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六十九話

ラーシャは憂鬱な気持ちで実家まで戻ってきた。

大きな看板がかかげられている。

看板にはランベルグ商会と書かれている。

ラーシャの実家は王都で幅を利かせるランベルグ商会だった。

「あら?ラーシャじゃない。ようやっと帰ってきたのね」

顔なじみの商会員が声をかけてくる。

「父さんは?」

「商会長なら奥で事務仕事をしてますよ」

「ありがとう」

それだけ言って、ラーシャは店の奥に向かう。

店の奥では帳簿と睨めっこしている父の姿があった。

「父さん。今戻りました」

「んっ・・・?ラーシャか。ようやっと帰ってきたのか、この不良娘め」

勝手に飛び出したのは事実だ。

だが、親の決めたレールではなく自分で決めた世界で生きていきたかった。

「まぁ・・・。間に合ったから許してやる。お前にはすぐにでも結婚してもらう」

「私は、結婚なんてしたくありません」

「反論は許さん。相手はジールベッド商会の長男だ」

ジールベッド商会はランベルグ商会よりも大きな商会だ。

だが、その長男には悪いうわさがいくつもある。

よりによってその長男と結婚なんて考えたくもない。

「また、逃げられては困るからな」

そう言って、父は鈴を鳴らす。

すぐに商会員の男達が集まってくる。

「この馬鹿娘を部屋に閉じ込めておけ」

父は冷たくそう言い放った。

抵抗することもできるが父の命令に従っている商会員に怪我をさせるわけにもいかない。

大人しく部屋まで連れて行かれた。

部屋に入るとガチャリと鍵のかかる音がする。

「はぁ・・・。こうなるとわかっていたから戻ってきたくなかったんだ」

思わず独り言がこぼれた。




部屋に閉じこめられて1日が経った。

食事は運ばれてくるがそれだけだ。

このままでは結婚の日まで閉じこめられるだろう。

そんなことを考えていると血相をかえた父が部屋に飛び込んできた。

「お前にお客様だ」

「お客様?」

王都にはそれなりに知り合いは多いが父が血相を変える程の相手は思いつかない。

とにかく会ってみるか。

部屋を出て、商談にも使う応接室に入る。

そこには綺麗な装飾を施された鎧を着こんだ騎士がいた。

「はじめてお目にかかります。騎士ブラハム。王命に従い、お迎えにきました」

「私を迎えに?」

「はい。詳しい話は馬車でしましょう」

「ま、待ってくれ。その娘は結婚を控えているのだぞ」

父はそう言うが、ブラハムが聞き入れる様子はない。

「では、王命に逆らいますか?」

「いや、それは・・・」

王命に逆らえば罪人として捕らえられても文句は言えない。

ラーシャは父に見送られ、正面に止められた馬車に乗り込んだ。

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