七十一話
食事を終え、ラーシャはシェルに連れられ、修練場にやってきていた。
「まずは、柔軟運動からですね」
ラーシャとシェルはお互いに協力しながら体をほぐす。
「おぉ~。ラーシャさんは柔らかいですね」
日課としてラーシャは毎日、朝晩と柔軟運動をしている。
怪我の予防に柔軟運動を効果的であると言われているからだ。
「シェルは少し硬いかしらね?」
「これでも、マシになったんですよ・・・」
「もう少し、押すわよ」
ラーシャはぐっと力を入れる。
「うぅ・・・。ラーシャさん容赦ないですね」
しばらくするとブラハムが修練場に入ってくる。
それぞれ自由に動いていた騎士達が整列していく。
ラーシャを迎えに来たブラハムは騎士の中でも偉い人であるらしい。
シェルに連れられラーシャも騎士の中に混ざる。
「さて、諸君。今日は持久走だ。私が止める間で走り続けてもらう」
ブラハムはそれだけ言って、先頭に立ち、走りはじめる。
騎士達も文句を言わずに走り出す。
ラーシャとシェルもそれに続いた。
なんだか、冒険者学校を思い出す。
あの頃は、持久力をつける為に、よく走らされた。
鍛えられている騎士だけあって脱落者はいない。
結局、持久走は日が落ちるまで続けられた。
「ふぅ・・・。疲れたわね」
「そうですね。お腹がぺこぺこです」
見たところシェルは小柄なのだがかなりの食いしん坊らしい。
食堂に移動するとシェルは料理を取りに突撃していった。
ラーシャも自分の分を確保するべく列に並ぶ。
料理を取り終わる周囲を見間渡せば、口をもぐもぐさせながらシェルが手をぶんぶん振っていた。
ラーシャはシェルの前に座る。
「少しは落ち着きなさいよね・・・」
「へへ。よく言われます」
言われても治っていないところを見ると筋金入りなのだろう。
食事に手をつけたところに後ろから声をかけられた。
「食事中にすまないな。君に来客だ」
声をかけてきたのはブラハムだった。
「私にですか?」
「ジールベッド商会の次期会長を名乗っている」
「あぁ・・・。なるほど」
どうせ、父から話を聞いてやってきたのだろう。
「同席は必要かな?」
「お願いできますか?」
ブラハムの案内されて応接室に入るといかにもチャラそうな男が待っていた。
服の趣味もそうだがジャラジャラ宝飾品をつけており、相容れそうにない。
「君がラーシャだね。さぁ、帰るよ」
「いえ、私は・・・」
「すまないがそれは承諾できないな。王命により、彼女は騎士団預かりの身だ」
ブラハムはそう言葉を被せてきた。