七十五話
ミリスは王都にある魔術師協会にやってきていた。
王都の魔術師協会は魔術師なら誰でも憧れる場所だ。
国中から魔術書が集められ日夜研究がされている。
「魔術師協会にようこそ」
「魔術書を見たいのだけど・・・」
「申し訳ありません。身分証は何かございますか?」
ミリスは冒険者証を出す。
「ありがとうございます。入館料として銀貨1枚をお願いします」
銀貨1枚とは高額ではあるが払えないほどではない。
「はい」
ミリスは銀貨1枚を払う。
「魔術書は1階の中央の扉をくぐった先にあります」
「ありがとう」
ミリスは受付にいわれた通り、中央の扉の中に入る。
扉の先には大量の蔵書が待っていた。
手前から適当に魔術書を手に取って目を通す。
魔術に関わる者なら一度は目を通すよな魔術書だ。
入り口近辺はありきたりな物なのだろう。
ミリスは棚に魔術書を戻し少し移動して別の魔術書を手に取った。
今度は火属性の魔術に関して書かれている。
残念ながら火属性に適性がないため意味がない。
別の魔術書に手を伸ばし確認する。
どうやらこの辺りは火属性の魔術書が集められているようだ。
さらに移動して別の魔術書に手を伸ばす。
これを繰り返してようやっと目当てであった闇の魔術書に辿り着いた。
埃は被っていないが日の当たらない暗い場所だ。
闇魔法というのはあまり人気がないらしい。
ミリスは気にせず数冊を手に持って椅子のある場所に移動して読んでいく。
既存の知識もあれば聞いたこともないようなことが書かれている。
ミリスは時間も忘れ、魔術書を読みこんでいった。
コツコツと足音がしてミリスは顔をあげる。
「あら。利用者がまだいたのですね。そろそろ閉館の時間です」
「すみません。こんな時間まで」
「いえ、勉強熱心なんですね」
ミリスは急いで本を戻して魔術師協会を後にする。
色々試してみたいことができたが、街中で魔術を使うわけにもいかない。
適当にご飯を食べて宿に戻る。
翌日、まだ朝も早い時間に起きて準備を整えて宿を出た。
開門と同時に移動する。
目指すのは近くの森だ。
人目につかないように奥深くまで入り試してみたかったことを試す。
中々思い通りにはならなかったが魔術とはそういうものだ。
何度も何度も試し、イメージを固める。
すると少しずつ形になってきた。
魔術というのは成功したタイミングが面白い。
ミリスは時間も忘れ、魔術の練習に励む。
日が落ちてくる頃、満足して街に戻った。
閉門ぎりぎりで何とか街の中に滑り込むのだった。