第六十八話
「さて、リーシア殿が頑張ってくれたおかげで私の教えることも最後となりました」
ハバロフはそう言っていくつもの紙の束を手に持っている。
「それは?」
「マジックバック生産の為の魔法陣をまとめたものです。リーシア殿は冒険者を続けられるのでしょうから亜空間に魔法陣を構築するのがいいでしょう」
「よろしいのですか?」
魔法錠をしてまで守ってきた魔法陣である。
リーシアのこの反応も当然のことだった。
「構いません。私が城に魔法陣を置かせて貰っている理由は反抗的な貴族にここでしか製作できないと印象操作をすることによって私の身を守る意味合いもあるのです」
カルマイン王国は王を絶対とする王政ではあるが国内には実に様々な派閥が存在する。
中にはハバロフを攫ってでも自分達の利益に繋げようと暗躍する者も過去にはいたのである。
そこで国王であるミルハンスとハバロフは王城に魔法陣を構築し守護することでここでしか作れないという偽情報を流した。
王城という強固な守りに守られた場所ならともかく他の場所に魔法陣を構築するならリーシア以外入れない亜空間に魔法陣を作った方が秘密が漏れないという理由もある。
「それでは早速始めましょう」
ハバロフとリーシアは亜空間に入り魔法陣構築の作業を開始した。
必要な素材はハバロフが事前に手配してくれており正確に文字を記していく。
ハバロフはリーシアが理解できるように丁寧に魔法陣の解説をしてくれる。
所々、改善できる場所もあり、魔法陣の最適化をしながらも作業を続け1か月ほどが経った。
「最後にこの魔水晶を中央に置けば完成です」
リーシアは魔水晶を受け取り中央の窪みに魔水晶をはめる。
魔水晶から魔力が静かに流れ魔法陣全体が発光したのを確認したハバロフとリーシアはほっと溜息をついた。
「大丈夫だとは思いますが早速、マジックバックを作ってみましょう」
リーシアは事前に用意してあった鞄を取り出し魔法陣の中心に置きイメージを固める。
魔法陣はしっかりと機能しており問題なくマジックバックが完成した。
「お疲れさまでした。最後に注意点となりますがマジックバックを定期的に作るなら問題ないのですが作らなくても魔法陣には定期的に魔力を注いでください。でないと動作不漁を起こす原因となりますから」
「わかりました。今までありがとうございました」
「いえいえ、こちらも思いがけない発見がありました。リーシア殿の今後の活躍に期待しております」
こうして濃密な日々は終わりを告げた。




