七十七話
外からと誰かが入ってくる。
「仕事はしたんだろうな?」
「えぇ。もちろんですよ。言われた通り仲間を捕らえましたよ」
「どれどれ・・・」
そう言って新たに入って来た男が無遠慮に見てくる。
ジャラジャラと宝飾品をつけた若い男だった。
「ふぅん。中々悪くないじゃないか」
「そいつは魔術師です。手を出すのはお勧めしませんよ」
「おお。それは怖い。だが、これで本命をおびき寄せられる」
「本命ですかい?」
「ランベルグ商会の小娘さ。僕を虚仮にしてくれてね」
「あんたも好きだねぇ。どうせ、遊んだら捨てるんだろう?」
「どれぐらいで心が折れるのか今から楽しみだ」
「ラーシャさん。手紙が届いてるっすよ」
「シェル。ありがとう。あら?差出人が書かれていないわね」
「そうなんすか?」
ラーシャはとりあえず中身を確認する。
すると手紙には仲間を預かった。
帰してほしければ指定された場所にこいという内容だった。
リーシアは大丈夫だとして他の2人については少し心配だ。
自分のせいで迷惑をかけているなら見捨てるわけにはいかない。
「う~ん・・・。私、ちょっと出かけてくるわね」
「了解っす。団長にはうまく誤魔化しておくっす」
ラーシャは指定された場所まで出向く。
そこは今にも壊れそうな廃屋だった。
勇気を出して中に入る。
「ようやっときたか」
「あんたは・・・」
中で待っていたのはジールベッド商会の跡取りだった。
「私の仲間に手を出すなんて・・・」
「おいおい。動くなよ。大事なお仲間がどうなってもいいのか?」
そう言ってジールベッド商会の跡取りは奥に視線を送る。
そこに囚われていたのはミリスだった。
「ミリス・・・。巻き込んでごめんなさい」
「貴方が悪いわけではないわ」
「感動の再開のところ悪いが、武器を捨ててこっちにこい」
ラーシャは剣を手放してジールベッド商会の跡取りの言うことを聞く。
あと一歩で手が届くというところで、入り口からドーンっと音がした。
「なんだ?お前は・・・」
「じゃじゃじゃーんっす」
「シェル?」
「一応言っておくっすよ。お前達は包囲されてるっす。大人しく投降することをすすめるっす」
「ラーシャ。お前・・・」
「ラーシャさんは何もいってないっすよ。でも、客人に手を出されてうちらは黙っていられないっす」
その言葉と同時に騎士達が廃屋に雪崩込んできた。
「おいおい。話が違うぜ。騎士が何で来るんだ」
「畜生。近づくな。近づいたらこいつが・・・」
男は最後まで言葉を言えなかった。
その理由は窓から飛び込んできたブラハムが問答無用で殴ったからだった。