・・」
「それぐらいにしてやってくれ」
そう言って言葉を遮ったのはブラハムだった。
「こいつは少し特殊な生まれでな。腕は正規の騎士より優秀なんだがその事情のせいで見習いなんだよ」
シェルにも事情があるようだった。
「気になるっすか?」
「気にはなるけど、無理には聞かないわ」
「それがいいっす。私の事情に巻き込みたくないっすから」
そう言ってシェルは笑っている。
なんというか世渡りの上手い子だ。
「さてさて。気分がいいのでいい物を見せてあげるっす」
そう言ってシェルが剣を構える。
剣は次々に動きまるで舞を舞っているようだ。
動きの1つ1つに意味があり、シェルの実力の高さを見せつけるようだった。
「ふぅ・・・。これでお終いっす」
「今のは・・・」
「古武術っすね。参考になったすか?」
「貴重な物を見せてくれてありがとう」
「いえいえ。これでやる気があがってくれたならよかったす」
ラーシャは改めて自分の剣を見直そうと思った。
騎士団で鍛えられ改善されつつあるとはいえ、直せる箇所はまだまだありそうだ。
「それじゃ。模擬戦をするっすよ」
「お願いします」
ラーシャはシェルと模擬戦を繰り返す。
全然勝てないが、今は剣を振るうのが楽しい。
自分もいつかはシェルのような高みに昇れるだろうか。
それを見てシェルも嬉しそうな顔をしている。
模擬戦を繰り返すうちに本当に少しずつだが対応できるようになっていく。
イメージは先ほどシェルが見せてくれた剣舞だ。
騎士団の流派はシェルが見せてくれた古武術を元にしている。
そんな気がした。